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第二十七話 アメリカへの航海 その6

 ソードフィッシュの搭乗員たちは自分たちが投下した爆雷で荒れる海面を見ていた。


 磁気探知機は海中にある海賊潜水艦が増速したことを捉えていた。


 ソードフィッシュは航空機としては低速であるが、もちろん潜水艦よりは遥かに高速である。


 ソードフィッシュは海賊潜水艦の針路に先回りした。


 海賊潜水艦の鼻先に叩き付けるように爆雷を投下した。


 今回も海賊潜水艦に損傷を与えないギリギリの距離で投下した。


 海賊潜水艦は潜望鏡が使えない深度を航行しているので、海上を見ることはできない。


 聴音機のみを頼りにして周囲の状況を把握しようとしているはずだ。


 海賊潜水艦の聴音機には近くには艦艇の機関音などは探知できていない。


 それなのに至近距離で爆雷を投下されたということは、航空機によるものだと海賊潜水艦には分かったはずだ。


 そして、爆雷がわざと自身に被害を与えないギリギリの距離に投下されている。

 

 つまり、「威嚇」「警告」だと気づいているはずだ。


 ソードフィッシュは一時爆雷の投下を中止し、海賊潜水艦の針路を磁気探知機で捉えた。


 海賊潜水艦は速力を上げ深度を下げた。


 ソードフィッシュは現状を「プリンス・オブ・ウェールズ」に向けて送信した。




「浮上して来ないようですね。フィリップス提督」


「リーチ艦長。向こうはこちらが『降伏』をうながしていると気づいているだろうに何故降伏しないのだと思う?」


「海賊潜水艦の乗組員の正体がアメリカ合衆国海軍の軍人だとすれば、逮捕されれば全員銃殺刑は間違いなしですから降伏はできないのでしょう」


「我々には海賊潜水艦に対する裁判権は無いが、アメリカ海軍の方では海賊潜水艦が背後にある組織について情報提供すれば、一種の司法取引のようなもので減刑するつもりでいるようなのだがな」


「それを伝える方法が潜航している海賊潜水艦に対しては無いのが問題ですな」


「仕方がない。海賊潜水艦がバッテリーか空気が切れるまで制圧し続けるしかない。駆逐艦二隻を海賊潜水艦に向けろ」


「同行しているのは駆逐艦が四隻だけです。この『プリンス・オブ・ウェールズ』の護衛が二隻だけでは手薄になるのでは?」


「海賊潜水艦を制圧し続けるには最低二隻は必要だろう。相手は正規の海軍では無い。本艦に護衛には二隻で充分だろう」


「了解しました」




 駆逐艦二隻が「プリンス・オブ・ウェールズ」を離れて海賊潜水艦のいる海域に向かった。


 フィリップス提督たちは気づいていなかったが、「プリンス・オブ・ウェールズ」の近くにもう一隻潜水艦がいた。


 その潜水艦は「プリンス・オブ・ウェールズ」の護衛が二隻だけになったのを確認すると、魚雷攻撃のための準備を始めた。

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