つい口から出た一言が招く事態の重さ
三芳さんの離婚の話で静まり返ったその場の空気を、突然、私の携帯の振動音が打ち破った。元彼の雅彦からだ。元彼のつもりでいたが、向こうはどうなのか測りかねていた。久々の元彼からの電話だったが、今の三芳さんの前で出るわけにはいかない。とりあえず放っておいた。
食事を終えて、三芳さんはぐったりした様子でお化粧室へ。しばらく一人にしてあげたかった私たちは、廊下で待っていた。
都留野さんが私に、「さっきの電話、彼氏から?」と聞いてきた。「元、彼氏ね。」と一応答える。「かけ直さなくていいの?」「そうね。後でかけてみる。」
そこで私も都留野さんに聞いてみた。「都留野さんの彼氏は元気?」「うん。そうそう、この間、実家に帰った時、一緒に帰ってね、結納を交わすまではしたんだけど。」「そうなの?結納を交わしたの?すごい!おめでとう!もうゴールインなのね。都留野さん、若くて綺麗でなんだかもったいないみたい。」都留野さんは、以前、同棲している彼氏が物足りないような事を言っていた。都留野さんの好きなスキーに付き合い始めた頃はよく一緒に行っていたけれど、最近はどこにも連れて行ってもらえてないと。
私のおめでとうに、都留野さんは、「ありがとう。だけどね、彼氏、ずっとだんまりでさ、ろくに挨拶もできてなくて。」「緊張してたんじゃない?」「いくら緊張してたってあれじゃあね。」
その時、何故か私はまたとんでもない失言をした。思い付いた事を時と場合をまるで考えず、すぐに口にしてしまう私の悪い癖だ。
「都留野さんは、容姿端麗で性格も良くて会話も上手で文句の付けようがないけれど、唯一、色気がないわよねー。色気があったら、峰不二子みたいな感じの魅力的な悪女もハマりそうだよね。」
後から思い返してみると、あの時どうしてあんな発言ができたのか。この時、都留野さんは、「ちょっと、やめてよ。そんなこと、普通、言う?」と、さすがに気分を害したようだった。
この時を境に、都留野さんはその後、どんどん変貌していくことになるのだった。




