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復讐のインテリジェンスソード  作者: 川越トーマ
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接触テレパス

「あっ……」

 ポールの両手で優しく右手を包まれたカレンは、電撃に撃たれたように身震いした。

 そして、体中の力が抜けたように膝をついた。

「ごめん、僕は接触テレパスなんだよ。君もテレパシストなんだね」

 ポールは優しく手を貸しながらカレンを立たせた。

 相手に直接触れることにより思考や記憶を読み取る接触テレパスは、瞬時にしかも大量の情報を相手から得ることができた。

 能力の高い接触テレパスなら表面的な思考だけでなく、記憶や信条といった心の深い部分まで読み取ることが可能だった。

「はい、私はテレパシストです」

 カレンは怒る様子もなく、ポールの目を見つめながら答えた。

 何の断りもなく心の中に踏み込んで相手の記憶を漁るのは、本来失礼極まりない行為だ。

 権限を持たない人間が正当な理由なく行えば、犯罪として扱われる。

「素直な娘だね」

 カレンの心を覗いたからか、それとも今のやり取りでそう感じたのか、ポールは作り物とは思えない自然な笑顔を浮かべた。

「どうだ?」

 二人のやり取りを横目で見ていたジョン・リードが、軍隊の指揮官らしい簡潔かつ強い口調でポールを問い質した。

「暗褐色の服を着た死者はこの娘の両親です。マオとパクによる強盗殺人の被害者です。深層もスキャンしましたが、この娘はマーズ連邦からの亡命者であり、スパイではありません。保護する必要があります」

「そうか」

 ジョンはポールの報告を聞いて、少しだけカレンを気遣うような表情を見せた。

「強いて言うと、精神的なショックが強かったのか、おかしな妄想をしていますね」

 しかし、ポールの話の続きを聞いて眉をしかめた。

「妄想? なんだ?」

「彼女がいま腰に差している刀がしゃべったとか、なんとか」

 カレンは無表情を装った。ジョンは険しい視線をカレンに送り、そのあとで俺のことをじっと見つめた。

 とてつもなく落ち着かなかった。

 しかし、幸いにして俺は脂汗を流すことも視線を泳がすこともなかった。

「ありえないだろ」

「ですよね~」

 ジョンの結論を聞いて、ポールは妙に明るく振舞った。

 これでもう自分の責任ではないとでも言いたげだった。

 ポールが接触テレパスの能力を使って、俺の秘密にどれだけ迫ったのかはわからない。

 しかし、どんなつもりか知らないが、疑念を抱きながらも俺とカレンを泳がすことに決めたらしい。

 俺はテレパシストではないが、ポールとジョンのやり取りでその程度のことは推測できた。

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