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好きな人に振られ、親友を亡くし不登校になってしまった少女の結末とは?

作者: 七瀬川むる

今日で、不登校百日目__。


私は、あの日を境に、学校に行かなくなった。

というか、行けなくなった。

メンタルが弱くて、まるで豆腐のようなメンタルの私には、あの出来事はつらすぎた。


まず、今日から約三ヶ月前、去年の十月八日は、中学生になってから初めての文化祭の日だった。

その日に、中学校の入学式の日に一目惚れして、約一年半ずっと好きだった(れん)に、告白をしたのだ。


「入学式の時から、ずっと好きだったんだ。私とよかったら、付き合ってください!!」


人生で初めての告白、それは心臓が喉から出そうなほど緊張していて、顔もきっと真っ赤だったと思う。だけど、そんな私に対して、廉は真顔で、


「…ごめん。俺、莉々香(りりか)のことは、友達以上として見れない。あと、俺好きな人いるから。」


そう、そっけなく言い放ち、さっさと向こうに行ってしまった。

私は、廉と仲が良くて、よく一緒にいた。

思わせぶりで、絶対私のこと好きそうだなと思えるような言動もしていた。それなのに、私を振った。あれはただの思わせぶりだったの?

そう考えると、涙が止まらなかった。

私はしばらく、その場にうずくまって泣いていた。幸い、人気の少ないところでよかったと思う。

十分ほど泣いていたら、親友の海凛(まりん)が来た。

「あ!莉々香…!いた!探したよ…大丈夫?!なんかあったの??そんなに泣いて…。」

「…海凛…。なんでもないよ…。放ってて…。」

「そんなこと言わないで!私でよかったら話聞くよ…?」

そう言われて、私はさっきあったことを全て海凛に打ち明けた。

私は、廉が好きだということを誰にも話していなかった。

この時、初めて、親友の海凛に廉が好きだということを打ち明けた。


「そんなことがあったんだ……。大丈夫!私も失恋は何回も経験してるから…!」

「…でも…海凛、彼氏いるじゃん〜…」

「まぁそうだけど…最近あんまり話してないよ。」

「…そうなの?だけど…私、彼氏もできたことないし…彼氏がいるだけで羨ましいよ…。」


海凛は、数か月前、彼氏ができた。

どうやら、初めての彼氏らしく喜んでいた。

だけど、最近はあまり話してないと言っていた。でも、それでも私は彼氏がいるだけで羨ましいと思った。


あれから何十分も、海凛に慰められながら私はなんとか泣き止み、海凛と一緒に文化祭を回った。そして、海凛と一緒に帰った。

学校から出て、お喋りをしながら一緒に帰る。いつものように、世間話をしていた。

だけど、学校から出て数百メートル進んだ横断歩道は、信号が無く、車が来ているかを自分で確認して渡らなければならない。

この時、私と海凛は、この横断歩道を渡るとき、話に夢中で車が来ているのかをよく確認していなかった。


「キィーーーーーッ」


「あ…危ない!!莉々香!!」

「…え?!あ、海凛…!!危ない!!」


海凛は、私を庇って、車に轢かれてしまった。

「海凛?!おーい、海凛?!大丈夫?!目覚めて!!」

海凛は、頭から血を流して、意識を失ってしまった。他の部分からも出血している。

私は、こっそり学校に持ってきていたスマホをポケットから取り出して、救急車を呼ぶ。

この時、心の底からスマホを持っててよかったと思った。


十五分後、救急車が来る。

私はパニックで、何をしたらいいのかがわからなくて、ずっと泣いていた。

救急車に、私も一緒に乗る。

病院に着き、海凛は集中治療室に入った。

私は、海凛が助かることだけを祈っていた。

だけど……

海凛は、車に轢かれた時の打ち所が悪かったみたいだ。海凛は、出血多量で亡くなってしまった。

私はこれが現実なのか、受け止められなかった。もしかしたら今日起こったことは全て夢なのかもしれないと思って、頬をつねってみる。

だけど、痛かった。これは紛れもなく現実だということだ。

私は、絶望した。今まで生きていて、最大の絶望。

食事や入浴も忘れて、ひたすら自分の部屋に籠って、泣いていた。


気がつけば寝ていたようで、ふと目を覚ました。時刻は午前八時半。

