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校門をくぐれば

作者: 為人
掲載日:2015/05/04

あなたは校門をくぐったことがありますか?

 「みなさーん、おはようございまーす」

 今日も元気な挨拶をする。生徒のみんなはしっかりと挨拶を返してくれる。

 「先生、おはようございます」

 「先生、おはよー」

 「おはよっす」

 生徒のみんなにこんなにも明るく元気な挨拶をしてもらえるようになったのはいつぶりだろうか。

 私がこの学校に来て、もうかなりになるがこうやって挨拶を返してくれるようになったのはつい最近の話だ。それまでは無視されるか、逃げられるかのどちらかだったな。まぁ、私が悪いだけだったんだろうけど、継続は力なりとはよく言ったものだと最近はしみじみと思う。

 今日はこれで全員だったかな。

 「すみませ~ん、校門を閉めないでくださ~い」

 そう言って走ってきたのは、木下くんだった。

 「はいはい、待ってますから速く来なさい。」

 全速力で走る木下くんは校門をくぐる時に、

 「先生、ありがとうございます」

と言い残して私の言葉も待たずに走り去っていった。

 そこで、私は木下くんが落とし物をしていることに気付いた。

 それは、頭だった。

 「すみません、全力で走ったら落ちちゃいました。できれば、先生が持っていてくれませんか?」

 まったく、世話の焼ける生徒だよ。

 「それじゃあ、君も私と一緒に校門にいるしかないな」

 私は今日もこの校門にいる。

 私のかわいいかわいい生徒がこっちに来た時にはしっかりと挨拶をしないといけない。

 さっそく、私の生徒がやってきた。驚かしてはいけないと私は木下くんを校門の陰に隠す。

 「すみません、ここはドコですか?確か、さっきまで電車に乗ってたはずなんですけど」

 ここは校門。誰もが一度は通る門。

 「あなたは死んだんですよ。その証拠にほら」

 私がいつも持っている鏡を胸ポケットから取り出して顔を映してあげる。

 「映らないでしょう?」

 息を飲むこの様子はもう何度も何度も見ている。そして、もう何度も何度も言っている言葉を口にする。

 「ようこそ。ここは学校です。青春時代に何かしらの後悔が残っている霊が辿り着く場所です。今日からあなたはここの生徒です。あなたはここでやり直す機会が与えられます」

 この説明は何度言っても返ってくる反応は似たり寄ったりだ。

 「待ってください。私は後悔なんて………」

 私は問い詰めるように相手の言葉を遮る。

 「ありますよね、後悔。なかったとは言えないですよね?一人の生徒がイジメが原因で自殺しましたよね?イジメていたのはあなたですよね?つまり、あなたは一人の生徒を殺しているんです。後悔していないんですか?」

 「な、何を言ってるんですか?」

 明らかに上擦った声が聞こえる。これはこれから先にやっていけるかわからないな。

 「あなたにはこれから、贖罪をしてもらいます」

 「贖罪も何も、イジメなんかしてませんよ」

 こういう罪を犯した人物は何を言っても意味はない。長い時間見てきたからわかる。私もそうだった。

 「ここは地獄であり、天国です。罪を抱えた人には己の罪によって起きた悲劇を、罪なく死んだ人にはあったかもしれない日常を与える場所です」

 そして、昔に自分自身に言われた言葉を告げる。

 「つまり、あなたにとっては地獄です」



 つまり、お前にとっては地獄だ。

 仕方ないだろう。お前は教師を殺したんだからな。でも、お前の場合は情状酌量の余地あり、だそうだ。

 お前はその教師に襲われそうになったところを抵抗したら殺しちゃったらしいしな。

 で、だ。

 お前は今日からそのお前が憎んでいた教師になるという贖罪が用意されている訳だが、お前がその気ならこっち側に来ないか?

 お前には、これからは俺の代わりにこの校門で俺のかわいいかわいい生徒共を待っていてくれ。

 そして、俺と同じように道を示してやってくれ。

 それがお前の贖罪ってことでどうだ?



 「最後に一つだけ、言わせてもらいます。これは絶好のチャンスです。罪を犯した人はその罪を自分では消せません。これはあなたの罪を清めるための試練なのです。だから、乗り越えてください。それがあなたが選ぶべき道です」



 私は今日も校門に立つ。校門で私のかわいいかわいい生徒を待っている。終業のチャイムが鳴り、だんだんと生徒が校門をくぐり帰って行く。いや、還っていく。少しだけ寂しいな。

 たそがれている私の肩をつんつんしてくる人がいた。私が振り返ると、木下くんが頭を返して欲しげにこちらを見て(?)いた。

 「はいはい、頭のことね。ちょっと待ってね。確かこの辺りに………」

 ない。

 「ごっ、ごめんね。この辺りに置いておいたはずなんだけど、あれ?ドコ?ドコ行っちゃったの?」

 「た、す、け、、、て」

 微かに聞こえた声の方を見ると、私の足の下にあった。

 「本当にごめんねぇぇ~」

私にも先生がいてくれたら、良かったのに。

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