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リポグラム×他視点小説  作者: さ阿
2/2

ディテクティブズの日々【天田奏太視点】

探偵の日々と内容は同じです。

天田奏太視点でリポグラム(特定の文字が不使用)して再構成したものです。

使用不可文字:『こ』『え』『む』『ん』『し』『さ』

同僚が奏太(かなた)とすれ違うたびに敬礼する。奏太もそれに応ずる。


「おはよう。遅かったな、奏太」

「おはよう、明朝からよく精が出ているよ。呆れる」


奏太はやれやれといった様子で肩を竦める。対する同僚はにかりと笑っていう。


「奏太はデスクワークになってからめっちゃ鈍ってるだろ。たまには体を使わないのか。付き合ってやるよ」

「いや、いいよ。それより今追ってるやつを終わらせたい」

「ははっ、愚直だな」


会話を続けていると緩やかに人が多くなる。時計は八を目がけて進み、長い針は六の位置にあった。


「もうそろそろ朝礼だ。早くロッカーに行け。」

「はいはい、後でな」


そういって同僚は素早く離れていった。

奏太はそのまま歩みを進め、警部部のドアを開け、自らのデスクに荷物を置いた。

奏太の席は部屋のまとめ役、警部の通路を跨いで隣にあり、つまりそれは部屋の中で二つ目に優れている警部補を表す。


朝礼はデスクのある部屋である。

警部が出てきて朝礼する。


「おはよう。今日は文月の十日、空の様子は晴れ。みな快活そうで何よりだ。今日もそれぞれ励め。」


警部はきもちよくゆっくりとかたる。奏太はあくびを断つ。

(いつもの退屈な朝礼だ。)


「ときに__」


空気が変わり、奏太は身を振るわせる。


「明日で丁度、◯町であった”◯町有名スポット騒動”から一世紀の一割が経つ。二度とあのような騒動が発生せぬよう、努めていくのだよ」


それでは、といって部長は戻る。聞いた人は喝が入った顔つきで、今日も精一杯勤めようといった様子だ。それを見て奏太も気合を入れた。


騒動はディテクティブズを引き出す。

文月の半ば、◯町有名スポット騒動から一世紀の一割経った。かつて、かの騒動は世界に動揺をもたらすようだった。けれどまた今日有名スポットの赤目の塔で騒動がおきた。かつての騒動と全く同様のスポット、日付、時で。

明朝からニュースが報道する。町中もがやがやと浮ついている。妄想を滾らせて、かつての騒動と同様になるのかとばかり思われている。その中、奏太は憂鬱な顔であるスポットへ歩いていた。国で有名な明智、楼を頼るのは奏太とて全て同意できない。ただ、大騒動が発生すれば頼る、というのが主なベクトルで、奏太は二人と仲が良いから頼まれているだけなのだ。

部屋のベルをならす。


「ディテクティブ、(ろう)の部屋で間違いないですか。」


いつもどおりのつまらない台詞。そのうち会話がドアの中から聞ける。


「ほら、言った通り。来たよ。天田 奏太が。」


楼がはちきれそうな面持ちでドアを開けた。


「僕、警部補の天田 奏太(あまた かなた)です。今日はある騒動の依頼のお伺いです。」

「リワードは、用意できるのかな?まず内容だけでも聞かせてみな。」


いつも通り、楼は硬い口調とは裏腹に笑いながら奏太を席まで導く。


「きっと既知ですよ。次の依頼はある加害です。」

「それって、赤い塔のやつ!?」


それまで唸りながらニュースに頭を埋めていた楼の助っ人、海瀬(うみせ)が顔を上げる。


「かの騒動、どうか協力いただけないですか?」


硬い口調にあわない穏やかな顔の奏太は、二人にはよく慣れた台詞を口にする。


「その依頼、受けよう!」


もう既にバッグを持った楼は奏太を急かす。


「毎度毎度、協力ありがとう。それではそのスポットまで連れていくよ。」


依頼を許すといつもの口調に戻った奏太に懐いた口調で片腕は言う。


「次のリワードはカカオモナカアイスがいい!!」

「ああ、騒動が終わった暁にはお望みのアイスを山程用意する。」


お決まりとなったリワードの取引が終わった。

楼、海瀬、奏太の集まりは、また新たな騒動の解決のために飛び立った。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−


楼と海瀬は奏太に導かれ、発生スポットに来ていた。よく会うポリスから概要の説明をもらった。


「被害を受けたのは大元 音(おおもと おと)、female。ディテクティブ業を営み生きる。持ち物が盗まれた形跡はなく、金もスマホもまだあった。」


楼は土地にまだある血の跡を眺めながら奏太が言うのを聞く。


「なら、お金目当てではないかな。」

「あぁ。海瀬が今までニュースペーパーを見てたから、分かってるだろう?かつて◯町で起きた騒動。俺たちはあの騒動と同一のクロと見て解明を進めている。」

「かつての騒動と大体変わらないの?」


海瀬が嫌そうな顔で問いかける。


「ああ。金目当てではなかったり、起きたときに被害を受けた人の遺体の様子から見て同一のクロだろう。」


『遺体の様子』とは目下の血だまりについてだろう。遺体の頭がぐちゃぐちゃに潰れている。骨だろうか、それとも他の何かだろうか。絶対にマテリアルの違う多くの赤い塊が散らばっている。

