幼馴染が留学するって言い出したかと思えば今度は…危険なバイトをはじめだしたぁ⁉︎
このたびオレは、開放感でいっぱいです。
コップに水を入れて入れて入れまくって溢れたくらい、開放感でいっぱいです。
そんなオレは今、白の全身タイツで野山を走り回っている。
リロリロアラララリロリロアラララと変な雄叫びを上げながら。
なんという爽快感!
開放的やん!ひゃっほぉう!ってはしゃいでジャンプしたら、全身タイツの頭の部分がズルって脱げた。
おほぉう!これはこれでまた開放感!
頭スースーさせながら、またも野山を走り回った。
ツインテールをなびかせて。
⁉︎
おい、まて‼︎
待て待て‼︎
ツインテールってなんよ⁉︎
オレの髪、そんなに長くねーぞ⁈
ってかさ、そもそもがオレ…なんで全身タイツなんよ⁉︎
てか、ここどこーー⁉︎
「…こ、ここどこーーっ‼︎」
「家だろぅに」
⁉︎
「だれっ⁈」
慌てて声のする方向に目をやると、幼馴染のアユカが冷めた目でこちらをみていた。
「だれじゃないでしょう?起きたらますおはようございますですよね?」
「あ、はい。おはようございます…」
夢か…
うん、なんか安心したわ。
でも、それと同時に疲労感半端ない。
夢の中で、あんなにはしゃいだオレって…やっぱりストレスが満タンなんじゃ…
…
「あ!それでねフミヤ、わたし…留学しようと思うの」
…
え…
留学…
それでねって、どれでね?
てか…
「…いつ?」
「再来年」
…
「…そっかー。やっぱそうなりますかー…」
「いや?」
…そりゃ、嫌に決まってる。
でも、それってただのオレのわがままだもんなぁ。
アユカ勉強頑張ってたし…
「ううん、いいじゃん!頑張ってこいよ」
「うん!だからそれまでにお金も貯めなくちゃ」
「バイトすんの?」
「うん」
…
どんどん違う道に進むアユカ。
今までは、一緒だった道がどんどん別のルートにかわっていってしまう現実。
「バイト、なにするの?」
「うんとねー、おじさんたちと…あ、電話だ。じゃまたねー」
えっ?
結局、なんのバイトなんだよ…
まぁ、それよりも留学の話が心にズシっと重荷になったかのようにのっかってて、正直バイトは、どうでもよかった。
留学…留学…留学
頭から留学が離れない。
アユカは、どんどん離れていくっていうのに…
オレもなんか資格取ろっかなぁ。
あれから数週間、アユカとは会っていない。
高校も違うし、家が近くてもなかなか会わないものだ。
オレは学校帰りに本屋に寄った。
で…
本を買うつもりが、なぜか面白い辞書ふう厚めの本というものを購入してしまった。
まぁ、本だけどさ…
それにしても重い。
なんでオレは、こんなにも重い本を購入してしまったのか…。
バッグを肩にきちんと装備して、よっこらせと心でおしゃべり中…
みてしまった…
アユカを。
で…隣にいるのって…おじさんだよね?
まさかアユカのバイトって…
パパパパパパパパパパパパパパパパ
パのつく活動じゃないよね⁉︎
な、なんで…そんなこと…
オレは、重い本を抱えながら重い悩みを抱えた。
…
どうすれば…
とりあえず、家に帰り重い本を取り出して、パラパラとめくった。
…
こんなことをしていても仕方ない。
いち早くバイトを阻止せねば‼︎
アユカにメッセージを送った。
アユカのバイト終わったら、アユカんち行っていい?
と。
そしたらすぐさま、いいよ〜と返事が返ってきた。
オレは、急いで自分の通帳をひらいた。
…お年玉、もっと貯めときゃよかったぜ。
今さっきも、本買っちまった…っす。
後悔しながら、アユカをじっとまった。
待てと言われた犬みたいに、じっと。
…
しばらくして、アユカからの連絡が入った。
バイト終わったよーんと。
(今どこ?)
