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第十八話 アメリカの事情 その3

マッカーサー大統領の肝煎りで連邦軍まで投入して、マフィアが所有する秘密蒸留所を摘発しようとした。


しかし、上手くは行かなかった。


マフィアの秘密蒸留所は更に深く隠せられたり、アメリカの隣国であるカナダやメキシコに合法的な蒸留所を建てたりしたのである。


マフィアの蒸留所の摘発に連邦軍は失敗した。


しかし、現場の人間にとっては「失敗しました」と報告して済まされることではなかった。


マッカーサー大統領の肝煎りの作戦に失敗したら間違いなく出世に響くからである。


現場の人間たちは「ノルマ」を達成するために違法ではないが正当とも言えない手段を選んだ。


禁酒法の施行以前から農家では蒸留酒が造られていた。


主に自家消費用と近隣との物々交換用である。


アメリカ独立戦争以前から先祖代々蒸留酒を造ってきた農家にとっては、禁酒法の成立により「今日から、あなたたちの造っている酒は密造酒として違法になります」などと言われても冗談でしかなく、施行されてもほとんど気にせずに造り続けていた。


田舎の小さな町や村の保安官は、農家で密造酒が造られているのは知っていたが、取り締まるようなことはせず。それどころか、自分たちも購入して飲んでいた。


新聞の写真でしか顔を知らない政治家たちが遠いワシントンで決めた法律よりも、田舎の伝統的な人間関係の方を重視したのである。


しかし、「ノルマ」を果たそうとした連邦軍はそんな「田舎の事情」を無視した。


農家の蒸留所を「マフィアと結託した秘密蒸留所」だと摘発したのであった。


禁酒法に違反しているのは確かだったので、摘発することは合法だったが、「マフィアと結託している」のは多くが濡れ衣であった。


しかし、少数ではあるが、マフィア向きに酒を造っている農家もあったので、これを現場の人間は「摘発は成功した」と過大に報告した。


現場の事情を知らないマッカーサー大統領は、報告に満足して、蒸留所の摘発にますます励むように命令した。


連邦軍は肝心のマフィアの蒸留所を無視をして、農家の蒸留所をターゲットに次々と摘発した。


そんな中一つの事件が起こった。


摘発を受けた多くの農家は、機関銃まで向けてくる連邦軍の摘発に素直に従うしかなかった。


しかし、ある農家で建物に隠れた人間が連邦軍の人間を猟銃で狙撃したのであった。


連邦軍は直ちに反撃して、狙撃犯は射殺された。


遺体を確認して判明したが、狙撃犯は十歳の少年であった。


それがアメリカ全土を巻き込む大混乱の切っ掛けとなったのであった。

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