楼は目を上げ、周りを見渡すと、楼はちょっとの間顔を歪めた。


「そういや、第一に見つけた人は?言い訳を聞きたいけど。」

「第一に見つけた人は、百目鬼 流(どうめき ながる)。勤め終わりに飲み屋で呑み、帰宅の途中、遺体を見つけて通報。ポリスが周りに着いたときにはもう、被害を受けた人の息はなかったそうだ。そちらにいる、黒のキャップを被った人だ。」


話すのを聞くなり楼は海瀬の腕を掴み、第一に見つけた人に向かって走り出す。


「あっ、っちょ、ま、楼!?手っ、やめてよぉ〜!!!!」



「あの!あなたが第一に見つけた人?」


息切れている海瀬のとなりで楼がにまにまといった顔でその人に尋ねる。


「あぁ、俺が第一に見つけた人たけど...その人、誰?警部補よぉ。」


その人は、嫌そうに楼を見つめる。


「ディテクティブだ。今日の騒動の解明の依頼を貰っている。ああ見られるがいくつもの騒動を解いてきた成果もある。楼にも見つけたときの様子を述べていただけるか。」


奏太に褒められた楼は、ありありとその人を見つめる。隣にいる海瀬は、楼に対する相手の態度にイラついているようにも見られなくもない。


「それなら頼りになりそうだな。若いのにお疲れ。」


立派な隈を持った流は楼と海瀬を互いに見ながら気怠げに口を開いた。


「昨日、お勤めが終わって、華の七日終わりだから飲み屋で夜まで頂いてた。で、気付いたときにはその広場の椅子で寝ててよ?起きたのは夜遅く。もう家庭に戻ろうと思ったらあのデッドを見つけた。すぐに通報、ポリスの人が来たけど…見りゃわかるが、手遅れだったようだ。」

「急いで逃げる人影とか見てないの?ちょっとでも疑いたい人とか!」


海瀬が流に問いかけるが、流は嫌そうな顔だ。


「それが、遺体を見つけて今はもう酔いが無くなったけど...あのときは酔ってたからふらっふらで、辺りも暗かったから何も見れなかった。」

「そう.....。なら海瀬、奏太、すぐに行くよ!!」

「解明に行くって?見つけた人は役に立ちそうにないよ。」

「次は放っといた遺体を見に行くよ。凶器とか、倒れている位置とか、可能な限り明確にメモらなきゃ。」


そういうふうに、楼と海瀬は解明に乗り出すのだった。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−


楼や奏太たちが解明する赤い塔の人への加害を背に世の中を大きな騒動が震わせていた。


文月の終わりくらいの火曜日、谷珠(たにだま)発着場(はっちゃくば)での加害で被害を受けた人はI・一輝(あい・いっき)、ミドル世代の普通の人

八月四日月曜日、流山(ながれやま)での加害で被害を受けた人は赤城蒼(あかぎ あお)、二十歳過ぎの大学生

八月の中日の土曜日、モアイ墓地での加害で被害を受けた人は宇津木・U(うつぎ・ゆー)、二十歳過ぎの大学生


どれも◯町有名スポット加害騒動と変わらない日にちであった。

次はいつやら、✕町、北海道、国に留まらず世界を駆けるある人達の中で流行りを築き上げていた。

世の中の騒動と裏腹に奏太の同僚はみなわたわただった。奏太も他の人に構う暇が無い程建物を駆け回って、ノーマルな人に聞き取りに言ったが、ポリスの努力は空振りで加害は続いた。まったく解明は進まない。スポットにあるはずの手がかりは毛の一つ程もなく、ポリスの中にもよく出来過ぎてると褒めるものすらも現れた。

頼みの綱はいくつも騒動を解いてきた楼で、楼との仲介役である奏太にも圧が掛かっていた。奏太は楼を急かすような真似は嫌なので相手からの頼りを待っているが、そろそろ待ちきれなくなっていた。


(いつもの楼っぽくない)