(家の近く)
オレは通帳を握りしめて、アユカの元へ向かった。
「アユカ‼︎」
家を出ると、アユカの姿がみえた。
アユカは、にっこりしながらオレに手を振った。
…なんでそんなにかわいい笑顔で…
オレはアユカの元へ走って、抱きしめた。
「もう、バイトしなくていいよ」
「えっ?」
オレはアユカに、少しだけどお年玉が入っている通帳を渡した。
「…なにこれ?」
「バイト…やめてこれ使ってよ」
…
「いや、大丈夫だよ?バイト楽しいし」
…楽しいのかよ。
「でも、オレは…オレ、アユカの彼氏でもなんでもないけどさ、そういうの…イヤなんだよ。そもそも留学だって離れるのさみしいけど、でもさ…それは勉強のためじゃん?でもさ、バイトは…そのバイトだけは、やめてほしい」
「なんで?」
「なんでって…危ないだろ?」
「やけどとか?」
「うん、やけど…って、…え?」
恋の大やけど的な?
アユカおじ専なの?
だから、ずっと彼氏いなかったの?
だから、バイト楽しい…の?
「アユカ…バイトが楽しくてもそれは、ダメだろ」
「なんで?」
「だって…てか、オレのお金やるから、だから…オレもバイトするから、そのお金使ってよ」
「え?過保護的すぎない?」
「すぎない‼︎」
「でも、留学はいいの?」
「それは、勉強のためだし」
「…よくわかんない」
「わかれよ‼︎」
オレはまたアユカを抱きしめていた。
「好き…だ。ほんとはずっと言わないつもりだったけど、アユカが好きなんだ。だから、おじさんとの付き合いは、やめてほしい。心配なんだ」
「えっ?待って…わたしもフミヤが好き。でも、バイト先のおじさんと仲良くしないでってのは、ちょっと…どうかなって」
「バイト先?」
「うん、まちの食堂のバイト」
⁈
え?
「今日…おじさんと歩いてたのって…」
「あぁ、みてたの?食材の買いたしだよ?」
…
「えっ…あー…あー…」
「なに?いきなりマイクのテスト中?」
「ちげーよ!てか、オレ…なんか勘違いしてたかも…」
「ふふ、おじさんとデートとか?」
…
「まぁ…そんな感じです。」
「ないない」
…
「じゃあ、オレたち…付き合うでいい?」
「うん」
オレはアユカをそっと抱き寄せてキス…
しようとしたら、オレんちのカーテンの隙間が、ピャッてしまった。
母ちゃん…のぞいてたな…?
「えっ…」
アユカが小さな声を出した。
「どうした?」
「いま、家のカーテンが…」
どっちの親もオレたちを観察してた…っぽい?
…
そうか。
オレが大声でアユカ!って呼んだし…
抱きしめたし…
どうかアユカの家でのぞいてたのは、おかあさんでありますように。
おとうさん…優しいけど…アユカ大好き人間だからな…
オレと一緒で…
「アユカ、こっちいこ」
「うん」
オレたちは家から少しずれて、アユカを抱きしめて、そっとキスをした。
「さっきは、ごめんな。アユカ大好きだよ」
「うん、わたしも大好き」
「留学頑張れよ」
「うん、頑張る」
「オレも、アユカが留学してるとき勉強頑張る」
「え、それは留学前からでもいくない?」
「たしかに」
「ふふ」
「でも、今はアユカの推し活中だから」
チュ〜♡
こうして、いきなり幼馴染が彼女になった。
今夜は、いい夢が見れそうだ。
家に帰ると、母ちゃんがニヤニヤしていた。
「のぞき見禁止」
「えっ?なんのことぉ〜?」
と、母ちゃんはしらばっくれていた。
まぁ、今日は気分がいいから見逃しちゃるぜ。
おしまい♡