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第八話 ソビエツキー・ソユーズ追撃戦 その2

「戦艦は置物では無いんですよ。傷つくことを怖れて戦場に出さないで、どうするんです?」


「リーチ艦長、気持ちは分かるが、愚痴を言うより、軍人として手持ちの戦力で何とかすることを考えよう。まず状況を整理しよう。戦艦『ソビエツキー・ソユーズ』がウラジオストクを出航している。これは間違いないのだね?」


「はい、間違いありません。濃霧が短時間晴れた時に、日本海軍の飛行艇が北海道近海を航行しているのを発見しております。そして何度か日本の商船を攻撃したり、北海道沿岸の町を砲撃したりしています。しかし、この期に及んでも日本政府はソ連に宣戦布告をするつもりはないようですね」


「リーチ艦長、ソ連の方から日本に宣戦布告するつもりもないだろう。今現在、ソ連は公式には世界のどこの国とも戦争はしていないのだから」


フィリップス提督が忌々しそうに言うのに対して、リーチ艦長も忌々しそうに応じた。


「確かに、我が英本土を占領したのは公式にはドイツ社会主義共和国とフランス社会主義共和国ですからね。ソ連軍は『義勇軍』として参戦しただけという建前になっていますからね」


「まったく、スターリンとトロツキーの忌々しいコンビは『革命を輸出』する手段として、欧州ではドイツとフランスという代理店をつくって、ソ連という本店は無傷でいるという上手い方法を考えついたものだ」


「スターリンは『一国社会主義』で、まずソ連の発展を優先しようとし、トロツキーは『革命の輸出』をただちにしようとしたので、両者は対立して、一時はお互いの命を狙うまで関係は悪化したのに、二人は和解して、スターリンはソ連共産党のトップである書記長になり、トロツキーはソ連軍を束ねる国家防衛委員会委員長でいるんですからね」


「リーチ艦長、どちらかが、どちらかを粛清してくれれば、ソ連は弱体化していて、今、我々が日本の北の海の濃霧の中を航行していることも無かっただろう」


「いったい、誰のせいなんでしょうね?」


「リーチ艦長、決まっている。あのアドルフ・ヒトラーが全部悪い。スターリンとトロツキーを和解させるなんて、まったく余計なことをしてくれたよ!」


ヒトラーの映画はソ連でも人気であった。


ヒトラーは政治家として活動していた頃は、激しい反共産主義であったのだが、政治家として唱えた「国家社会主義」思想は、ソ連の社会主義と似かよったところもあり、映画俳優になってからは、反共産主義はあまり口に出さなくなった。


そして、新作映画がソ連で上映された日、ヒトラーはモスクワを訪問したのであった。

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