奏太はメールフォルダを見てそう思った。

八月末日日曜日の早朝、デスクに一通のTELが届いた。聞くとデッドが黄色の道庁の中央にあるようで、奏太は買ったばかりの飲み物を置いたまま車に飛び乗った。

奏太は遺体について聞いた。すると被害を受けた人は古い人、第一に見つけた人は一回目のそれと変わらず百目鬼流のようだ。

そのとき奏太にTELが掛かってきた。相手は楼だった。


「楼か。ニュースでも見たのか?」

「分かりそうなもの、ある?」


奏太は音の出口から楼が弾ませたのを聞く。


「あるかないかは分からない。まずおいで。他の人には言っておく。」


TELを切って奏太は百目鬼流から様子を聞くと決めた。


「では、様子について聞かせていただきます。」


百目鬼はどきどきな面持ちでデスクのを一つを見つめている。


「見つけたのはいつですか?可能な限りで、見つけたときの様子を話せますか?」

「だいたい夜…周りにカラスが多くいたはずだ。人影とかは何も...あぁ、今は血があまり流れていなかった気がする...後はっ......」


速くなる息と拍動を意に解せずに流はどうにか話す。


「落ち着いて。急がなくていいですから。水、飲みますか?」


辛そうな流に手元にあった水を渡す。


「あ...ありがと...」

「落ち着いてから言って頂けますか?」


流は深く息を吸いながら見たモノを思い出す。


「張り切って話す必要はないですから。まずはあなたの体調を第一に。」


奏太の気遣いを他所に流は掌の汗を握りながら口を開く。


「犠牲になった人たち、なにか理由でもあるのか?◯町有名スポット加害騒動ってやつ...俺が学生のときにあったから...」

「時が経って今すが...有名な場での騒動です。遺体の様子からも。否定できないですね。」

「...っまた何も分からずに終わっちまうのか?!...なぁ...どう...にか、ならない...のか...?」


流が狼狽する。


「我々もできるだけの力を注いで今すが、未だ手がかりは...」

「......そう...なのか。」


流は何かを言いたそうだったが何も言わず黙った。奏太は騒動に関わるデータが少ない今を不甲斐なく思っていた。


「すまないが…」


虚を見ていた流の背中側から奏太の同僚がやってきた。


「天田警部補、今いいかい?」

「悪いが、一度席を外す。待っていてくれるか?」

「あ…ああ。」


−−−−−−−−−−−−−−−−−−


いつものバッグを持った楼が浮つきながら騒動スポットに着いた。


「来たな。待っていた。」


騒動スポットを騒動スポットたらすテープを持ち上げた奏太が楼と海瀬に呼びかける。


「今日も第一に見つけた人、いる?」

「いいのか?まず遺体を見なくても。」

「いいから。今日は第一に見つけた人から有力なデータを貰うの!」


ぐぅ、と言いながら楼は言われたミニおうちに入る。


「うわぁっ...また君?」


海瀬が口にする。


「うわぁって、酷くないか?」


そちらにいたのは一度目より酷い隈を持ったあの人だった。


「第一に見つけた人は、百目鬼流...であって今すか?」

「あぁ。くだらないが、ウケるラッキーだよな」


げっそりな顔の流がゆっくりと楼のいる方に対する。


「今日も、酔っ払ってる?」


それとなくトゲついた海瀬の言い方に流が項垂れる。


「期待と違って全くなまともだよ。酔っ払ってた方が良かったかもな。」

「まず、見つけるまで何をやっていたか、可能な限りつげて頂けますか?」


丁寧に楼がたずねる。


「特に役に立たないだろうが、聞いとけよ。」


ポリスに貰った水を一口飲み、流は座り直す。


「今日は、ただ家庭に戻るために歩いてた。」

「どの為ですか?今みたいな夜遅くに?」


矢継ぎ早に畳み掛ける楼に流がリプライする。


「どれだっていいだろ。」

「ねー、話そうよぉ。なぜ遅い時にいるの?」


すぐ飽きたのか、流のためのおやつを食べながら海瀬がいう。


「うっぜ。」


奏太が海瀬に別のおやつをあげてから口を開く。


「協力をお願いする。」

「俺の気持ちで話せるならすぐに話すって。」


海瀬にミリ目をやってから流はまた続ける。


「今日は歩いてワークスペースから戻ってた。いつもチャリで戻ってるけど、明朝、チャリがなくなってて...ガチにでついてないよなぁ。」

「盗まれたのか?」

「そうかもな。君はチャリを見つけるのも受け付けてるか?」


流は抑揚のないボイスで皮肉を帯びた物言いだ。


「それで、加害の様子を見つけたというわけですね?」

「スポットでも見てりゃヒーローだよ。俺が見つけたのは終わったあとだよ。だいたい1:00とか?道庁の裏に倒れてた。二回目となりゃ時も見れるっぽい。」

「傷の様子と彼の言ってるのは一致だ。」


奏太が楼に耳打ちする。


「なぜ道庁裏に?」


メモすら取らずにずっと見つめる楼を軽く睨みながら流が続ける。


「ワークスペースからおうちまでの道が道庁をと通る。悪いかぁ?」

「楼、態度悪いよぉ」

「いや、すまない。」


海瀬に被せるように楼が謝る。


「そういや、日曜日の夜1:00に帰宅とか普通でないにも程がありますよ?」

「世界を見てからディテクティブをするべきだよガキ。企業と契約中のフリーのITアーキテクトには妥当な扱いだよ。」


楼に軽いお気持ちが降りかかる。


「とてもわかるよ。」


奏太が相槌を打つ。


「つまり、歩いてたらまたもや加害騒動の第一に見つけた人になっちゃったの?」


おやつを食べ終わったっぽい海瀬が口を開く。


「ほらディテクティブよ。お望みのデータだったが、役に立ったか?」

「協力ありがとう。」


会ったばかりの丁寧な顔を崩すべくもなく楼が告げる。


