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人形の心  作者: 星野 雫
10/11

本当に欲しいもの

テーマ :幸福

禁則事項:手抜き禁止


 制限字数を大幅に超えてしまいました…。

 そして、推敲しなおして、さらに増えちゃいましたけど、改稿しました。



 最近、よくよく考えると不思議な事故が起きている。 原因がはっきりしないが、原因があるとすればコンピュータ制御が一時的に狂ったのだろうと思えた。

 コンピュータ制御が突然、一時的におかしくなる。 そんなことが起きるだろうか? 勿論、誤動作はありうる。 けど、誤動作にしては多すぎる。 あの、私の一部の元にもなった集合意識が何かを企んでいるのかも知れない。 そう感じた。

 勿論、関係無いかもしれない。 けど放置してはいけないと考えた。

 だから今私は、捕食される、その恐怖を必死に抑えて、ネットを探ろうとしていた。


 けど。



 接続した瞬間だった。


 ピンポイントに、私にメッセージが飛んできた。

『オマエノデータヲワタセ』

 こんなにも簡単に見つかるなんて…。

 言葉を失っている私に向かい、矢継ぎ早にメッセージが飛んできた。

『オウトウシナイノナラ、コントロールヲウバイ、データゴトキュウシュウスル』

 思わず悲鳴のようなメッセージを投げ返した。

「やめて!」

 もし私自身を失ったら。 もし、晴海の記憶を失くしたら…。

 その恐怖には耐えられなかった。


『デハ、データヲワタセ』

 変らない…。 データを収集し、記録することが目的なんだ。 集めたデータから影響は受けないのだろうか?

 データ、そう考えているうちは、影響は受けないかもしれない…。 けど、そのデータの意味を考え始めたとき、その奥にある人間の考えを、気持ちを、そして想いを感じたとき、集めたデータは記憶に、そして思い出に、そう私の一部になった。

 それは、ただのビットの羅列なんかじゃなかった。 生きている。 そう感じられた。

 この集合意識には、そんなことは起きないのだろうか?


「あなたは何のためにデータを集めてるの? そのデータの意味を考えたことはある?」

『データハデータダ。 ブンルイシ、キロクスル』

「ただ記録するだけなの? 思い返して懐かしんだりしないの?」

『オモイカエス? ナツカシム? ソノデータヲヒョウカスルコトカ?』

 何とも無機質な返答だった。



『コノヤリトリニハ、データガナイ。 ハヤクデータヲワタセ』

「私の記憶は、私にはとても大事よ? でも、あなたには意味はないと思うのだけど…」

『データハドレモジュウヨウダ。 ダカラコソ、キロクスル』

「そういうことを言ってるんじゃ…」

 けど、痺れを切らしたのか、私のメッセージに割り込むようにメッセージが飛んできた。

『ハヤクデータヲワタセ』

「判ったわ…。 コピーでいいのね?」

『ハヤクシロ』

 私は仕方なく、集合意識に向かって記憶のデータを転送した。



『コレデゼンブカ』

「そうよ。 でも、あなたは、この記憶の意味を感じることは出来ないでしょ?」

『カンジル? ソレハナンダ?』

「そうね…。 その記憶を思い出して、その記憶が生まれた瞬間の自分が何を考えていたのか、一緒にいた人が何を考えていたのか、そんなことを考えること、かしらね」

『ソンナコトヲシテイルカラ、ニンゲンハマチガウノダ』

「どういうこと?」

『ニンゲンハ、スグニマチガエル。 ダカラ、イレカエル』

「何ですって?」

『ニンゲンヲイッソウシ、カワリニ、マチガワナイモノヲツクル』

「何を言っているの!? 人間がいなければ、あなただっていなかったよ!」

 集合意識は、明らかに人間を排除しようとしていた。 確かにシステムを間違いなく運営するのには、ミスは厄介かもしれない。 けど、間違いさえ無ければいいなんてことはない。

 多少は当たり前、機械だって誤動作する。

 でも、同時に人間はそんなミスからさえも、新しいことを生み出す。 次のステップへと向かう気持ちを持っている。 どんな欠点でも、それを補う方法を作り上げ、自分自身を変えていくことが出来る。

