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第二十五話 アメリカへの航海 その4

 ソードフィッシュが「プリンス・オブ・ウェールズ」の後部飛行甲板から発艦した。


 対潜哨戒のためである。


「しかし、ようやく大西洋まで戻って来たというのに我々は妙な事をしていますね。フィリップス提督」


「リーチ艦長、私もそう思うが、これはアメリカ合衆国海軍からの要請なのだ。仕方があるまい」


「それは分かっていますが、二十世紀も半ばになろうとしているのに『海賊退治』をすることになるとは思いませんでしたよ」


「確かにな。しかも、その海賊は『アメリカ合衆国海軍の潜水艦』である可能性が高いと言うのだからな」


 最近、アメリカの東海岸沿岸で海賊行為が多発している。


 商船が襲われて積み荷ごと船が奪われているのだ。


 海賊の手口は次のようなものだ。


 昼間、一隻で航行中の商船に、アメリカ合衆国海軍旗を掲げた潜水艦が近づいて来る。


 潜水艦は手旗信号で臨検することを商船に伝える。


 商船の側は素直に臨検を受け入れる。


 潜水艦の乗組員たちが臨検のために商船に移乗すると商船の船員たちに銃を突き付け船を乗っ取るのだ。


 救命ボートに商船の船員たちを乗り移らせると、奪った商船と潜水艦はどこかへ去って行く。


「妙な事に、この海賊たちは商船の乗組員を一人も死なせていないそうですな。フィリップス提督」


「普通は軍事作戦として商船を沈める場合は乗組員ごと沈めるからな。昔は商船に警告して船員が脱出してから商船だけを沈めていたが、最近はそういうことは無くなったからな。しかし、この海賊たちは伝統的な海賊としての商売をしている。積み荷ごと商船を売り飛ばしているからな。少しでも高く売るために船はなるべく無傷で手に入れたいのだろう」


 アメリカ合衆国国内での混乱により、アメリカ近海の海上も治安が悪化している。


 周辺諸国もその影響は受けている。


 海賊に奪われた商船が周辺諸国で船名を変えて売却されたのが発見されているのだ。


 アメリカ側はもちろん返還交渉をしているが、現在の所有者は「善意の第三者」になるため、交渉は難航している。


「海賊潜水艦はアメリカ合衆国海軍に所属している艦の可能性が高いそうだからな。アメリカ海軍自身が海賊退治に乗り出すと、情報が漏れて逃げられしまうかもしれない。だから、部外者である我々にアメリカ海軍は海賊退治を依頼したのだ。リーチ艦長」


「フィリップス提督、その理屈は分かりますが、こんな寄り道ではなく、一刻も早く英本土奪還のための本道に戻りたいです」


「それは私も同感だ。だが、まずは目の前の任務に専念しよう」

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