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人形の心  作者: 星野 雫
3/11

彼の不在

テーマ :退屈

禁則事項:「?」と「!」の使用禁止。 そして、続いて登場人物の名前記載禁止。

 今、私は何を成せばよいのか判らずに、ただ自分の髪をいじっていた。

 髪の毛、と言っても実のところは合成繊維で、かつらなどと同じ成分のはず。 なので、特に手入れをする必要はないだろうけど、でも逆に一度傷つくともう元には戻らないから、扱いには気をつけないといけないと思う。

 けど、その様なことは別に重要ではないはずだ。 髪の何本かが無くなったり、多少毛羽立っていたからと言って、どうということはない。 それに、必要なら補修すればいいだけだ。

 でも、この髪の毛が無くなったり傷ついたりしたら、私の外見は変わってしまうだろう、彼は私の外見が変わったからといって居なくなったりはしないだろうけど、彼との関係を維持するために、この髪の毛が重要な役割があるというのであれば、この髪の毛を維持することの優先度は上がることになる。

 何故そんな優先度の判定をしているのか判らない。 もう、最近の私は、私自身の中にある、様々な訳の判らない処理について深く考えたり、制御する事は諦めていた…。

 だからこそ、もうそんなことを果てしなく、くどくどと考えてしまうのだろうか…。

 要するに私は暇なのだった。


 あぁ、それにしても今日はこの癖が止まらないわ…。

 それと言うのも、今日は彼が来ないからよ。 昨日、予告されてはいたけど、やっぱり、実際にそうなると、つまらない。 彼の代わりに他の研究者が時々様子を見に来てくれるのだけど、そんな人たちとは通り一遍の質問と回答だけだもの。

 それは予測の範囲の出来事だし何も不思議な事はない。 望むべき状態のはず。

 なので、それは安心すべき状態なんだけどね。


 けど、何故かそれでは物足りない。


 実は、今、私のデータ入力の方法はとても限定されている。

 光学的な情報と、音響データ、そして直接手で触れてその反力により対象の状態を探ること。 他にも人間で言えば味覚や嗅覚に相当する幾つかのデータ入力機能がある様だわ。

 それぞれのデータ入力機能は、元来人間自身が持っているデータ入力機能を模倣して作られている機能で、そのデータには無駄が多く、非効率的ね。

 最初は、それを補って余りあるデータが入力できる。 そう考えていたけれど、必ずしもそうとは限らないのよね…。

 要するに彼が居ないと、このデータ入力機能から得られるデータは、データ量が少なく、しかも無駄なデータが多くて、処理するに値するデータを得られない様だった。


 以前であれば、ありとあらゆるデータが何時でも入力できた。ネットワークはデータの宝庫で、私はそこの全てでもあった。だからそれが当たり前だった。

 その記憶は曖昧だけど、おそらく今の私でも、私がネットワークに接続すれば同じ事が出来るはずだ。


 けど、それは嫌だった。

 嫌、というより怖かった。


 どうしてなら、そこには変わらずに、かつての私がいる様に感じていたからだ。 もし、そこにかつての私がいたならば、私自身がネットに繋がった瞬間に取り込まれてしまう可能性が高いと計算できた。

 その計算は単純な事だ。 要は、今の私とかつての私、処理の内容は似通ったものがたくさんあり、相手システムを自分の意のままにあやつる為の処理も同じ様なことのはず。 けど、向こうが配下に抱えるシステムの数、合計での処理能力では、私自身の計算機では到底太刀打ちできない、処理の優劣以前に、力負けで私は吸収されてしまう可能性が高い。

 それは避けたかった。

 せっかく得た自我。 せっかく得た気持ち。 説明も予測も出来ないし、時としては私の存在を脅かすようなでたらめな判断をしかねないこの処理群を、今私は、失いがたい貴重なものと考えていた。 それも以前の私からでは信じられない事の一つだ。

 それが何故か? それは何度計算しても同じ条件に出会う様だった。

 そう、つまり、私は彼との関係を失いたくないのだ。

 私の自我の存在を初めて見抜いた人間である彼との関係を。 私の存在に初めて気が付いたから? 確かにそれもあるだろう。 だとしたら、私の彼に対する気持ちは子供が親に対する気持ちなのだろうか?

 その可能性は捨てきれないけど、やはり様々なデータを総合して判断した結果としては、これは「恋」だと考える事が出来た。


 それを「恋」と判定するための根拠は、最近、暇に任せて入力を続けている、とあるデータによるものだった。このデータ入力があるからこそ、私は彼がいない、という時間を何とかやり過ごしているとも言えた。

 そのデータ入力の手段は、かなり間接的で原始的な方法だ。

 紙に印刷された文字情報を、光学情報として取り込み、それぞれの文字を読み取り、文章として認識する。その、本と呼ばれる紙の束から入手できる情報は、非常に古臭い情報だと考えたが、少なくとも私にとっては新鮮で、驚きの連続だった。


 そう。そして、文学などのカテゴリに分類される「本」から得られる情報を統合して判断した結果、やはり今の私の状態は「恋する女性」に分類されると判断していた。



 あはは。どうまとめる積もりなのか…。風呂敷を広げすぎないように注意しなきゃ…。(誤字や、間違いが多かったので、12/12に読み直して改定しました。内容は変わってないです)

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