ブラックキンブリー
もう暴走族なんて時代遅れだ。
そんなことは言われなくてもわかってる。
黒鬼滅仏刹ブラックキンブリーの総長鬼沢竜也は仲間30人といつもの通り公道を逆走していた。
昨今の暴走族はメンバー全員で3人とかの小さな族が多い中、ブラックキンブリーは県内最大規模の暴走族であった。
真夜中の公道を仲間と走る。
夜風が気持ちいい季節だ。
その時である街灯が信号機がすべて灯りを消した。それどころかバイクもヘッドライトがブラックアウトして、鬼沢竜也は空中に身を放り投げられていた。
鬼沢竜也は目を覚ました。したたかに頭を打ったらしくズキズキと頭が痛む。
「おい!お前ら大丈夫か!?」
「総長!大丈夫です!」
「木村か…。他のみんなは?」
特攻隊長の木村圭は辺りを見回していた。
「総長…。鬼沢さん全員おねんねしてるみたいです」
「わかった!いたたっ!俺も少し休むぞ」
そう言って鬼沢竜也は横になり意識が闇へ落ちて行った。
再び鬼沢竜也が目を覚ますとメンバー全員が鬼沢竜也の周りに集まっていた。
その時波の音が聞こえた。
「おい!ここはどこなんだ?」
「鬼沢さん島みたいです」
「島?」
「近くに陸地はあるみたいですけど」
鬼沢竜也はメンバーに指示を出して島のマッピングをすることにした。あと食料と飲水の確保を指示した。
メンバーの1人が木の枝を集めて来て火を起こしている。アイツはキャンプ好きな奴だったな。
メンバーの1人が魚を数匹手にぶら下げて持って来た。素潜りで簡単なモリを作り仕留めたそうだ。
その日は全員で焼き魚を食べて野宿した。
翌日からメンバーの数人が木を使ってメンバー分の小屋みたいな物をこしらえていた。
「鬼沢さん生木ですみませんが雨風はしのげます」
「田中めっちゃたすかるわ、ありがとな」
それから数週間後、近くの砂浜に小舟がやって来た。
年寄りと若者が居た。何故か着物を着ている。
「てめえら!何ガンくれとるんや!!」
ビビる年寄りと若者。
メンバー全員が砂浜に集まってにらみつける。
黒い全員特攻服を着ている。
そして頭はリーゼントで深い剃り込みが全員に入っている。
「ひっ!!鬼じゃ!鬼じゃー!!」
年寄りと若者は小舟に戻り逃げ出して行った。
それから数カ月後、メンバーは全員で近くに見える陸地に橋をかけていた。全員土木関係なので数日で完成した。
全員で上陸すると漁師町ののような漁村があった。
全員で村へ入ると年寄りが「鬼ヶ島から鬼が来たぞ!」と言って逃げ出して言った。
その時村の娘が棒切れを握りしめて俺たちの前に立ち塞がった。
「なにしとるんやお前?」
木村圭が娘に声をかける。
「この村にはなんもないのやから出てって!」
「そうは言ってもやっと橋をかけて来たからなあ」
「あんたら鬼じゃないの?」
「鬼じゃねえよ」
「それにしてもあんたら臭うわ、服洗ってあげるから脱ぎな」
言われてみると確かに臭い。
メンバー全員特攻服を脱ぐと下着姿になった。
「なんで全部脱がんねん、見せられんさみしいものなんの?」
「は!何舐めた口きいとるんや!脱いだるわ!」
溝口悟が全裸になる。
「他のあんたらもさっさっと脱いで渡してくれんかの?」
齢16くらいの娘の度胸に俺も含めメンバー全員が全裸になった。
村娘は村中から男物の衣服を集めて、「身体を清めてから着るように」と俺を含めたメンバーに分けてくれた。そして暖かい粥と貝の入った味噌汁を振る舞ってくれた。
鬼沢は村娘に礼を言った。
「本当に上手かった!ご馳走になったな。俺は鬼沢竜也というが、お前さんの名はなんて言うんだい」
「あたいはおよねだよ」
「およねか、良い名だ」
それからおよねが隠れていた村娘を呼んで来た。
漁師町らしい健康的に日焼けした娘たちだった。
鬼沢たちは一泊して橋をかけた自分たちの島に帰ろうとした。
「世話になったな」
「何言ってんのさ、竜也たちじゃ暮らしもままならないやろ?私達もついていくって、みんなで話し合って決めたんだよ」
「自分たちの村はどうするんだよ?」
「橋渡ればすぐだから大丈夫よ」
こうしてブラックキンブリーと村娘60人が橋を渡って島へと帰って行った。
ブラックキンブリーのメンバーは村娘たちの住まいを建てるべく木を切り出したり、土地を整えたりしていた。
村娘たちの何人かは海女で素潜り漁で充分な食料を手にして来たので食べるには困らなかった。
だだ漁師町では「娘たちが鬼にさらわれたぞー!!」
と大騒ぎであった。
ブラックキンブリーのメンバーと村娘たちは自然とカップルになり、鬼沢竜也もおよねと結ばれた。
とても穏やかで幸せな暮らしが続いていた。
あの桃太郎がやって来るまでは。