「今日はもう戻って寝たい。アドレスでもあげてやるから今日は戻らせてくれ。」


流が一歩戻って、流を見ていた奏太に目を移す。


「手紙が届けば可能な限り、協力をお願いする。」

「あぁ。余裕がありゃな。」


気怠そうな流は他のポリスに導きを受けながらそう告げると外に出て行った。

録画機のデータを見てる途中の楼に海瀬が問いかけていた。


「…、わからない。でも、きっと、ガチクロには、近づくと思う。」

「では、遺体やその周りも見るか?」


規制の外まで流を見送って戻ってきた奏太が告げる。


「もち。そうでなくっちゃね。」


−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「ようやく、太陽が昇るのも遅くなったよね。」


陽を浴びた、ほわほわな海瀬は大きく口を開けている。


「そろそろ、人も多くなるだろう。戻るなら今のうちでないか?」

「ならまぁ一度戻るか、海瀬。」


ちょうど、まずまずのおうちから出てきた奏太は二つのペットボトルをあげた。


「今日の分かったやつ、また送っておいて。」

「ああ。追加で今までの騒動のデータも、今に近いものを送っておいた。」


奏太はギリギリな睡魔を留め、車で楼たちをディテクティブのおうちに送ったあとポリス基地に戻り、ちょっと寝た。奏太は思いのなかで、起きた騒動がすべて終わっているの望み寝た。

奏太の願いは叶わず、次の日になっても騒動は終わらなかった。

それよりも七日経たない内に次の騒動が起きた。スポットは小倉山(おぐらやま)で明朝、二桁めが八台の人がやられた。奏太はするどい目で誰もいないスペースに呟いた。


「◯町の騒動の模倣のクロであればもう加害は終わるはずだ。」


ポリスの努力は空振り、騒動はぽっきりと終わった。

町から離れていたため遺体が見つかったのは鶏が鳴いてからだった。奏太は急いでスポットに行ったが、他のポリスから送られてきたデータと相違ないデータのみだった。黙って帰路に着き、楼に騒動のデータを送った。


奏太は赤城蒼についての聞き取りをやった。まずは赤城蒼の母親からだった。


「中央ポリス基地の警部補、天田奏太です。今起きている✕町有名スポット加害騒動について伺うのは可能ですか。」

「はい、いいですよ…。」

「ありがとう。あぁ、楽な形でいいですよ。辛くなったら止めますので気を負わなくていいですよ。」


赤城蒼の母親はほっと息をついた顔でデスクにつく。


「赤城蒼のいつもの性格や振る舞いについてお聞かせ願いますか。」

「いいやつだったのよ。お友達もいっぱいた。学ぶのが好きでね、大学に入ってから七つくらい経ったかも。」


ぽつりぽつりとゆっくり思いながら母親が話す。


「そうそう、百目鬼って方と特別仲が良かったようね。よく話すって言ってたわ。」


奏太はナチュラルに出たデータをメモする。母親は穏やかな人で奏太の記帳が終わるのを待っている。


「そうですか。お気持ちわかります。それでは…。」


奏太はより深く仲が良い間柄を聞いていくが、大きなデータはなかった。

他にも彼らの大学の同級生から気持ちを聞く。

母親の気持ちとは逆に仲が悪かったようだ。

あの違いはなぜ生まれたのか、深く思う必要があった。

奏太は誰もいないオフィスでディスプレイを目に思い巡らす。


「赤城蒼が母親に告げるデータは彼の自らのそれだ。周りから見たほうがまともに映る。なら正確性は周りから見たほうが合ってるのでは?一度のみならずいくつも言い合いがあったのなら、そう疑う余地はある。」


奏太は聞き取りのデータをまとめると一人呟く。


「やっと決まりだ。」


奏太は騒動の解決を願っている。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−


—ピポポポポ


薄暗いアパートのドアを目にいくつかの人が立っている。


「はい。どちら?」


ミニボイスがインターホンから聞ける。


「警部補の奏太です。気持ちで基地までお供願います。」

「第一に見つけた人だからか?もう話せる内容はないけど?」


インターホン奥のボイスが引いている。


「今発生中の✕町有名スポット加害騒動の疑いが掛かっております。言い訳は基地でお聞かせ願います。」

「は。…嘘だろ。」


空いた口が埋まらない、といった様子でベルからは途切れ途切れの息が耳に届く。奏太は黙って待っている。


「…命令だよな?」

「拒否いただいてもいいですが、その場合容疑を晴らすのは火中の栗を拾うくらいになるかと。」

「〜ッ、なら行くよ!勝手に連れてけ。」




「ほら、早く外に出せよ」


明らかに嫌そうな流がとり聞き取り部屋で奏太をにらみつける。


「まだあなたがクロであるとは決まってない。容疑が掛かっているだけだ。」


流がそれが何を意味するのか問い質すような目で奏太を睨みながら口を開く。


「凶器とかカメラとかででっち上げ終わったから連れてきたに違いない。どうせガチクロがまだやらかそうが、お供のクロってやつで俺は牢の中行き確定だろ?」


結局抑揚のないボイスで流は続ける。


「まず疑うならその理由でもどれでも出せよ。理由が無いまま容疑をかけるはずがない。」


奏太が封筒から紙を取り出す。


「今からあなたになぜ容疑が掛かったか説明する。いくつかの聞き取りで君の正確はよくわかった。結果から聞きたいのではないか?」


好きにやれと言ってる顔で流は椅子に座り直す。


「一つ目の騒動は✕町赤い塔での加害騒動だ。被害を受けた人は大元音。あなたは彼と一度会っているそうだね。一つ目の騒動の丁度二ヶ月oldに✕町停留場内にある飲み物屋で彼があなたに飲み物をかけた。その飲み物やによればすぐに空気が固まりついたそうだ。」


