ハイヒールとシュレッダー
出社してきた都留野さんの、昨日よりさらに高くなったヒールの音は、ツカっツカっと辺りに響き渡っていた。スラリとした脚にラメ入りのストッキングが眩しい。都留野さんの変わり様に周囲はドギマギしていた。
大迫さんの下でいつも一緒に仕事をしていた角田さんは、いつも面白い事を言って場を盛り上げるのがうまいのだが、この時も、
「都留野さん、どうしちゃったのかな。感じ変わったよね。香水つけてない?なんだかいい匂いがするよね。」と囁いていた。角田さんは、都留野さんが、不要になった会議資料をシュレッダーにかけている時、さりげなく後ろ姿をチェックしたのだった。
都留野さんが書類をシュレッダーにかけている姿は、過去を断ち切ろうという思いを映し出し、彼氏との思い出が粉砕されていくようで見ていてたまらない気持ちになった。
いつものランチタイム、都留野さんがテーブルにつくと、確かに微かにいい香りが漂う。気が付くと、座った都留野さんの制服のベストの胸元がいつもより膨らんで見えた。補正ブラを付けているのだろうか。
三芳さんが、「都留野さん、なんだか一段と綺麗になってきたわね。見惚れちゃうわ。」とお世辞を言った。
三芳さんは今、それどころではないであろうに。
「三芳さん、私、彼氏とは別れたんですよ。」
「まぁ、都留野さん、そうなの?なんでまた?何かあったの?」
「いえ、特に何もないですが、結婚を急いで後悔したくないと思っただけですよ。」
私の不安がじわじわと現実味を帯びてきていた。だが、私の口からつい出た一言はもう引っ込みがつかない。
私、どうしたら、、背中に冷や汗がつたう。




