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幸せを横取りする呪文

オフィスはもうだいぶ暗くなっていた。三芳さんが残業していると、都留野さんがシュレッダーの前に立っている。

三芳さんは、自分の離婚調停の書類(弁護士からのメール)をスマホで見ながら、画面を消して立ち上がる。

三芳さんは、笑顔で「都留野さん、お疲れ様」と言うが、その目は笑っていない。

シュレッダーが、「ガガガ」という音をたてる。三芳さんの苛立ちを代弁するような音に聞こえる。

私はその様子を影から見てしまい、二人の間に流れる「異常な連帯感」に戦慄する。

三芳さんは、都留野さんを「自分と同じ、過去を切り捨てた女」の側に引きずり込みたいのかもしれない。


三芳さんは離婚調停で、夫の執着や法的なしがらみに絡め取られ、身動きが取れません。2ヶ月で終わったはずの結婚生活が、亡霊のように自分を縛り付けている。

そんな時、まだ「やり直せる年齢」で、かつ「優しい彼氏」という退路がある都留野さんを見て、**「そんな生ぬるい幸せを握りしめているから、私みたいに手遅れになるのよ」**という呪いのような感情が芽生えた。


「都留野さん、優しさなんて、時として一番の残酷なのよ。彼が優しいから別れられない? それ、あなたの人生を2ヶ月ずつ、確実に削り取っているのと同じよ。私を見て。一度捕まったら、逃げるのにどれだけの血が流れるか。……綺麗なうちに、すべてを捨てて飛び移りなさい。7階の彼のような、本当に価値のある場所にね。」

「思い出なんて、持っているだけ足かせになるわ。シュレッダーにかける時みたいに、一瞬でバラバラにしてしまえば、あとはゴミとして捨てるだけ。案外、すっきりするものよ?」

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