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第十三話 ソビエツキー・ソユーズ追撃戦 その7

そこで、次期新型戦艦用に開発中だった十八インチ砲をソ連に渡すことにしたのだ。


設計図などの技術関係の書類をソ連側に引き渡すだけでなく、試験用に製造された十八インチ砲のを表向きは試射による砲身破裂でスクラップにしたということにして、現物をソ連側に引き渡したのだ。


しかし、これだけ大規模になるとスパイ行為をバレないようにするのは難しくなり、陸軍憲兵隊・海軍警務隊・特別高等警察の合同捜査によりすべては発覚した。


関係者はほとんどが逮捕・投獄されたが、一部の海軍士官がソ連に亡命して、ソ連海軍の発展に協力している。


日本の政治家・高級官僚・軍人が関わっていた大規模なスパイ事件は日本のあらゆる面に影響を与えた。


日本海軍については、逮捕・亡命した海軍士官のほとんどが砲術関係の兵科将校・技術士官であったため、海軍内部の「鉄砲屋」の影響力が低下して、代わりに「水雷屋」「航空屋」の影響力が増大した。


「水雷屋」「航空屋」は「鉄砲屋」が推し進めていた対戦艦用の中速戦艦よりも、水雷戦隊の支援用と空母の護衛用の高速戦艦を求めたので、軍縮条約の規定内の基準排水量三万五千トンで新造戦艦は充分とした。


そのため軍縮条約を脱退しての基準排水量六万四千トンの十八インチ砲戦艦の新造は中止になった。


(もし、日本が十八インチ砲戦艦を建造していれば、『ソビエツキー・ソユーズ』との戦いはもっと楽にできたのだろうか?)


フィリップス提督は考えていた。


(いや、その場合は日本は軍縮条約から脱退していることになるから我が英国との関係が悪化していて、英本土陥落後に我々が日本に脱出するのは難しかったかもしれない)


「弾薬庫に緊急注水!急げ!」


リーチ艦長が叫ぶように命令していた。


艦橋の窓から艦の前方を見ると主砲塔の一つが吹き飛ばされていた。


もちろん、「ソビエツキー・ソユーズ」の砲撃によるものだ。


「フィリップス提督、弾薬庫の緊急注水に成功!誘爆の危険はありません!」


「うむ」


リーチ艦長の報告にフィリップス提督はうなづいた。


「ソビエツキー・ソユーズ」は先頭艦である「プリンス・オブ・ウェールズ」に砲撃を集中していて、今のが初の命中弾であった。


「プリンス・オブ・ウェールズ」と「ヤマト」はすでに何発も「ソビエツキー・ソユーズ」に命中弾を与えているが、致命的な損害は与えていないようだった。


(『エレクトラ』『 エクスプレス』『 テネドス』『バンパイア』頼む成功してくれ!)


フィリップス提督は内心で祈るように指揮下にある駆逐艦の艦名を呼んだ。

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