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異世界転生サッカー これがサッカーなのか・・・?  作者: 南蛇井


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20/47

ズバーッ! だ

 シムラートの選手たちは顔を見合わせた。

 魔法が通じない二人――その存在は、彼らにとって最大の脅威に変わりつつあった。

「……ん、あれ?」

 まぶたを開けると、俺は芝生の上に転がっていた。

 確か、ボールを追いかけて――急に眠くなって……。

 慌てて身体を起こすと、スコアボードが目に飛び込んできた。

 ――5-0。

「……え?」

 頭が一瞬真っ白になる。

 試合は、もう終わっていた。

 しかも圧勝。俺が寝ている間に、トマーティオとリオーナの二人が、シムラートを完膚なきまでに叩き潰していたらしい。

「おい翔真! やったぞ! 勝ったんだ!」

 駆け寄ってきたザグが、血気盛んに拳を突き上げる。

「ふ、当然の結果だな」

「ま、二人で十分だったけどね」

 余裕の笑みを浮かべるトマーティオとリオーナ。

 俺は寝てただけ。何もしてない。なのに――勝っていた。

「……な、なんかよくわからんけど……勝ったぁぁぁ!!!」

 気がつけば、俺も両手を突き上げていた。

 テイコウイレブンは互いに肩を組み、歓喜を分かち合う。

 試合内容はともかく、勝利の喜びは揺るがない。

 地方予選初戦――俺たちは、堂々と突破したのだ。

「勝ったぞォォォ!!!」

 ザグがバンザイしながら跳ね回り、仲間たちも肩を組んで歌い出す。控室はお祭り騒ぎだ。

「いやぁ、俺たちテイコウ最強じゃね?」

「次も余裕だろ!」

「おーっ!」

 みんなが歓喜に沸く中で、俺は水をあおりながら、なんだか複雑な気分だった。

 ――だって、俺、寝てただけだし。

「……これで喜んでいいのか?」

 小さく漏らした独り言は、もちろん誰にも届かない。

 そんな俺に近づいてきたのはローナルドだった。酒臭い息を吐きながら、にやりと笑う。

「どうした、翔真。浮かない顔してんな」

「いや……。俺、このままだとまた魔法でやられる気がして……。なにか対策とかないんですか?」

 問いかけると、ローナルドは酒瓶を置き、低く笑った。

「魔法に対抗したいなら――盗賊ギルドに行け」

「……盗賊ギルド?」

 思わず聞き返す俺に、ローナルドは真顔で頷いた。

「奴らは、魔法使いを出し抜くことにかけちゃ達人だ。お前みたいな盗賊なら、必ず学べることがあるはずだ」

 部屋のざわめきから取り残されるように、俺の心臓がひとつ大きく跳ねた。

 盗賊ギルド――それは、俺にとって憂鬱な選択肢だった。

 盗賊ギルド。

 名前を聞いただけで胃が重くなる。いや、実際に胃薬が欲しいくらいだ。

「……また、あの荒くれ者たちの所に行かなきゃいけないのか」

 思わず溜め息が漏れる。こっちはサッカーで勝ちたいだけなのに、なぜか裏社会見習いみたいなことになってる気がする。

 でも仕方ない。ローナルドの言葉が頭を離れなかった。

 魔法に勝つには盗賊の知恵を借りろ――。

 俺は重い足を引きずりながら、ギルドの扉を押し開けた。

 中は相変わらずの地獄絵図。

 大声で喧嘩するやつ、カードで賭け事をするやつ、酒樽を抱えて倒れてるやつ……全員、目つきが悪い。

「おやぁ? ガキがまた来やがったぞ」

「おぉ、背中に“盗賊”って入ってる小僧じゃねえか」

 あっという間に囲まれて、俺は背中を丸める。やっぱりここ、苦手だ……。

「……あの、魔法対策って、どうすればいいですか?」

 勇気を振り絞って切り出すと、返ってきたのは爆笑だった。

「はっはっはっ! 魔法対策だとよ!」

「バカだなぁ、そんなもん決まってんだろ!」

「呪文が終わる前に――ズバーッ! だ」

「そうそう、詠唱が口から出る前に――スバーッ! ってやるんだよ!」

 ……全員、揃って手刀を振り下ろすジェスチャー。

 俺は額を押さえた。

「……参考にならねぇ」

 やっぱり盗賊ギルドは、盗賊ギルドだった。


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