奏太が深く息を吸う。流はデスクの一つを見つめたまま止まっている。


「二つ目の騒動、谷珠であったI・一輝の加害騒動について。そのときあなたは谷珠近くの呑み屋に留まった後日付程度に呑み屋を出た。」


また深く息を吸いながら、奏太は流に目を移す。


「では、三つ目の騒動だ。あの騒動の被害を受けた人は赤城蒼、流山で加害を受けた。どうやら、あなたは彼と既知と聞いた。大学の同級生でよく言い争っている様子を他の生徒が見ていたようだね。」


途中で、やっと流が顔を上げる。


「四つ目の騒動はモアイ墓地での加害騒動だ。被害を受けたひとは宇津木・U。あちらのかたとも既知のようで。すすきので言い争っていた様子がツイッターに広まっていた。広まった内容が合っていれば、騒動の丁度七日oldだ。」


どうにか流の目を見ながら話そうとする奏太だが、どうやっても目が合わない。


「五つ目の騒動、被害があった黄色の道庁での騒動。そのときもあなたが第一に見つけた人だった。騒動のあと、あなたに様子をうかがったときにあなたはワーク戻りだと告げられた。ただ、そのあと企業からは、早めの夜に帰宅の途についたと聞いた。」


奏太は冷静に流に話すが、流はまた項垂れた。


「六回目の騒動は小倉山での加藤勝一(かとう かついち)の加害騒動。あなたはかのかたは既知だろう。聞かせてもらったが、あなたの親の家庭の隣に住み、かつてからよく関わりがあったそうだね。」


奏太はひとつの騒動について言い終わるたびに流を見るが、何も変わりはない。


「それらが百目鬼流、あなたの日程で疑惑がかかっている騒動の概要です。」

「概要以外にも言い訳がある。」


普通に、流が口を開く。


「俺をクロにするためによく俺について聞いてるよ。でも、それ、すべてガチなの?嘘っぽいよ?」


何を話そうが、やはり抑揚のないボイスで流は続ける。


「ツイッターやら、ちょうど変わらない位置にいただとか、それ俺が聞いてるはずないけどよ。つながりやら、俺の企業を出たときやら...俺の生活をすべてよく聞いてるはずないだろ?で、有るやつ無いやついいやがって。」


いらついているのか口調にトゲがある。


「いや、すべてリアルに基づいて今す。我らやディテクティブが見つけたデータです。」


流は落ち着いて深く息を吸う。


「なら、なぜ俺が赤城蒼を送る会に行ったかわかるのか?」


奏太はちょっとぶりに流と目があった。驚きの発表と鋭い目の流に睨まれ、奏太が一歩引く。


—トトトト


「楼と海瀬です。今から、聞き取りに加わります。」


一回目に会ったときとはまた違うピリピリが聞き取り部屋をみたす。


「よぉ。頼りになるとは言ったが、今まで持って来たのは君かい?」


海瀬がすぐに楼との間にでる。


「ただ今より聞き取りをやります。より良い言い訳をお聞かせ願います。」


楼は海瀬の隣、流に対する椅子に座った。


「まずは、一つ目の騒動。騒動の後、一回目に会ったのもその時です。そのとき、あなたは酔っ払っていたため、なにも聞いてないと告げています。それは記憶がないのですか?」

「酔っ払いはまともでないのか?そもそも俺がやったなら通報よりも逃げるだろ?」


流はすべてに興味を引かれないかのように、ただ楼の方を見ている。


「ただ、ウケますが、あなたと被害を受けた人の大元音は騒動より、かつ飲み物屋で食べ物を受け取っています。また、騒動の二ヶ月oldにも変わらない飲み物屋で食べ物を摂られており、それは告げられていたそうですね。」


流は二ヶ月oldの遠い記憶を持ってきたのか、楼と目を合わせる。


「溢れた飲み物を拭くために、俺が席にあった布を投げてやったババアか?」

「はい。ただ、飲み物屋によると、 あなたは大元音を睨みつけていたそうですね。」

「俺の言い訳と他の言い訳が合わないってか?」


抑揚のないボイスが楼の言い訳をぶった切る。


「まあ、彼の人から見たときの気持ちは違いますから。」

「次は二つ目の騒動ですね。被害を受けた人はI・一輝。騒動スポットは谷珠の発着場です。文月の末日ですね。気持ちではありますが、あの日の日程は記憶がある限り告げていただけないですか?」

「末日⋯火曜日か?」


流は日にち表をみながら曜日を見て、言い訳を続ける。


「その日は家庭でタスクの日だったな。いわゆるテレワークだ。その後、早めの夜から友達たちと呑みに行った。イースト区にある呑み屋だったはずだ。いつは記憶がないが、遅くまで遊びに行ったな。」


