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第二十一話 アメリカの事情 その6

本物のマッカーサーは人に対する好き嫌いが激しいところがあり、側近には自身の「お気に入り」ばかりを集める癖があった。


他にもさまざまな欠点はあったが、本物のマッカーサーには「カリスマ性」はあり、何とかアメリカ合衆国を切り回していた。


たが、影武者のマッカーサーを仕立てた側近たちがしたのは、自分たちが甘い汁を吸うための「利権の配分」であった。


ホワイトハウスが行う政策の意志決定は、側近たちの利権の配分が優先され、賄賂が横行した。


それによって中央の政界が混乱すると、もともと政治的に独立性が高い各州は独自の判断で行動し始めた。






「まるで、日本の歴史におけるオーニンの乱のような状況だな」


日本に来て以来、日本史について少し勉強しているフィリップス提督は書類を読みながらつぶやいた。


それにリーチ艦長が応じた。


「はい、日本の戦国時代は地方領主であるダイミョーが中央政府たるバクフを無視したことで始まりましたが、アメリカにおいては州知事が連邦政府を無視し始めております。アメリカは南北戦争以来の内戦寸前の状態ですな」


「リーチ艦長、南北戦争はアメリカが南部と北部に分裂したから分かりやすかったが、今のアメリカはモザイク状になっている」


「はい、州ごとに主義主張が異なっています。 『白人至上主義』を唱える州があるかと思えば、『人種平等』を唱える州もあります。さらには『共産主義』を掲げる州もあります」


フィリップス提督は息を吐くと話を続けた。


「困惑すべきか、笑うべきか分からない状況なのが、その『共産主義』を掲げたアメリカ西海岸にあるいくつかの州とハワイが、連合を組んで、日本帝国政府と我が英国臨時政府に支援を求めているということだ。普通に考えるのならば共産主義者ならばソ連に支援を求めるべきだろう」


リーチ艦長はあきれたような顔で応じた。


「その理由も書類には書いてありますな。自分たちとは敵対関係にある州がソ連から支援を受けているからだそうで。それに対抗するために我が英国と日本に支援を求めているそうすな」


フィリップス提督は苦笑した。


「その結果として、我が英国海軍も日本海軍もハワイとアメリカ西海岸の軍港を使えるようになった」


「はい、側近たちが自分たちの利権であるアメリカ東部の防衛を優先して、ハワイと西海岸からアメリカ海軍を引き上げたため、現地の州政府との交渉で、我々が空き家になった軍港を使えるようになりました」


フィリップス提督は皮肉に笑った。


「それで、我々が『ソビエツキー・ソユーズ』を撃沈したことを大々的に宣伝できなくなった。ハワイも西海岸諸州も共産主義を理想化しているからな、軍港の使用に支障が出ないようにと、チャーチル首相のお考えだ。さて!リーチ艦長!この『プリンス・オブ・ウェールズ』でハワイとアメリカ西海岸へ楽しい旅行に出かけるぞ!」

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