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異世界転生サッカー これがサッカーなのか・・・?  作者: 南蛇井


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22/47

――確かに勝ちは勝ち。でも、これじゃ……

審判の判定は――まさかの「ゴール成立」。

 疑われつつも、なんとか得点として認められた。

「……よ、よかった……」

 翔真は胸をなで下ろした。だが同時に冷や汗も滲む。

 ――気配を完全に消しすぎるのはマズい。ゴールどころか、自分の存在まで消えてしまう。危うくサッカーじゃなく、ただの暗殺になりかけた。

 だが、その安堵の隙を突くように、盗賊トリオが牙をむいた。

「行くぞ!」

「加速!」

「さらに加速だ!」

 ビンド、ウンド、サンドの三つ子は怒涛のパス交換を繰り広げる。

 目にも止まらぬ速度でボールが渡り、ステルスのスキルが最大まで発動――まるで姿ごと消えるかのようにピッチを駆け抜ける。

「チョロチョロ……いい加減にしろよ」

 トマーティオの額に青筋が浮かぶ。イラついた笑みを浮かべ、杖を振りかざした。

「全方位全攻撃魔法――《豪雨業火蓮華殺》!」

 次の瞬間。

 空から火球が、まるで豪雨のように降り注いだ。赤い閃光がグラウンド全体を覆い尽くす。

「くっ!」

 リオーナが即座にバリアを展開する。しかし彼女一人の防御では、すべてを守りきれなかった。

「ぐあっ!」

「うわああっ!」

 ザグも、セトも、デコーズも――。仲間たちは次々と火の雨に焼かれ、地面に崩れ落ちる。

 ただ一人、平然と立っていたのはトマーティオ。

 火の粉を払いながら、悠々と転がるボールを拾い上げる。

「……ごちゃごちゃチョロチョロとうるさいコバエどもが。始めからこうしておけば良かったんだ」

 その声音は冷酷で、試合の空気さえ支配するような絶対的なものだった。

「――トマーティオ、やり過ぎよ!」

 リオーナの声がピッチに響いた。

 仲間も敵も巻き込むような広域殲滅魔法に、彼女の瞳は冷ややかな光を宿している。

 しかし当の本人は、まるで気にする素振りもなかった。

「関係ないだろ。勝ちゃいいんだ、勝てばな」

 涼しい顔でドリブルを始めたトマーティオは、そのまま敵ゴールへ突進。火の粉をまだ拭いきれていないスティルマの選手たちを尻目に、簡単に追加点を叩き込んでしまう。

 ――ピッチの空気は完全に彼一人のものだった。

 ベンチから急ぎ駆け寄るマネージャーが、倒れた仲間たちに回復薬を次々と飲ませていく。ザグも、セトも、俺も……それぞれ体を起こし、なんとか立ち上がる。

 けれど、その間にもトマーティオは独断専行を続けていた。

 味方の動きも無視し、ただゴールだけを射抜く。

「……おいおい、これじゃチーム戦になってないぞ」

 俺は胸の奥に妙なざらつきを覚えながらも、再びピッチに立つ。

 ――でも確かに、勝利は目前に迫っていた。

 試合は――勝った。

 圧倒的勝利だった。スコアだって、誰が見ても完封の快勝。

 でも俺の胸の中は、ちっとも晴れなかった。

 ピッチの上に残ったのは勝利の余韻じゃなくて、妙なざらつき。確実に、チームの中にひびが入った音がした気がする。

「おい、トマーティオ!」

 最初に声を荒げたのはザグだった。

 「俺たちの動き、全部無視してただろ! チームでやるんじゃなかったのか!」

 俺も続いて口を開いた。

「そうだよ。魔法で敵まとめて焼き払うとか……サッカーじゃないだろ。勝てりゃいいってもんじゃ――」

 けど、トマーティオは鼻で笑っただけだった。

「何が悪い。勝利のために全力を出した。それだけだ。お前らが足手まといだから、俺がやった。それ以上の理由が必要か?」

 リオーナが視線を伏せ、他の仲間たちも何も言えなくなる。

 ピッチの空気は重く沈み、勝ったはずなのに祝福の声ひとつ上がらなかった。

 俺は唇を噛んだ。

 ――確かに勝ちは勝ち。でも、これじゃ……。

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