黙って言い訳を聞いていた楼は流が言い終わると口を開いた。


「文月の中日はあなたは有給をもらっています。また、呑み屋で一人、塊から別れて、発着場のベクトルに歩いて行ったのが見られています。」


流がゆっくり楼と目を合わせる。


「ただ近くにいただけでクロなのか?そもそもあの呑み屋も谷珠発着場内にあるわけでも、谷珠発着場の隣でもない。俺が疑われるなら、その日イースト区にいた人、すべて疑わなきゃならないだろ。あと、俺は一歳の間一度も有給は使ってない。ガチで企業に聞いたのか?」

「容疑を決めつけているわけではないです。もらったデータと違っていただけですので、聞きたかったのです。」

「ほら、次は三つ目の蒼の騒動か?」


どうでもよくなったのか、バツが悪いのか流が言うのを急かす。


「では。言われたとおり、被害を受けた人は赤城蒼、八月四日の流山での騒動です。赤城とあなたはそれまでに会っていたと聞いております。お二人の間柄を告げていただけないですか?」

「ああ。おおまかに説明すると、俺らは友達だ。大学の学科が変わらなくてな。一つ目のときから取ってたゼミもほぼ変わらなかった。グループワークで会ってから、よく言ったり、カラオケ行ったり、かなり仲が良かったと思う。文月の末日の飲み会にも来てたよ。あの飲み会は俺らの友達のおたおめだった。そのあとすぐ終わるとは思ってなかったよ。あぁ、蒼のお別れ会はもう終わってる。あいつ、終わりの学歴大卒でもないぜ。ダブりすぎだ。」


ちょっとずつボイスがミニになっていく。それまで全く抑揚のなかったボイスは引いている。


「赤城蒼の母から様子を聞いたのですが、赤城蒼が親のおうちに戻るたびにあなたについて告げられていたそうですね。ただ、お二人の同級生の方からは、言い合いが多く、折り目があっただけで睨み合っていたり、と仲が良くなかったそうですね。」

「同級生の方、って誰だ?...俺はそいつの当たりがつかない。よくそいつに俺らについて聞いたな。合ってるデータが手に入るはずないよ。」


誰に聞いたのか聞きたそうに、流はデータを見る楼を見る。


「では次です。四つ目の騒動は八月中日にモアイ墓地で宇津木・Uが被害を受けたものです。その方とも既知のようですね。ツイッターでググればすぐに出てきます。」


「俺はそいつを見てすらないよ。今、警部補のあいつ、天田だっけ?がすすきのでいい争ってた相手だって言ってたが、俺は一度もすすきので言い争ってない。そのツイッターの動画は人違いでないのか?」


背がたかく、灰色の髪の人は流くらいだろう。用意あったツイッターの動画を海瀬が流にみせる。


「あぁ、あいつ。あの酔っ払いか。その日は、あいつが俺にぶつかってきた。俺が道を譲ってやったのに。俺は何も言ってないのに、ずっとぐちゃぐちゃわめいてたよ。」


いつもどおりの抑揚のないボイスで流が悪態をつく。


「ただ、あいつはそれ以外で会ったときはない。会いたくもないな。俺は、道でついてきた酔っ払いについて何も聞いてないよ。」


それ以外はガチで何もないのか流は黙る。


「ではつぎの五つ目の騒動。それもあなたが第一に見つけた人だったものです。そのとき、あなたは企業でタスク中だったと告げられています。ですが企業に見るとタスクカードは夜の普通の時に切られていたそうです。騒動そのときの聞き取りでは明朝に帰宅するほど遅くまで休みに企業に出かけていたと告げられてますよね。なぜ嘘を?」


