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第十話 ソビエツキー・ソユーズ追撃戦 その4

戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」と戦艦「ヤマト」は、主砲を同一目標に向けていた。


目標はもちろん、戦艦「ソビエツキー・ソユーズ」だ。


「プリンス・オブ・ウェールズ」は何度も実戦を経験しているが、「ヤマト」は今回が初の実戦である。


「ヤマト」が初陣であることに若干の不安を感じながらもフィリップス提督は砲撃開始を命じた。


旗艦である「プリンス・オブ・ウェールズ」の主砲が火を噴けば砲撃を開始の合図である。


しかし、「ヤマト」は「プリンス・オブ・ウェールズ」が初弾を放っても、すぐには砲撃しなかった。


少し間を置いて「ヤマト」も砲撃を開始した。


「プリンス・オブ・ウェールズ」の放った砲弾は全弾命中せず目標の周囲に水柱をつくった。


少し遅れて弾着した「ヤマト」も同様の結果であった。


初弾命中というのは、よほどの幸運でなければ起きないので、フィリップス提督もリーチ艦長も失望はしなかった。


リーチ艦長は艦の指揮のため忙しくしているが、フィリップス提督は今はやることが無く比較的暇であった。


作戦は事前に細かく打ち合わせてあり、予想外の事態が起きなければ艦隊を指揮するフィリップス提督が命令をすることはないからだ。


フィリップス提督は余裕がある時は、リーチ艦長と会話をするのが習慣になっていたが、今は声に出さずに現状について考えていた。


(今のところは作戦通りだな。不安の一つは『ヤマト』が私の命令に従ってくれるかどうかだったが、杞憂だったようだ)


フィリップス提督は自分の双眼鏡で「ソビエツキー・ソユーズ」を見た。


(霧が晴れた時に、ソードフィッシュを偵察として出したが、それで『ソビエツキー・ソユーズ』を発見できたのは僥倖だったな。英国本土を失陥して以来不運続きだったが、ようやく少しは運が向いてきたか?)


「プリンス・オブ・ウェールズ」と「ヤマト」の砲撃は間断無く「ソユーズ・ソユーズ」の周囲に激しく水柱を上げている。


そうすることで「ソビエツキー・ソユーズ」の砲撃を妨害しているのだ。


(『ソビエツキー・ソユーズ』のレーダーは航海用で射撃用に使えるほどの精度は無いとの情報は確かだったようだな。ご自慢の十八インチ砲もいまだに撃たない。水柱を間断無く上げることで敵艦の光学照準を妨害するという作戦はうまくいっている。ドイツの企業がソ連に売った船体の技術と日本人の共産主義者がソ連に漏洩した十八インチ砲の技術の組み合わせで造られた艦だが、ソ連は使いこなせていないようだな)


フィリップス提督は突然怒りに駆られた。


もちろん部下たちが動揺するので表には出さなかった。


(まったく、あのヒトラーがドイツに『社会主義市場経済』なんて導入するから、ドイツと日本の技術が混合したソ連の戦艦などという珍妙な戦艦が誕生するのだ!)

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