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復讐のインテリジェンスソード  作者: 川越トーマ
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尋問

 俺はカトーの様子に強い興味を抱いた。

「そうだ……大丈夫?」

 マーサは赤いショートヘアをなびかせ、跳ねるように少女に駆け寄った。

「はい、大丈夫です」

 少女がマーサに好意的な視線を向けている間に、カトーはマオの死体に近寄った。

 俺はなんとなく彼が気になり、様子を窺っていた。

 カトーは、マオの死体のそばに跪くと、腰の金具から刀の鞘を取り外していた。

「私の名はマーサ・メルゲン。アレス共和国軍第七警務小隊に所属している。階級は少尉よ。あなたは?」

 マーサは気持ち腰をかがめ、覗き込むように小柄な少女に話しかけた。

「私はカレン・オハラ。マーズ連邦から来ました」

《カレンというのか》

 俺はようやく少女の名前を知った。

「聞きづらいけど、あちらでお亡くなりになっているのは?」

 マーサは多少気を遣う様子を見せながらも、はっきりとカレンに訊いた。

「父と母です」

 カレンは気丈だった。

 両親を同時に失い、自身も命のやり取りを経験したにもかかわらず、泣き叫んだり、ふさぎ込んだりすることもなく、きちんとした受け答えをしていた。

「ここまで来た目的は?」

「アレス共和国ならテレパシストも差別されないと聞いてきました」

「誰がテレパシストだったの?」

「私です」

 さすがにカレンは悔しそうな表情を浮かべた。

 両親が娘の幸せを願ってこの国に来たのに、無残に踏みにじられたと感じたのだろう。

「ほら鞘だ。危ないから刀をしまえ」

 カトーはカレンの目を見ることなく、マオの腰から取り外した鞘をカレンに渡した。

「ありがとうございます」

 カレンは、カトーをしっかりと見て礼を述べた。

「俺はレイジ・カトー。中尉だ。……ところで、あの男を殺したのは、おまえか?」

 レイジ・カトーは不愛想に、そして天気の話でもするようにカレンに問いかけた。

 マーサは思わず息を飲んだ。

 必要な質問だがカレンの心情を考えれば気楽にできる質問ではなかった。

「……」

 カレンはうつむいた。

「気にすることはない。俺もあいつを殺している」

 レイジは無表情のまま、パクの死体を指さした。

 白目をむき、口が半開きになり、ピクリとも動かなかった。

 人間だったとにわかには信じられない、出来の悪い蝋人形のようだった。

「……生まれ変わったら真人間になることを祈るばかりだ」

 居心地の悪い沈黙を打ち破るように、レイジは続けた。

「……よく、覚えていません」

 カレンは問い詰められることを覚悟しているようだったが、レイジの質問はカレンの意表をつくものだった。

「剣術の心得は?」

「えっ?」

「刀を使った近接戦闘の訓練を受けたことはあるのか?」

「いえ」

「おまえの能力は精神感応テレパシーで間違いないのか?」

 レイジは心底納得がいかないという風情だった。

《俺のことは言うな》

 俺には、レイジの質問の意図が何となく想像できた。

 一流の剣術家は刀を握って立つ佇まいだけで相手の力量をおおよそ把握できるという。

 刀を握るカレンの姿はどう見ても素人だった。

 何らかの能力を使ったというのなら話は別だが、剣術の素人があんなに見事に人間を両断できるわけがない。レイジはそれを確認したのだ。

「その刀は、あの男のものだな」

《自分のものだと言い張れ!》

「今は私の物です。私を助けてくれた守り神です」

《もともとは自分のものだったと言い張ればいいものを……》

 そう思いながらも神様扱いされて俺はこそばゆかった。

「そうか……」

 レイジはそれ以上この話題を掘り下げなかった。

 それというのも三人が会話を交わしている間に馬に乗った数人の男女が到着したからだった。

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