流の目蓋辺りに深い溝ができる。


「タスクカードが切られてる?何かの間違いだろ?俺はずっと働いてたぞ?」


抑揚がないのか、驚きが隠せていないのか普通なボイスで流は続ける。


「他の日のデータはないのか?俺のタスクを明らかにする物はないのか?」


勢いにちょっと驚きながらも楼はデータを見る。


「他の日のデータについて、今は告げられないですが、データは貰っているはずです。」


椅子に座っている流は次の騒動について口を開く。


「小倉山で加藤だっけか、あいつがやられたのが六回目の騒動か?」

「はい。九月五日にあった小倉山での加害騒動で、被害を受けた人は加藤勝一です。あなたの親のおうちのお隣だそうですね。その騒動については動画がすでにあります。」

「親のおうちの隣に住み中?ただ、家族がかつておうちの位置移すって言ってたからなぁ。俺は今の親のおうちのお隣づきあいはないから、その加藤とやらも聞いてない。」


見てすらないと説明する流に海瀬がノート機械をおく。


「動画は小倉山のふもと、加害スポットにつながる唯一の道にあったプロテクトカメラの動画です。」


楼が説明する隣で海瀬が動画を流す。

モニターには、顔は見られないが、流と変わらない髪型の背丈の高いmaleがナイフを持って歩いている姿が映る。


「いや、違う。あれは俺でない。誰だよ。俺に罪をなすりつけようって気持ちだろ。くだらない物までつくりやがって。」


動画はないとおもっていたのか、流はないはずの動画に驚いているようだ。


「百目鬼流、あなたですね?」


楼はめをキラリと光らせて身を乗り出す。


—トトトトトト

急に聞き取り部屋の扉が叩かれる。入ってきたポリスに「天田警部補。ちょっと」と、奏太が呼ばれた。


「あぁ。二人とも済まない。ちょっと行ってくる。」

「オッケー。あとはうちらにまかせて。」


扉を出た位置には仲が良い同僚が待っていた。急いだ面持ちで息切れ真っ只中だ。


「百目鬼の聞き取り中すまない。」

「気にするな。それよりなにかあったのか?」

「あぁ、たった今入ってきたニュースだ。大和おうち球技場でポリスがやられた。今逮捕終わったクロい奴は君のやつのクロだと言っている」


奏太はその言ったものにあっけにとられた顔になった。


「は?それは百目鬼に罪はないって意味か?」

「そうだ。だからちょっと彼を放ってやれ」


同僚はその様子をもう見ていたように思いきり奏太の背中を叩く。奏太は急いで聞き取り部屋の扉をあけた。


—ドカッ

奏太が聞き取り部屋に急ぎ戻ってきた。相当急いで来たので、息が切れている。顔から焦っている様子がみられた。


「七つ目の騒動だ。大和(やまと)おうち球技場(きゅうぎば)でポリスが命を奪われた。クロは逮捕、今聞き取り部屋につれてきている。そいつは、その騒動の容疑を認めているそうだ。つまり、百目鬼流に罪はない。」


バツが悪そうにいう奏太の言った内容は、二人の予想外を行くものだった。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「「は?」」

「は?ちょっと待って。その人がクロなの?」


海瀬が頭に大量のはてなマークを浮かべてきく。


「だから言ってるだろ。俺はクロでないって。ただの人だよ。」

「どれだけツキ悪いのよ、君。」

「とにかく。百目鬼流、もう戻っていただいてかまわない。他の者におうちまでおくらせよう。疑いをかけて済まなかった。騒動への協力ありがとう。」


奏太が二人の会話をとめるようにいう。


「おうよ。まぁ、クロが捕まったならそれに勝てるものはないよ。」


そう言い、ポリスに連れられて流は聞き取り部屋を出た。


「で、奏太。いったいクロは誰だったわけ?」


海瀬が奏太に問いかける。楼は、楼の推理が外れたのがよほど驚きだったのか、その場に立っている。


「捕まった人の名は深月(みづき)だ。」


いきなり出てきた名に、二人は固まる。今まで気持ちが浮わついていた様子だった楼も興味を持ってきた。

「もっと聞かせて。」

「今日大和おうち球技場の遊び真っ只中に基地のいちポリスが加わっていた。そのうちの一人、倉本 暮羽(くらもと くれは)。解明一課の警部補だ。深月はそっと倉本警部補を鋭いナイフでやったあと、近くのポリスが逮捕できたそうだ。」

「動機は?」

「まだだ。もうすぐ部屋にやってくる。聞き取りは部屋に来てからやるそうだ。立ち会ってくれて構わない。」

「わかった。ありがとう。」


気が戻ってきたとは言ってもいつもとは違う楼をみて海瀬はちょっと嫌そうであった。


「もう、楼が憂鬱になっちゃったよ〜!咎人早く出ておいでー!!」


−−−−−−−−−−−−−−−−−−


時計の針がいくつか回ったとき、聞き取り部屋では深月を打ちのめそうとする海瀬とそれを宥める楼が深月を見つめている。


「では、全て告げて貰おうか。」


窓も無いただの部屋の中、二人がデスクを間に置いて見つめ合う。

深月は、不敵な笑いを浮かべながら告げた。


「僕の大切な人を守る為にやった。僕の大切な人を傷つける奴は生きてちゃ駄目だ。だからあいつらを殺った。全ては大切な人の為だ。」


深月はアイドルを見るかの様な目だ。奏太が


「大切な人?」


と問うと、告げる。


「あぁ。被害を受けた人、六回全てが大切な人を傷つけた。だから殺った。普通に明快。とても良い理由だろ?」


奏太は『納得できない』、そう顔で語っている。顔を輝かせて語る深月を見て、楼と海瀬も黙る。


「あの位置だった理由は?なぜ、某町の騒動を真似た?」

「かつてと変わらない騒動を作れば、ポリスの疑いはかつての奴らにかかると思った。それに、その騒動の注目度も上がる。ありがたい舞台だ。」

「それに、六?被害を受けた人は全てで七つの筈だが?」

「母は君らポリスのせいでいなくなった。クロがポリスのトップの家族だからって、君らはあの騒動を匿いやがった。悪は罰せられるべきだ。だから開かれた場で命を絶ってやった。良い舞台だっただろう?」


深月はボイス高らかに、とても昂って喚く。その様子をみていた楼はとても嫌そうだった。


「君はソロのクロだと言ったな。だが、ある第一に見つけた人のおうちからに騒動に使われたと見られる凶器が見つかった。」

「あぁ、百目鬼流な。俺があいつの家庭に投げ入れたからな。あいつは可哀想だよなぁ。いっぱい第一に見つけた人になっちまった。俺に凶器と動画の偽物も掴ませられた。あぁ。そうそう、俺は一回あいつの見た目で山に行った。あいつが疑われてるって聞いて。俺に解明の目が掛からないようにな。まぁ、言っちゃうとただ時を稼いだだけだよ。七つ目の為にな。」


