愚痴
わたしはかわいそうではないらしい。
わたしの家族は、わたしときょうだいと親とペットだ。わたしの親はきょうだいに甘い。幼少期からそうだ。きょうだいが気に入らないからとわたしに対して殴る蹴るを繰り返し、わたしが、きょうだいを叱って、もうしないように怒ってと訴えても、親はただただわたしに「そっかー」と言うだけだった。
時々お手伝いのお礼としてわたしにお菓子を買ってくれることになった時には必ず言った。「きょうだいの分もね」。わたしには報酬として買い与えるお菓子なのに、きょうだいは何もせずに買ってもらった。それはずるいと、何度も抗議した。親は何を言っているのかという顔で全く相手にしてくれず、以後何度もそれをやられた。
「きょうだいにもないとかわいそうでしょ?」
親にとっては同時に与えることが平等に扱うことだった。わたしには平等には思えなかった。それでも親の手伝いを拒否すればわたしが怒られた。きょうだいは背中を向けて漫画を読んでいた。二人とも成人してからも長らく続き、ほんの2、3年前に「あ!やっとわかったぁ」と言った。きょうだいはすっかり無償で得られることに慣れきっている。何でもかんでも自分の分も要求することはないが、自分に係ること以外、家事も地域の行事も一切手を付けることなく過ごしている。
金銭面でわたしは最も不公平に扱われている。二人とも学校を卒業して別の会社に就職した。わたしは家族で一番収入が良いらしい。親はそれの事実を持ってわたしに一番金銭面での負担を押しつけてきた。「きょうだいは収入低くてかわいそうだから、わたしに多く払ってもらっていい?」「かわいそうだからあんまりお金負担させないでやって」「わたしが一番お金あるから」親はそう言うのだ。わたしが一番多く家賃を払い、生活費も等分以上の割合を払っている。家に係る税金もわたしが指摘するまで、親はわたしに多く払わせようとしていた。例えば金額が五万円なら、五万円という金額を公表せずに「わたしからは二万円もらっていい?」としか言わず、親ときょうだいは一万五千円ずつ払う、といったものだ。実際、最初の数回それで払わされていた。通知が世帯主である親に届き、親もそれを我々に見せなかったため、金額も知らなかった。社会人としての常識を身につけようとしなかったわたしも悪い。金額もいくらなのか聞かれたから話したといった体で、そこでもきょうだいの負担金額が小さいのは「かわいそうだから」だった。きょうだいはスマートフォンでSNSを延々と眺めていた。さすがに今は公表の下に等分になった。少なく払っていた分はすでに過去のことのため触れる必要がないらしく、きょうだいは浮いた分はそのまま私用に費やした。
きょうだいはどうやら他人の会話に横槍を入れることが好きらしい。わたしが親と言い合いをしている時、ほぼ必ず口を出す。それもさも自身が物事を冷静に見ているかのように「わざとじゃないんだからしょうがないでしょ」「わたしが△△すれば済む話でしょ」と大概親の肩を持つ。親がそれなりに大きなミスをしても常にわたしが悪者で、それを指摘する冷静な自分は絶対に正しいといった態度だ。なぜお前が口を挟むのかと文句を言えば「はぁ?うっざ」「お前に関係ないじゃん」「何勝手にキレてんの?笑」「そっちだってそうじゃん」のどれかが返って来る。普段からきょうだいと話すつもりはないので、四択目については全く根拠がない。こういった時の会話はまともに成立しない。こちらが会話を放棄すれば、きょうだいはそれで相手を言い伏せられたと認識するのでさらに図に乗るのだ。他人に尻を向け、スマートフォンから顔を上げることもなく、延々とSNSとソーシャルゲームに時間を費やし、ペットの世話も全くしない。一番正しい思考を持つのは自分。きょうだいはそういう人間だ。
きょうだいの性格は個性!ちょっとだらしなくても個性だから仕方ない!うん、そういうことにしよっ!ある時親はそう言ってこれからもわたしにだけ負担を押しつけることを宣言した。今まで好き勝手していたのを放置していただけでしょ?わたしの意見は無視された。
親ときょうだいは時折旅行に行く。おおよそきょうだいの趣味についていく形だが、回数はわたしの比にならない程には多い。それくらい遊びに行く金があるならもっと家賃とか払ってほしいと言った。なあなあに流されて終わった。今年に入っての話だがおそらく親はもう話をしたことすら忘れているだろう。
鬱憤が溜まって、これまでの文句をほぼ怒鳴り散らす形で喚いてから、わたしはかわいそうではないのだなと聞いたとき、親は肯定も否定もしなかった。言葉では表さないという形でわたしの問いを肯定したのだと感じた。卒業したての頃のわたしの給料が今のきょうだいの給料をいまだに上回っていると思っているのかと聞いたら何も言わなかった。今月もわたしが一番多く家賃を支払った。
わたしは都合の良いATMなのだろう。ATM以上に便利なものかもしれない。上っ面だけで頼めば力仕事もするし、地域のうんざりするような行事にもついてくる。時折長々と親の性格に文句を言ってくることを無視するだけで労力と金銭のおおよそのことが解決するのだから。
家族を全部見捨てることはいつでもできる。預金を全額下ろして姿をくらまし、ローンの支払いを滞らせることもできる。ペットがいなければさっさと家を出ていたかもしれない。しかし正直なところ、それらがなくても、問題提起さえしなければ比較的穏やかなこの状況に慣れきってしまった。転職してどこか知らない街に引越すほどスキルや伝手があるわけでもない。わたしもろくでもない人間の一人だ。このままダラダラと時間が過ぎるのだろう。




