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異世界転生サッカー これがサッカーなのか・・・?  作者: 南蛇井


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23/47

おっしゃあ……! まだやれるっ!

 翌日の練習。

 空気は最悪だった。昨日の試合でついた亀裂は、まるで修復する気配がない。ボールを回していても、どこかぎこちない。俺も胸の奥がずっとざわついていた。

 そのとき、ローマリオがどっしり腰を下ろし、手にした瓶をぐいっとあおった。朝っぱらから酒かよ……とツッコミたいけど、あの人には誰も言えない。

「……お前ら、そんなに不満ならよ」

 ローマリオは酒臭い息を吐きながら、俺たちを一瞥した。

「次の試合、トマーティオ抜きでやってみろ」

 一瞬、練習場が静まり返った。

 その言葉を受けて、トマーティオは肩をすくめただけ。

「問題ないさ。負けそうになったら出ればいいそれdd」

 淡々としたその態度が、またみんなの神経を逆なでする。

 ザグが拳を握りしめ、大声を上げた。

「上等だ! 俺たちの力を見せてやる!」

 部員たちの士気が一気に燃え上がる。けど、俺は心の中で冷や汗をかいていた。

 ――いやいや、本当に大丈夫か?リオーナを除けば、他のメンバーの実力は正直不安だらけだ。

 試合で全部崩れる未来が、頭をよぎった。


 三回戦当日。

 対戦相手はコンクジュニアハイスクール。相手のスタメンを聞いた瞬間、俺は思わず息を呑んだ。

 FWはゾーマ――盗賊。

 MFにはジーノ、ブク、デリと三人の戦士が並び、さらにジンという魔法使い。

 DFラインにはゼン(騎士)、バスク(重騎士)、カン(戦士)、ゲド(僧侶)。

 そして最後尾を守るのは、ボルというモンクのGK。

 システムは5-4-1。分厚い守備を固める典型的なディフェンス重視の布陣だ。

 そんな相手に、俺たちテイコウの布陣は――まさかのツートップ。

 リオーナと……俺。

 久しぶりにFWとしてピッチに立つことになったのだ。

「おい翔真、ちゃんとやれよ」

 リオーナが冷たく釘を刺してくる。

「わ、分かってるって!」

 内心ドキドキしながらも、心の奥に小さな炎が灯っていた。俺は今日、FWなんだ。点を取れるポジションなんだ。

 ――試合開始の笛が鳴った。

 俺は迷わず前へ飛び出す。

 ボールを受け取ると同時に、ドリブルで一気に加速!

 守備的布陣なんざ関係ねぇ、俺が切り裂いてやる!

 だが――。

「甘い!」

「ここは通さん!」

 中盤の戦士たちが、壁のように立ち塞がった。

 鋼鉄の鎧をきしませながら、三人同時に俺を囲み込む。

 足元のボールを狙う剣のような視線。まるでドリブルの道を完全に封じる鉄柵だ。

「くっ……!」

 一瞬で包囲され、俺は行き場を失った。

ボールを一旦リオーナへと戻す。

リズムを整えるような軽いパス。彼女は落ち着いたトラップで受け、そのまま視線を前へ。

「ザク!」

リオーナの左足から放たれた鋭いスルーパスが、サイドを駆け上がっていたザクの足元へ吸い込まれる。

ザクは勢いそのままにドリブルで突破を仕掛ける。

――だが、立ちはだかる二人の影。

敵ディフェンス、バスクとゼン。

その両手に光る異能の剣が現れ、進路を塞ぐように交差する。

「来いよ……!」

ザクは一瞬も怯まず、ボールを足に吸い付かせたまま切り返し。剣をフェイントでかわしにいく。

だが――。

ギラリ。

閃光のように剣が走った。

「……っ!」

次の瞬間、ザクの身体が斬り刻まれる。

肩、腕、胴、脚――無慈悲に刻まれ、バラバラに弾け飛んだ。

ピッチに血しぶきが散る。

ボールだけが無情に転がり、誰もいない空間へと流れていく。

それでもザクの目は最後まで前を、ゴールを睨んでいた。

「おっしゃあ……! まだやれるっ!」

薬で体を修復させたザクが、血に濡れた芝の上から立ち上がろうとする。

――だが。

ガタリ、と音を立てた瞬間。

彼の身体は支えを失った積み木のように、バラバラと崩れ落ちた。

「なっ……!」

オレは思わず声を詰まらせる。

バスクがゆっくりと歩み寄り、崩れたザクを見下ろした。

冷たい目に、わずかな勝利の色。

「我らの剣の傷……そう簡単に癒えると思うな」

静かに突き刺さるその言葉に、背筋が凍る。

――これはただのファウルじゃない。存在ごと削り取るような、異能のディフェンスだ。

ザクはすぐさま治療班へと運ばれていく。

ピッチに残るのは、オレたち十人だけ。

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