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第十五話 電話の相手

リーチ艦長が電話の受話器を手にした。


受話器から聞こえる声にリーチ艦長は驚愕した。


「フリップス提督、もうすぐ、こちらに来られるそうです!」


「誰がだね?」








突然の訪問に応接室で緊張しながらフィリップス提督とリーチ艦長は待っていた。


十分ほど後、応接室に一人の男が訪れた。


その男は七十年ほど未来ならば、ダイエットと禁煙を周りから薦められるであろうブルドックを連想される顔で葉巻をふかしていた。


老人と言える年齢の男であったが、異様なほどに活力を感じさせた。


自分たち英国人が日本の地にあって、セイロンティーが飲めることを喜び、キューバ産の葉巻がなかなか手に入らないことを嘆くと本題に入った。


その男がフィリップス提督たちと会談していたのは三十分ぐらいで、用件を済ませると帰って行った。






フィリップス提督とリーチ艦長は執務室に戻ると緊張を解いた。


「来られる十分前に連絡をされるとは……、もっと早く連絡をくだされば、心の準備ができましたのに……」


リーチ艦長が愚痴めいたことを言った。


「リーチ艦長、気持ちは分かるぞ、我々は心理的な『奇襲』を受けたのだ。あの英国臨時政府の首相兼海軍大臣であるチャーチル閣下に」


英国政府も英本土を脱出して、今は日本にある。


英国臨時政府の首班を務めているのがチャーチルなのだ。


「しかし、わざわざ首相閣下が直々に事情を説明に来られるとは、この書類を送るだけで良かったのでは?」


リーチ艦長はチャーチルが置いていった書類を手にした。


「書類だけだったら我々が反発するかもしれないだろ?だから、いきなり首相閣下が直々に来るなんて奇襲を我々に仕掛けたんだ。そんなことまでされたら素直に説明を受け入れるしかない。我々が離反することはあり得ないが、反発心を持たれたら色々と軋轢が起きるだろう」


「なるほど、確かにそうですね」


「首相閣下は似合わないことに我々に気を使っているよ。弾薬や燃料は日本から提供されて充分とは言えないが何とかなっているが、我々は慢性的な人手不足に悩まされている。そんな中で『ソビエツキー・ソユーズ撃沈』なんて久々の大戦果を挙げたのに、それが表立って発表されないとなったら不満がたまる。それを抑えるために首相閣下は来られたのだろう」


「直接士官や水兵たちの不満を抑えるのは、我々の仕事ということですね。フィリップス提督」


「その通りだ。リーチ艦長、首相閣下から概略は口頭で説明されたが、詳細を知るために書類を読むことにしよう」

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