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異世界転生サッカー これがサッカーなのか・・・?  作者: 南蛇井


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33/47

雑魚ほどよく吠えるな……

翌日――。

 鏡を覗き込み、俺はようやく胸をなで下ろした。

「……よし! 戻った! 俺の目、普通に戻ったぞ!」

 緑だの、茶色だの、虹色だの……さんざん振り回されたけど、黒目と白目がちゃんと黒と白に戻ってる。これだよ、これが普通なんだよ。

 しかし、部室に入った瞬間――。

「……なんか翔真、らしくないな」

 ザグが真顔で言った。

「そうね。派手さが足りないわ」

 リオーナまで腕を組んでうなずく。

「はあ!? これが普通なんだよ普通!!」

 俺は慌てて叫んだ。

「昨日までの妖怪の方がインパクトあったし」

「そうそう、虹色の方がやる気出たよな」

「地味な目じゃ試合に映えないんだよ」

 ……ひどい。

「お前らなぁ! あんな派手な目じゃチカチカしてサッカーどころか生活もできないんだよ!!」

 俺が必死に訴える横で、ザグたちはため息をつく。

「……なんかやる気でないわよね」

「本当だよ。昨日まで酷い目してたのに、今じゃただの凡人だ」

「凡人って言うな!!!」

 そんな空気を鼻で笑い飛ばしたのは、トマーティオだった。

「ふん、つまらん。所詮その程度か」

 ……くっそ、こいつだけは余裕満々じゃないか。

翌日の放課後。

グラウンドの隅でボールを回しながら雑談していた翔真たちの前に、ひょいとローナルドが姿を現した。

「おお、楽しそうだな?」

にやりと笑いながら近づいてきたその視線は、真っ先に翔真の顔に注がれる。

「ん? あれ? 目が普通だな……」

首を傾げたローナルドは、懐から小瓶を取り出して振ってみせた。

「ほら、新しい目薬があるぞ。これならまた派手に――」

「いらないよ!! 二度とするか!」

翔真は即座に拒絶し、手を振って大げさに後ずさった。

「なんだよ……せっかくいいのが入ったのに。面白くないな」

肩を落としたローナルドは、わざとらしくため息を吐く。

「俺で遊ぶなっての!」

翔真は怒鳴りながらボールを蹴り飛ばした。

しかしローナルドは、すぐに表情を切り替える。

「まあいい。気を取り直して……準決勝の相手が決まったぞ!」

その言葉に一同の視線が集まる。

「トナリーナジュニアハイスクールだ!」

ざわつきが広がった。

あの名前を聞けば、誰もが同じ人物を思い浮かべる。自然と仲間たちの視線はトマーティオへと集まった。

「そう。お前らも知っている通り――」

ローナルドはにやりと笑う。

「トマーティオがかつて所属していたチームだ」

一瞬、空気がぴんと張り詰める。

仲間たちの視線を受けながら、トマーティオは眉一つ動かさず立ち上がった。

「関係ない」

その声は低く、しかし揺るぎなく響いた。

「俺の力で、捻じ伏せるだけだ」

凛としたその言葉に、誰もが黙り込んだ。

次なる戦いに向けて、空気がじわりと熱を帯びていくのを、翔真は感じていた。

 そして、その日が来た。

 ピッチには緊張が張りつき、観客席のざわめきがいつもより少しだけ低く聞こえる。対戦相手――トナリーナジュニアハイスクール。かつてトマーティオがいた“元のチーム”だ。

 相手の布陣は盤石。

 FWにブルー(魔法使い)とゼノ(戦士)。中盤にドーリア(忍者)、ザガン(魔法使い)、ドーマ(僧侶)、ゼン(忍者)。守備にはジーノ(魔法使い)、アレス(重戦士)、キロー(騎士)、セロ(僧侶)。そしてゴールマウスにはジェロ(魔法使い)が構えている。

 出場選手の名がコールされるたび、トマーティオの顔にほんのわずかな影が差した。仲間たちの歓声と、どこか冷たい期待が混じる。

 試合前のピッチ脇。ゼノがトマーティオの前に踏み出した。太い眉、鋼の眼差し。胸の内に渦巻くのは怒りだけだ。

「裏切り者が、俺はお前を絶対に許さない」

 ゼノの声は震えてはいなかった。むしろ、静かに凶暴さをたたえた低音で、トマーティオの胸めがけて刺さる。

 トマーティオはただ、鼻先で笑った。

「雑魚ほどよく吠えるな……」

 言葉が油に引火する火花のように、場がピリッとする。ゼノの手が伸びる。掴みかかろうというその瞬間――。

「やめろ、ゼノ!」

 ブルーがすっと割って入った。長いローブの裾が揺れ、彼の顔は厳しさと計算高さを混ぜた複雑な表情だった。ゼノを押しのけるでもなく、ただ視線で制する。

「相手にするな。今は互いに冷静を保て」

 ブルーの声音は冷たく、隠された怒りを内に秘めている。だが続けて、少し落ち着いた調子でつけ加えた。

「この試合は――お前たちが思うより重要だ。試合が始まれば、全てを思い知ることになる」

 ゼノはブルーを睨みつけ、しかしその手を引っ込めた。ギリギリの緊張が散発的に走る。周囲の空気は“今はぶつかるな”と促していた。

 選手たちはポジションにつく。観客の視線、監督の指示、風に乗るホイッスルの予感。トマーティオはゆっくりと背筋を伸ばし、前方のピッチを見据える。


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