第五話 ヒトラーの日本での評判
ヒトラーの映画が日本で不人気だった理由の一つが、彼のドイツなまりの英語であった。
英米ではそれが受けたのだが、日本ではまったく受けなかったのだ。
日本人のほとんどは純粋な英語とドイツなまりの英語の違いなど分からなかったからだ。
それと決定的な理由がヒトラーが日本人を「二等民族」としてあつかう描写のある映画があったことだ。
眼鏡に出っ歯の日本人男性が映画に出てきて(演じていたのはメーキャプした白人男優)、それが無理をして白人の真似をして失敗することで笑いを誘うというシーンが多いのだ。
具体的な例としては、日本人が欧州で高級レストランに入るが、無知なためフィンガーボウルの水を飲んでしまうなどの失敗をするシーンがある
映画の中のヒトラーも日本人は「物真似が得意なだけの二等民族」というセリフがある。
ヒトラーの映画は日本国民の怒りを買い、ヒトラーの映画を上映した映画館が投石や放火未遂に遭うなどという事件が頻発した。
日本国内でヒトラーの映画は事実上の上映禁止になった。
ヒトラーは日本で自分の映画が上映できなくなったことに対して
「しょせん二等民族には優れた白人のユーモアなど理解できないのだ」
とコメントして、ますます日本人を怒らせた。
日本以外のアジア諸国、中華民国やタイ王国でもアジア人を揶揄するシーンがあるため不人気であった。
「日本人はワシントン条約が有効だった期間、条約ギリギリまで海軍を整備しましたからね。フリップス提督」
「そうだな、リーチ艦長、我がイギリスやアメリカが旧式戦艦を予備艦にして、条約より現役戦艦の数を減らしたが、それは『自主的』にやっているだけで、条約で定められたことじゃないからな」
「ロンドン条約で日本の巡洋艦以下の補助艦艇を制限しなければ、とんでもないことになっていたかもしれませんね」
「ああ、我がイギリス海軍やアメリカ海軍でも日本海軍には対抗するのが難しいくなっていたかもしれん。だが、そうなっていた場合、日本は国として財政破綻していたかもしれないがな」
「日本海軍が二つの派閥で争っていたかもしれないという話もありましたね」
「『艦隊派』と『条約派』のことだろ?ワシントン条約通りだと、日本海軍は米海軍に対して対抗可能な戦艦の数を確保できないことから『艦隊派』はワシントン条約の破棄を主張した。それに対して『条約派』は国際協調を重視して、条約の遵守を主張した。派閥争いは激しくなり、どちらかがどちらかを海軍から放逐するまで終わらないと思われたが……」
フリップス提督の言葉をリーチ艦長が継いだ。
「結局、米海軍が自主的に現役戦艦の数を減らしましからね。日本海軍は条約を遵守しても戦艦の数で米海軍に対抗可能になって、二つの派閥の対立は自然解消しましたからね」
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