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異世界転生サッカー これがサッカーなのか・・・?  作者: 南蛇井


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43/47

ここからは俺が止める番だ

いよいよ練習試合が始まった。

 相手は――レイモンドジュニアハイスクール。

 並んだメンバー表を見て、俺は思わず心の中で叫んだ。

(な、なんだこの編成……!)

 FWに盗賊2人+忍者。

 MFに戦士2人、魔法使い、僧侶。

 DFにネクロマンサーってお前、どこでライセンス取ってきたんだよ!?

 

こっちはいつもの布陣。リオーナとトマーティオのツートップ。

 そして俺は――サイドバック。忍者になって初めての実戦デビュー戦だ。

(必ず力を見せつけてやる! 俺は今日から忍者サイドバック!)

 トマーティオはと言えば、腕を組んでフンと鼻で笑っていた。

「勝利は確定だ。俺がいるからな」

 ……この人、勝つ前提しか考えたことないよな。

 笛が鳴る。キックオフ!

 ボールはレイモンドのピスケ(忍者)からハザン(戦士)へ渡り、そのままドリブル開始!

 そして――レターティオが中指を立ててトマーティオを挑発した。

「兄さぁん、また封印されたいんですかぁ?」

 その瞬間。

「なにぃ……!? 貴様ァ!!」

 トマーティオが杖を構えた。

「爆光雷撃弾――《神の怒り(ゴッド・レイジ)》!!」

「待て待て待てーーーっ!!!」

 俺の声なんて届くわけもなく。

 レイモンドの選手たちはレターティオの指示で一斉に散開!

 なんとコートの外へ全員が逃げ出した!?

 おい待て。試合中だぞ? ボール持ってるのお前らだろ!?

 ていうか爆裂魔法ぶっ放すサッカーに付き合う気ゼロじゃねえか!!

 トマーティオが呪文を放った、その一瞬――。

「……っは?」

 背後から忍者のピスケがスッと忍び寄り、光る刃を一閃。

 次の瞬間――トマーティオの首と胴が、きれいに分かれていた。

「ぎゃああああああああああっ!!」

 俺たちは全員絶叫した。サッカーグラウンドで見ていい光景じゃない。

 いや、これレッドカードどころの話じゃねえだろ!?

 レターティオは勝ち誇ったように叫ぶ。

「やっぱり油断しましたね、兄さん! 大魔法のあとなんて隙だらけですよ!」

「兄さんが首もげた状態でドヤ顔してんじゃねぇ!!」

 俺は慌てて声を張り上げる。

「トマーティオを回収しろ! 救護班! すぐに回復だ!」

 魔法で蘇生できる世界だからって、毎回こんなノリで殺すなよな……。

 ところがその時、敵FWのタカイがトマーティオの胴体をヒョイと担ぎ上げた。

 そして自陣へ走り出す。

「……おい、なんだと!? 何をする気だ!?」

 まさか――サッカーボールの代わりにトマーティオをゴールにぶち込むつもりじゃ……!?

(いやいやいやいや……やるのか!? 本当にやるのか!?)

タカイがトマーティオの死体を運んでいくのを見て、リオーナが声を荒げた。

「しまった! ネクロマンサーよ! ゾラを潰して!」

 リオーナがすぐさま呪文を詠唱。

「――【雷光弾】!」

 雷の矢が一直線に走る。しかし――。

 ゾラの隣にいたラードが、すかさず魔法障壁を展開した。

「【マジックバリア】!」

 バチンッ!と弾かれる雷光。

 リオーナが舌打ちする。

「チッ、防がれた……!」

 そして次の瞬間――ゾラの呪文が完成した。

 トマーティオの死体がガクンと震え……。

 ゆらり、と立ち上がる。

 しかも右手に自分の生首をぶら下げたままで。

「ひいっ……完全にホラーじゃん!!」

 俺、心臓止まるかと思った。マジで怖い。

 あのトマーティオがホラー映画のゾンビ主人公みたいになってるとか、笑えねえ。

 リオーナが顔をしかめる。

「くそっ……トマーティオはネクロマンサーの支配下……やられたわ」

 俺は震える声でツッコミを入れるしかなかった。

「やられたわ、じゃなくて! もうこれ試合どころじゃないよな!? どう見てもR指定ホラーシーンだろこれ!」

ゾンビ化したトマーティオが、よろよろと立ち上がり呪文を唱え始めた。

その瞬間、ザグが一直線に駆け込み――

「どりゃあああっ!!」

豪快な飛び蹴りで、トマーティオの頭をサッカーボールみたいに蹴り飛ばした。頭部は宙を弧を描いて、遠くの地面にごろごろ転がっていく。

「ナイスキックよ、ザグ!」

リオーナがすかさず声を上げた。「今のうちに体だけでも回収するわ!」

すると、トマーティオの頭を拾い上げたのは――レターティオだった。

「ちっ……ほんと、役に立たない兄さんですね」

そう吐き捨てるように言いながら、転がる頭を抱え込む。

「でも復活はさせませんよ。この頭は僕がもらった」

うわ……弟の冷酷さがマジでやばい。兄貴扱いが完全に荷物じゃねーか。

「翔真!」

リオーナが俺を振り向いた。

「トマーティオ抜きで攻めるわよ! あんた、FWにポジションチェンジして!」

「なっ、俺がFW!?」

心の準備もないまま、最前線に呼び出される俺。

でもリオーナの目は本気だ。迷ってる暇なんてない――ここからが勝負だ。

「よっしゃ……! 久しぶりのFW復帰だ」

俺は胸の奥が熱くなるのを感じていた。ずっと待ってた瞬間だ。

「決めてやる。だって今日は――俺の忍者デビューだからな!」

……うん、言っててちょっと恥ずかしい。けど今は勢いだ。

フィールドの向こう、レターティオが冷ややかに笑う。

「兄さん――トマーティオさえいなければ、残りは雑魚です」

「なっ……!」

その一言に、リオーナの眉がピクリと跳ね上がった。

「なめないでよ!!」

怒りの声とともに、彼女が詠唱を叩きつける。

――《光玉連撃豪雨》!!

眩い閃光が無数に生まれ、雨のようにレイモンドイレブンに降り注いだ。

フィールドが昼間みたいに白く染まり、敵の防御を切り裂いていく。

「甘いな!」

ラードが咆哮し、厚いマジックバリアを展開する。光の雨は弾かれ、爆ぜる火花が辺りを照らした。

レターティオが涼しい顔で続ける。

「リオーナさん、あなたの魔法は確かに速い。スキもない。

 ……でもね、軽いんですよ」

そう言って呪文を唱え、ピスケに光をまとわせる。魔法耐性がぐんと跳ね上がったのが、見ていて分かった。

「突破するぞぉおおッ!」

次の瞬間、ハザンが光の雨をかいくぐり、力ずくでドリブル突破を仕掛けてきた。

くそっ……! ここからは俺が止める番だ!


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