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復讐のインテリジェンスソード  作者: 川越トーマ
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第七警務小隊

「レイジ! また、殺したのか!」

 馬に乗ってやってきたのは四人、男性三人、女性一人だった。

 全員アレス共和国軍の制式装備である赤い金属プレートで胸部を保護した赤茶色の皮鎧を身に着けていた。

 兜を付けているのは、一人だけだった。

 男性三人のうち最も小柄で、しかし、最も肩幅が広くがっしりした男が、真っ先に馬を降りてレイジに詰め寄った。彼は兜をつけてはいなかった。

 灰色の髪、浅黒い肌、情熱的な光を放つ目が印象的な男だった。

 背中に銃身の長いマスケット銃を背負っていた。

「ああ、生かしておいても仕方のない奴だったからな」

 熱気をはらんだ小柄な男とは異なり、レイジの切れ長の目は冷たい光をたたえたままだった。

「ふざけるな! 俺たちは神様じゃない。俺たちの仕事は罪人を捕えることで殺すことじゃない! 何度言ったらわかるんだ!」

「ハりム、こいつは、生死を問わないという条件の賞金首だ。殺したとしても法的にも倫理的にも何の問題も発生しない」

「レイジ、俺が心配しているのは、そんなことじゃない! もともとお前はそんなことをするために警務部隊を志願したわけじゃないだろ!」

 ハリム(小柄な男)の声には悲痛なものが混じっていた。

「悪即斬、それが今の俺の信念だ」

 しかし、ハリムの悲痛な叫びにも、レイジは心を動かされることはなかった。

 俺は、このレイジ・カトーという男にシンパシーを感じた。

 語り合うことができれば馬が合いそうだ。

「やめておけ、アブドラヒム中尉……事件の検証を行う」

 なおもレイジに感情をぶつけようとするハリムの肩にそっと掌を置いた者があった。

 一人だけ赤い兜を身に着け、長身で均整がとれた背筋のピンと伸びた男だった。

 意志の強そうな鋭い眼光で、いかにも軍人らしい雰囲気を漂わせていた。

 腰には刀剣の代わりに、銀色に輝く金属の輪や束ねたロープを下げていた。

 俺は、その男に見覚えがあった。

「……わかりました、リード少佐」

《やはり、ジョン・リードか、今は一体何歳なんだ?》

 ハリム・アブドラヒム中尉の返事を聞き、俺は自分の記憶が正しかったことを確信した。

 今は軍隊の指揮官として強烈な存在感を放っているが、若いころはもっとさわやかだった。

 一緒に戦場で戦ったこともある。

「すみません。わたしがいたらなかったばかりに」

 感傷に浸っている俺にはお構いなしに周囲では同時に複数の会話が交わされていた。

 ボーイッシュな長身の女性士官のマーサが熱血漢のハリムに頭を下げていた。

 警務部隊の隊長が昔の知り合いだと気づくと、マーサのメルゲンという苗字とスマートな体形が気になりだした。

 ひょっとするとマーサ・メルゲンも昔の知り合いの関係者かもしれなかった。

「マーサ、お前が謝る話じゃない。上官はレイジの方だからな」

 ハリムはまっすぐにマーサに向き合い、力強く語りかけていた。

 警務部隊の連中が内輪のやり取りを繰り広げている中、色白の優男がカレンの方にスルスルと近づいてきた。

「助けを呼んだのは君かい? 僕はポール・レオン。よろしくね」

屈託のない善良そうな笑顔を浮かべながら、ポールは右手を差し出した。

 殺伐とした空気の中で、ただ一人優しげな雰囲気を漂わせていた。

 腰にはやや短めの刀を差していた。

 シルバーブロンズで目鼻立ちの整った、さわやかな好青年の申し出は、年頃の娘なら誰でも応えてしまうだろう。

 カレンもおずおずと右手を伸ばした。

 しかし、俺は何の根拠もなくポールの笑顔に邪悪なものを感じ、慌てて『障壁』を強化した。

 そして、『障壁』による防御対象を俺一人に限定した。

 俺の直感が正しければ、カレンにとっても結果的にそれがベストの選択になるはずだった。

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