あとがき(「私」の独白)
その後、都留野さんは会社を辞めました。どこでどうしているかは誰も知りません。
ただ、私は、個人的に、都留野さんとしばらく連絡を取り続け、その後、レンタカー屋さんや、不動産屋さん、エレベーターガール、受付、等々、様々な職歴、経験を積んでいるようでした。一度、会って、お茶をした事があり、都留野さんは、通りを歩く時、以前に見ていた洋服店やアクセサリーの店やカフェではなく、立ち並ぶ会社の看板を見ては、「こんな所にこんな会社があるんだー」と、興味深そうにしていました。
都留野さんは、私が理想としていた道を、今度こそ、着々と歩み始めたのでした。
私は今も、あのシュレッダーの前に立つたびに、自分が都留野さんにした事が、果たしてよかったのか、よくなかったのかと、私自身は、これでよかったのかと、都留野さんの活動的な今を思い、ちょっぴり羨ましくもあり、苦労が多いのだろうと思えば、やっぱり自分のした事が恐ろしくて震えがきます。
その後、しばらくして、都留野さんとはまったく連絡が取れなくなりました。
そういえば都留野さんは、最後に会った時、言っていました。「私は、結局、行く行くは郷里に帰って家族の面倒を見ることになるんじゃないかな。」
その時に、私は思わず大きく溜め息を付いてしまった事を思い出しました。
三芳さんは、その後、益々、仕事熱心になり、仕事に傾倒する一方、社内で明るくて好青年で評判の、歳下の彼とお付き合いしているとかいう噂を耳にしました。
これで、三芳さんも、ドロ沼から救い出されたのならよかったと、ほっと胸を撫で下ろします。
私たちの日常は、何事もなかったかのように続いていきます。裁断された過去の上に、偽りの今日を積み上げながら。




