第六話 日本の新型戦艦
「あれが、日本海軍の新型戦艦ですか、フリップス提督、艦名を知っていますか?」
次の日、港に停泊する「プリンス・オブ・ウェールズ」の艦橋からフリップス提督とリーチ艦長の二人は、港に入港する日本の新型戦艦を眺めていた。
「先ほど、この艦に乗艦した日本海軍の連絡士官が教えてくれた。『ヤマト』と言うそうだ」
「『ヤマト』ですか、確か日本の古名でしたかな?」
「日本その物を意味することもあるし、日本の古い都があった地方の地名でもあるそうだ」
「なるほど、いずれにしても、『プリンス・オブ・ウェールズ』とは『英国皇太子』のことですから、我が艦と戦隊を組むのにふさわしい艦名ですな」
フリップス提督は少し笑って答えた。
「リーチ艦長、『ヤマト』の本来の計画通りに建造されていたら、『プリンス・オブ・ウェールズ』と戦隊を組むのには無理だったかもしれんぞ。日本は軍縮条約の期限が切れれば、基準排水量六万四千トン、主砲は十八インチ、速力二十七ノットの巨大戦艦として『ヤマト』を建造するつもりだったそうだ」
「主砲が十八インチで、速力が二十七ノットですか、それだと『プリンス・オブ・ウェールズ』と戦隊を組むのには無理があったでしょうな。主砲の性能が違いますし、『プリンス・オブ・ウェールズ』より遅いのでは、こちらの速力が生かせませんからな」
「うむ、そうだが、現実に目の前にある『ヤマト』は基準排水量三万五千トンの速力三十ノットの十四インチ砲戦艦なのだからな。『プリンス・オブ・ウェールズ』と戦隊を組むのにちょうどいい性能だ」
「軍縮条約が延長されて、戦艦の新造は古くなった艦の代替えだけしか認められないということになりましたからね。新造艦の制限は排水量は三万五千トンまでで、主砲は十四インチまでですからね」
「アメリカ海軍のノースカロライナ級戦艦も当初の予定通り十四インチ砲戦艦として完成したそうだ。もし、軍縮条約が無効になれば十六インチ砲を積む予定だったらしいがな」
「世界には十六インチ砲戦艦は昔馴染みの『ビックセブン』七隻だけですからね。我がイギリス海軍のネルソン級二隻、日本海軍のナガト型二隻、アメリカ海軍のコロラド級三隻」
「うむ、だが、あの国が十六インチ砲を超えて、十八インチ砲を搭載した戦艦を建造することになるとは思わなかった」
フリップス提督は忌々しそうに言った。
リーチ艦長も忌々しそうに応じた。
「ソ連海軍の『ソビエツキー・ソユーズ』級戦艦ですな?ソ連は軍縮条約に参加していないのですから戦艦建造については無制限でしたからね。極秘に建造していて、『ソビエツキー・ソユーズ』が海に出るまで、十八インチ戦艦だと誰も気づかなかった。その『ソビエツキー・ソユーズ』と我が『プリンス・オブ・ウェールズ』と『ヤマト』は戦わねばならないのですからね」
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