俺の全てを……出し切るんだあああっ!!
ハザンが吠える。
「こんな光の雨、効かねえ!!」
リオーナの魔法を浴びながらも、奴はものともせず突き進んでくる。
ゴリ押しのドリブル――まるで巨獣が突進してくるようだ。
「……なら、ここで止める!」
俺は地面に手を叩きつけ、呪文を放つ。
――《影縫い》!!
影がうねり、ハザンの足元を絡め取る。重い鎖のように動きを縫いつけた。
「今だ!」
俺は一気に距離を詰める。
《バックスタッフ》――背後へと瞬間移動。
振り返ったときには、すでに奴の背中が俺の眼前にあった。
「終わりだッ!」
喉元めがけて剣を突き立てる――はずだった。
「……甘い」
ハザンの口が、笑った。
次の瞬間、俺の剣は空を切り、逆に閃光が走った。
――ザシュッ!!
視界が、揺れた。
何が起きたか理解する前に、自分の身体が二つに割れる感覚。
……俺が……真っ二つに……?
「翔真ァアア!!」
ザグの怒号が響く。
渾身の拳を振り抜き、ハザンに叩きつける。
だが――。
「無駄だッ!」
ハザンの盾が受け止め、衝撃とともにザグが吹き飛ばされていった。
……視界が遠のく。
やばい……マジで……ここで終わる……。
――ごくっ。
口の中に無理やり流し込まれた苦い液体が喉を焼く。
「……っはぁ……!」
視界が、一気に明るくなる。
俺は……生きてる?
胸を押さえると、確かに脈がある。身体も繋がってる。
どうやら《復活の薬》で蘇ったらしい。
だが、スコアボードに目をやった瞬間、胸の奥に嫌なものが込み上げた。
……1点、取られてる。
俺が真っ二つにされて、意識が飛んでた間に……。
「クソッ……!」
悔しさで拳を握る。
「翔真!」
リオーナが振り返り、俺を鋭く睨む。
「気持ち切り替えて! 取り返すわよ!」
「……切り替えろって言われてもな」
苦笑いが漏れる。
ついさっきまで俺、真っ二つにされてたんだぞ? 気持ちの整理なんてできるか。
でも……。
「追いつかないけど――取り返すしかない!」
俺は叫び、地を蹴った。
力が全身から溢れ出すのを感じる。
「――《開眼!! レベル2》ッ!」
視界が赤く染まった。
俺の両目が灼けるように赤光を放つ。
世界がスローモーションに見える。
……でも、まだ足りない。
これじゃ、あいつらを止められない。
「なら――もっとだ!」
「《開眼!! レベル3》ッ!」
全身に赤い光が奔り、肉体を引き裂くような痛みが襲う。
筋肉が軋み、骨が悲鳴を上げる。
「ぐっ……あああああああっ!!」
それでも、構わない。
「痛みなんて……関係ねぇ! これで絶対取り返す!」
俺の体は赤いオーラに包まれ、灼熱の獣みたいに燃え上がっていた。
赤光が俺を包み込み、意識の奥で何かが弾けた。
「うおおおおおっ!!」
俺は矢のようにフィールドを駆け抜ける。
ピスケが忍者のように身構えるが、気づいた時にはもう蹴散らしていた。
ピラードが剣を振り上げる――だが遅い! 赤光の残像だけを切り裂き、俺はもうその先にいる。
「邪魔だァッ!」
二人まとめて吹き飛ばすと、歓声がどよめいた。
だが――。
「ラードさん、壁を作ってください」
冷静な声が響く。
振り返ればレターティオ。顔色一つ変えず、淡々と指示を飛ばしていた。
「《ストーンウォール》!」
ラードが呪文を詠唱すると、俺の正面に分厚い岩の壁がせり上がる。
「ふざけんな、止まるかよ!」
右側に回り込もうとした瞬間、さらにレターティオが詠唱。
「……そこにも壁を」
岩がせり上がり、俺の進路を狭める。
「チッ……!」
仕方ねぇ、空いた側を抜けるしかない!
俺は迷わず壁のない方へ飛び出す。
だが、そこには――。
「待っていたぞ」
鋼の盾を構えたハザンが、仁王立ちしていた。
逃げ場はゼロ。避けられない。
「なら……正面突破だああああっ!!」
全力で突っ込む。
赤光のオーラを纏った俺と、鉄壁の盾を構えるハザン。
その瞬間――。
ガァァァンッ!!!
衝撃音がフィールド全体を揺らす。
全力の突撃は……弾かれた。
俺の身体が逆に吹き飛ばされ、地面を転がる。
「ぐっ……くそっ! 正面からじゃ崩せねぇか……!」
悔しさと痛みに顔を歪めながら、俺は歯を食いしばった。
「……負けられねぇ!」
全身の痛みなんざ関係ない。俺はまだ立ってる。立ってる限り、やれる。
「俺の全てを……出し切るんだあああっ!!」
地面に転がったボールへ一直線。
転んでいる場合じゃない――足を伸ばし、スティールで引き寄せる。
その瞬間、俺は一気に集中した。
「【ステルス】!」
影が揺らぎ、俺の姿が淡く掻き消える。
忍者としての真の力――消えた気配をまとい、ゴールへと疾走する。
スタンドがざわめく。相手DFたちも一瞬、俺を見失った。
「行ける……!」
しかし、敵の司令塔はやはり隙を見逃さなかった。
レターティオが冷たく言い放つ。
「ラードさん、ゴール前に雷撃を」
「了解……《ライトニング・レイン》!」
次の瞬間。
ゴール前に青白い稲妻が降り注いだ。
雨のように、いや……網のように。
隙間なく、俺の行く手をふさいで。
「くそっ……避けられ……!」
バチィィィィィィッ!!!
轟音と共に雷光が俺の身体を貫いた。
視界が白に染まる。
筋肉が痙攣し、ボールを蹴る足も言うことをきかない。
「ぐっ、ああああああっ!!!」
焼け付く痛みに声が漏れる。
俺は……まだ倒れるわけには……!




