恋より仕事を選べるか
夕暮れ時、退社後の公園はあちらこちらに恋人たちが散らばっていた。楽しそうにはしゃぐカップルもいれば、深刻な眼差しで見つめ合う二人、私たちは後者だった。社内恋愛を始めて間もなく恋人の雅彦は何故か社内で他の女子社員と親密そうな振る舞いをするようになった。私は仕事どころではなくヤキモキして気が気ではなかった。通勤が辛くなり休みがちになっていった。今日こそは雅彦にそのやりきれない思いをぶちまけようと思っていた。「お願いだから、職場の人に私たちが付き合っていることを言って。」と雅彦に執拗に迫った。雅彦は終始無言でその場をはぐらかした。結局、翌日からも彼の女子社員たちとのイチャイチャは続いた。若い私は嫉妬に狂っていて抑制がきかなかった。私が彼と付き合っているのにという変なプライドが全てに優先していた。
「この人には私の気持ちはわかってもらえないんだ。」私は一大決心をした。彼とは別れよう。仕事を変えて再出発しよう。
私は、東京と大阪に本社をもつ大手商社のシステム系の子会社へ転職した。パソコン関係の仕事を身に付けたかった。商社ビル内の全ての端末の設置から保守までを請け負っている会社だった。そこには実に様々な人がいた。端末のトラブル対応のSE、いつもケーブルを肩にかけ端末の設置や撤去に駆け回っているSE,大阪出身でのんびりムードの親しみやすい上司、お局様的頼れる優しい先輩、同期の自分と出身地が近い仲良しの女性。商社の社員との交流もあった。広いフロアに色々な人がいて飽きなかった。




