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第十七話 アメリカの事情 その2

アメリカ合衆国国民は、民族・人種などによる格差の他に、富裕層・貧困層による格差がひどくなっていた。


富裕層・貧困層の格差を象徴するのが禁酒法である。


1920年に施行された禁酒法は、1933年に廃止も検討されたが、1940年代現在も有効な法律である。


アメリカにおいては酒場が売春や賭博の温床になっていたため「健全な社会を維持するため」に禁酒法は施行された。


禁酒法の施工された社会では、アメリカ国民は全員が酒を飲まなかった……ということはなかった。


禁酒法は日本語で言うところのザル法であった。


禁酒法が禁止しているのは、「酒の製造・販売・運搬」であり、酒を飲むことは禁止していなかった。


富裕層は、会員制の秘密クラブで密輸された外国製の高級酒を飲んだり、アメリカの国内法である禁酒法が適用されないアメリカ領海外を航行するクルーズ客船で合法的に高級酒を飲んだりしていた。


そんなことはできない貧困層は安酒を飲んでいた。


もちろん、酒の製造は禁止されているので、手に入るのは密造酒である。


昔からある農家の自家製の酒が手に入るのはいい方で、多くは犯罪組織であるマフィアが製造する密造酒である。


マフィアが警察の目から逃れるために秘密の蒸留所でアルコール度数の高い蒸留酒が製造されいている。


蒸留酒が好まれる理由は、アルコール度数が高く手っ取り早く酔っぱらえるからである。


アルコール度数九十パーセント以上のものもあった。


それが徐々にアメリカ社会を蝕んでいった。


マフィアが秘密蒸留所で製造する蒸留酒は、当たり前ではあるが公的機関による監督がされないので、衛生管理などに問題があった。


飲めば健康を害するどころか、失明や命を落とす危険すらあった。


しかし、アメリカの貧困層は手に入る酒が、それしかないので飲み続けた。


マフィアによる違法な酒を取り締まるためのアメリカの官憲による取り締まりは厳しく、街中で銃撃戦が行われるほどであった。


厳しく取り締まるほど、マフィアは深く潜って秘密蒸留所で密造酒を製造し続けて、密造酒はアメリカ社会に蔓延した。


一部の識者は「禁酒法を廃止すればマフィアの資金源を断ち、密造酒の蔓延もなくなる」と、マッカーサー大統領に意見した。


しかし、マッカーサー大統領は「禁酒法は健全な社会を維持するために必要」「麦はビールにするよりも子供も食べるパンにするべきだ」と意見を退けた。


マッカーサー大統領は密造酒を根絶しようと、連邦軍の投入を決意した。


それが更にアメリカを混迷の渦に巻き込むことになった。

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