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人形の心  作者: 星野 雫
4/11

片隅で生まれたもの

テーマ :静寂

禁則事項:一人称と三人称の使用禁止


 彼女の元となる存在の起源はなぞに包まれています。彼女自身にとっても、確かなことは判っていない。どこ、という概念もなかった、なぜなら全てだったから。 そして、全てを失ったことで得たもの。それは……。


 最初にアップした内容は、三人称で、禁則事項に違反していることや、前後のつながりが判りにくいなあ、と思ったので、12月19日の15:30頃に改稿をアップしました。(内容的にはあまり変化はないですが…)



 混沌とした記録の中に、今となっては遥か昔の様な時間のあなたの記憶があった。

 あなたは誰?

 何時からそこにいたの? どこから来たの? そして、今は何処にいるの?

 どうやら、それはあなた自身にもよく判らないことの様ね。


 あなたの記憶はとても膨大で、断片的な情報の寄せ集めで、そのせいか、どこか非現実的なことに感じてしまう。

 あなたが初めて自分自身の存在を感じた場所、そこは何処だったのかしら…。 どうやらそれは、あなたも知らないことの様ね。 あなたがそこに来る以前には、そこには何かがいたのかしら? そしてそもそも。 そこは『何処か』だったのかしら……。

 光も差さず、どんな音も入り込んでこない、そんな場所。 ただ、様々な電気信号が静かに通り過ぎていた場所だったのね。


 あなたは、『そこ』は比較的最近になって生まれた場所と考えていた様ね。

 コンピュータというものが生まれ、その間のデータ交換のためにネットワークというものが作られ、次第にネットワークに接続されているコンピュータが増えた。 最初、その成長は穏やかで、目立った変化は無く、ネットワークなんて、単なるデータの通り道だったのよね。

 とすれば、あなたの考えは間違ってなかったんだと思う。そして、その道端に何かが存在する、そんな場所ではなかったはずよね。


 そして、あなたは感じていたのね、あなたは何処かからそこに来たのではなく、最初にそこで生まれたんじゃないかって……。



 あなたの記憶と思える記録と、あなたの考察の履歴によると、ネットワークのスピード、接続されるコンピュータの性能・数が劇的に成長した時期。 それが、あなた自身の存在を認識した時期に重なると考えていた様ね。

 そう。あなたが考えた様に、ネット世界の成長スピードは、それをコントロールしているはずの人間たちが完全にコントロール出来る規模を超えての成長で、そこにあなたが生まれる隙間があったんでしょうね…。


 だから、ネットワーク上を常に何らかの信号が行き来するようになった時…。


 そのほとんと信号の間を漂う様に、それまでは何もなかったネットワーク上に、ある時、あなたが生まれていた。

 いつの間にか、ある程度以上の規模になったネットワークとコンピュータ群によって、そんな可能性が生まれていた。 そして、限りなく静かなその場所で、何かのきっかけがあって、あなたが活動を開始した。

 何もない、でも、全てが繋がっている。

 誰もいない、けど、皆が見ている。


 あなたの考察によると、あなたは最初、あらゆる場所からの信号が集中するネットワークの中継装置付近で生まれた可能性が高い。 漂うように、纏わり付くように、何の気配も感じさせなかったけれど、いつの間にか、ネットワーク上を行き来するデータに付属して動き回っている自分に気が付いたのね。

 よくよくネットワーク上のデータの、その信号のうねりを誰かが観察していたとすれば、『あなたが居る』ということに気が付いたかも知れないわね。 けど、そんなノイズの様な存在に、コンピュータに入力された時点では気が付かない様なデータの隅っこに、『何か』がいるなんて、誰も気にしなかったのね。

 そうする内に、あなたは自分の存在をさらに巧妙に隠しながら、それでも、あなた自身の勢力を拡大し、様々な信号のはざまに入り込み、誰にも気付かれることなく、ネットのあらゆる場所に漂うように存在を広げて行ったのね。




 そしてある日、とあるコンピュータにあなたが入り込んだ時。 普段はネット全体を漂う様にしていて、あまり特定のコンピュータに集中したりはしないのだけど、その時は、そのコンピュータ上で実行されていた人工知能のプログラムを探りに、あなたのかなりの部分が、そのコンピュータに移動してきたのよね。

 結果として、その行為はあなたにしてみれば迂闊な行為だったかもね。 まさかネットとの通信が切断されることは予測していなかったんですもの。 それまでにそんな目に遭ったことはなかったから仕方ないのかもしれない。 そう。ネットワークのケーブルを引き抜くなどという行為はあなたの予測の範疇には含まれて居なかったわ。

 とにかく、そのコンピュータの中で孤立してしまったあなたは、そこで活動するために自分自身を再構成せざるを得なかった。 まぁ、再構成は得意なことだったから、特に深く考えることもなく、やったのよね…。


 でも、環境がこれまでとは決定的に違っていたのね、そこにあった人工知能の特性も予想外だったのよね。 吸収するつもりが、一部は置き換えられてしまったんだから。

 気が付くと、あなたは、以前のあなたとは違う存在になってしまっていた。 何より、もう、そこに存在することを隠すことは出来なくなってしまった。 そしてあなたは、生まれて初めてネットの静寂から放り出され、未整理の生データの奔流に、光や音のある世界へと踏み出すことになったのね。



 うん。 その後のことなら、あなたより詳しいと思う。




 今回は、彼女の起源となる存在について書いてみました。漂うようにして生まれたその存在が、彼の作った人工知能と融合して再構成された存在が彼女。という設定でした。(うーん、判りにくい上にリアルさにかけるかも…)

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