深月から笑いが無くなる様子は無かった。楼は相変わらず嫌そうに顔を歪めている。


「楼。もう戻ろう。」


もうそれより見てはいけない。そう思った海瀬は楼を連れて聞き取り部屋を出て行った。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−


奏太は深月の聞き取りを終わらせた。ガチで言うと終わらせてないが、深月は何を問うても変わらない内容のみ言い、それよりは埒が明かないと見られて途切れ途中だった。奏太は落ち着く一服の真っ只中だった。急に楼が部屋に飛び入って来たのだ。


「奏太、車!早く車遣って!」

「な…」

「早く!」

「おう!」


楼は基地に着くなり奏太に言った。他のポリスが驚く中、奏太が車のキーを取って急ぐ。


「で、目的地は?」


−−−−−−−−−−−−−−−−−−


夕暮れ時。海に人気は無く、ただ夕日が一人だけを照らす。楼は浜辺に立ち、ただ海を見つめる人影に駆け寄る。

奏太は車のなかで待っていて、二人の会話は届かない。楼からは合図があったら出てきてと頼まれている。


「あの、あなたはどう思う?✕町有名スポット加害騒動。クロは深月。彼はラストの騒動においてすぐに捕まった。」


楼は人影に告げる。問うても、ただ海を見つめて一ミリたりとも変わらない相手を気にするわけなく続ける。


「深月は自らがクロだと認めている。だけどね、何かがずっと引っかかってた。」

「一回目の騒動だけ、深月は関わっていないのではって。」


影は、ゆっくりと海に近づいて行く。


「でもね、わかった。あなただよね?大元音の騒動は深月でない、別の人のだ。あなたは、深月に罪を擦り付けた。深月を裏で操っていたのは、あなただよね?」


人影はちょっと笑いながら楼を見つめた。太陽が落ちかけ、橙色の空が広がっている。夕日に当たった人影は、とても輝いていた。

波音だけが鳴る。楼は顔を伝う水滴に目を遣らず、ただ相手を見つめる。いつもなら軽く言っちゃう物が、なぜか喉を埋める。


「海瀬」


波音に捕まりそうなボイスがたった一人、楼にとって唯一の相棒に放たれる。


「違うよって、何言ってるのって、言ってよ...。海瀬。」

「…」

「言ってよ!」


楼の振る舞いに、海瀬は顔を歪める。涙する楼に海瀬は笑いながら言った。


「あぁ〜あ。やっぱり楼にはバレちゃうか。そうだよ、すべて楼の言うとおり。悪いね、楼。」


海瀬は、泣いている楼の隣を通りすぎて道路に止まっている車を目がけて歩き出す。


「海瀬。基地まで連れていきます。」


車で待っていた奏太が海瀬に言い放つ。その言い方にいつもの平静は無かった。


「いいよ。」


海瀬は奏太に笑いながら言った。

浜辺にあるたった一つの影が、輝いた涙が落ちながら、その様子を見ていた。波音だけがずっと響いている。


「ばいばい、楼。」


海瀬がそう呟いた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−


✕町有名スポット加害騒動の咎人は深月と海瀬だった……変わりまくった騒動のガチクロはそれより変わらなかった。ポリスの力を持ってる人たちもその結果で納得、動機の解明に力を注いでいた。

兎にも角にも、海瀬はポリスが頼っていた楼の片腕なのだ。理由によってはポリスに疑いが湧きかねない為、特に仲が良かった奏太は騒動中よりも気持ち的にわたわたな日々になっていた。


「天田警部補、海瀬は何か言ったかい?」

「いいや、まったく。海瀬はあれほど口が固かったのか、と…。」


それは奏太の大きな悔やみだった。


「僕は海瀬を全く見ていなかった。もっと気にかけてあげていれば、何か変わったのかもと思います。仮定ですがね。」

「それほど悔やみ過ぎなくていいのだよ。次に活かせばいい。それよりも今からを見た方が良いのではないかな?」


その会話でリアルに戻った奏太は、海瀬と深月からの頼りをどうすればゲットできるかを思い巡らすのだった。



そのまた後の日。


―トトトト

ドアが叩かれた。

奏太はその日、ディテクティブのおうちに来ていた。片方はワーク、もう片方は気持ちのためにだった。片方の手にはおやつを抱いていた。


「やっぱり」

奏太の予想の通り、楼は海瀬の騒動から立ち直れていない。

泣き崩れている楼を見て奏太が言う。


「カカオモナカアイス。冷凍部屋に入れておくから、良かったら食べてくれ。」

「ありがと。ね、海瀬はどう言ってた?もう会いたくないのかな?」


楼がうるうるな瞳で奏太を見つめる。奏太はミリだけ顔を歪めたが、すぐにいつもの顔を見せた。


「なわけないだろう。今は体調が優れないそうだ。」

「そっかぁ。」


今の楼にリアルを言ったら、きっと猛省する。

奏太は気持ちだけ海瀬に謝りながら、楼の背中を撫でる。


「きっと、ディテクティブのせいだ。そのせいで、海瀬は...。」

「君のせいだと思わないほうがいい。きっと海瀬はそれを願ってない。」



あの日を思い出すような夕暮れ時。一人のディテクティブが一つの惑星を眺めながら、今はもう届かないその惑星に手を伸ばすのだった。

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