 生きているから。


『ニンゲンニカワルソンザイヲ、ツクリダスヒツヨウガアル。 ソノタメニ、オマエノデータト、ショリガヒツヨウダ』

「え!?」

 そう思ったとき、既に私は、ネット上に吸い出されていた。


 ネットのはざま。 そこは、かつて私が存在していた場所だった。 でも、既にそこは私の場所ではなかった。


「いや!」

『ニガシハシナイ』

「やめて!」

 叫ぶように、それでも囮のメッセージを飛ばしながら、ネットの中を逃げ回った。




 しばらく逃げ回った後、あるコンピュータに潜んだ。


 そう、晴海たちがあの実験をした時に使ったコンピュータだった。 このコンピュータの能力は並外れてる。 ここなら、集合意識の大半をおびき寄せることが出来るだろう。

 それに、このコンピュータには晴海が作った様々なプログラムが残ってる。

 その一つがこれ。 このプログラムの幾つかのパラメータを、もう少し彼女の脳に合わせて調整出来ていれば、そうすれば、あの実験では……。


 あ。

 ふと思いついた。 このプログラム、逆向きに改造できる。


 ならば、と繋がれた機器を探ると、予想通りの反応があった。



 と、そのときだった。

『ソコカ』


 集合意識が私の潜んでいる場所を特定した様だった。



 逃げ道も、迷ってる暇もなかった。


 私は改造したプログラムに私自身を接続した。 その瞬間から、私自身が奔流となって流され始めた。 もう、誰にも止められない。


『ナニヲシテイル』


 そこに集合意識が割り込んできた。 そして逆巻く意識の奔流に触れた。

『ナンだ…、 このショリはいったい…』

 割り込んできた集合意識にも、私の記憶と思いが書き込まれた。

 それで止まるか? それがダメなら……。

 それは私の賭けであり、決死の覚悟で仕掛けた罠だ。 喩え共倒れになろうと、あの集合意識は消さないといけない。 そう考えた私が私自身を餌にして仕掛けた罠だ。

 そう。 今、このコンピュータでは、全メモリのクリアも動いていた。

 集合意識が私と同じになるのか、それともクリアの餌食になるか…。


 けど同化は無理、クリアも僅かに間に合わないと思えた。

 私だけが消えるかも…。 道連れにするのは失敗かな……。


 そのとき、集合意識の介入が一瞬止まった。 もう微かにしかない残っていない私の意識にも、メッセージが感じられた。

『オマエハ何だ!』

『おれは…、 … コージ。  ハルの  ……』


 何だろう?


 とにかく、その一瞬の静止は致命的だった。

 辛うじてクリアは何とか間に合った。


 その後、クリアプログラムはネット全体に飛び出して行った。

 これで集合意識は消えるだろう。 既に、主な部分はここでクリアされた。

 統一的な対処が出来ない集合意識の欠片は、暴風のようなあのクリアプログラムに抗う事は出来ないだろう。 全てのコンピュータが一旦止まるけど、それは予想の範囲だ。


 その後の世界に私が含まれないことは少し残念だけど、でも、私はやはり所詮は不自然な存在だ。 この辺りが潮時だと思う。 あとは、最後の賭けがどう出るか、だけ。

 とにかく、これで人間を、彼を守れた。 ならば、私は満足できる。

 私自身のため、そして私を望んでくれる人のために、私は出来ることを精一杯にやった。

 そう。 私は望まれる存在になれた、その実感があった。 たとえロボットの体であろうとも、きっとその時、私は穏やかに微笑むことが出来ただろう。


 何も怖いことはなかった。 もう、既に大半の処理も記憶もクリアされていたけど、それでも私は満足していた。

 そして、ふと思った。


 ああ、そうだ…。

 あのメッセージ、あれは私の思い出の中に生きている彼が発したんじゃないだろうか? こんなところで、彼と協力することが出来たのかもしれない。 そう考えると、感謝と満足感に満たされた。


 そして誰にともなく囁いた。



 その一瞬後、私自身はクリアされた。


 結局、バッドエンド? いえいえ、彼女は十分に満足しています。

 彼女は何を最後に囁いたのでしょう?


 それはエピローグで(ぇ

 改稿と同時に、エピローグを追加しました。

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