幸い、文化祭の次の日が土曜日で、休みの日でよかったと思った。

そして、思い出す。

廉には振られて、海凛が私を庇ったために、交通事故で亡くなってしまったということを。

私はまた絶望感に苛まれる。もうずっと寝ていたいと思った。そしたら、この悲しみを味わうこともなくなるから。

自殺も何度も考えた。だけど家族のことを思うと、申し訳なくて死ねないし、少し死ぬのが怖いという気持ちもあったから。


それから、このような出来事があってから、ショックで学校に行けなくなった。

私が不登校になってしまってから、早三ヶ月。

ハロウィン、クリスマスが過ぎ、年が明けた。廉とも、あれから気まずくて一回も会っていないし、ラインもしていない。向こうからラインが来たりもしていない。

私の心の傷は癒えないままだ。

廉と、海凛以外、私に友達と呼べる人なんていなかった。私は内向的な性格で、入学式の時から、そんな私に話しかけてきて、仲良くしてくれたのが廉だった。一目惚れした相手に、話しかけられた時は驚いた。

だけど、そんな幸せだったひとときも、束の間に過ぎていった。

だから今、私が学校に行っても、一人ぼっちだし、誰も私のこの心の傷を慰めてなんてくれないから、意味がない。

だから、こうして今日も自分の部屋に籠って、思い出してまた泣いていた。


そんな時、母が風邪を引いた。

高熱で、三十九度の熱が出てしまったようだ。

「アンタ…もうずっと外出てないんだから…たまにはお使いを頼むよ、お母さん具合悪いから…。」

そう元気のない声で話す母。

本当に具合が悪そうだし、仕方がないなと思い了承し、お使いに出掛けた。

数か月ぶりに外に出た。

あの文化祭の日以来、外にずっと出ていなかった。外の空気が澄んでいて、空気がおいしく感じられた。

スーパーに向かおうと、歩き出したその時、誰かに後ろから声を掛けられた。


「…おい、莉々香。」

「…え?……もしかして、瑛人(えいと)?」


声を掛けてきたのは、幼馴染の瑛人だった。

家が斜め前で、小さい頃はよく遊んでいた。だけど、小学校高学年くらいからは、いつの間にか疎遠になって、話さなくなっていた。

そんな、何年も話していない瑛人にいきなり話しかけられて、私は戸惑った。

瑛人はかなり身長が伸び、私より低かったはずのあの目線が、いつの間にか私より目線が遥か上になっていて、声も低くなっていた。一瞬、誰だかわからなかった。


「うん、俺だよ、瑛人。久しぶり。」

「…どうしたの、急に。」

「…なんかお前が、学校に行かなくなったって噂を聞いて、何があったのか気になってさ。」

「……別に、なんでもないよ。」

「なんでもないなら、そんな急に学校に行かなくなるなんてことないだろ。」

「…そうだけど…別に、瑛人には関係ないし。」

「関係あるよ、あとで俺にその話聞かせろよ。これ、俺のラインIDだから。ラインで詳しく聞かせろよ。」

「…へ??わ、わかった…。」

「じゃあな。」


何年も話していなかった瑛人に、急に話しかけられ、学校に行かなくなった理由を聞かせろと言ってきた。

私は戸惑った。なぜ瑛人がそんなことを知りたがるのか。

しかも、ラインIDが書いてあるメモを瑛人が渡してきた。なぜ、そこまでして私が不登校になった理由を知りたいのだろうか?

わけがわからないまま、スーパーに行ってお使いを済ませ、家に帰った。


「はぁ…疲れた。」

やはり、外出は疲れる。

久々に外に出たのもあるかもしれないが、やっぱり家で自分の部屋に引き籠もっているのが一番心地いいと思った。

そういえば、さっき瑛人にラインIDのメモを渡されたことを思い出した。

ラインを開いた。

その時、廉と海凛のトーク画面が画面に映し出される。また嫌な思い出が蘇って、泣きそうになってしまうから、トーク画面を非表示にした。

そして、瑛人のラインIDを調べる。

「EITO」と、ローマ字で表記されている一つのアカウントが出てきた。それを、友達に追加する。


〈追加したよ〉

そう送ると、すぐに既読がついた。

〈おう〉

〈私、学校に行かなくなった理由は、誰にも話すつもりはないから。〉

そう送った。

だって、瑛人はこのことに関しては無関係だし、あまり話したくない内容だから。

思い出しただけで泣いてしまう。

〈そんなこと言うなよ、みんな心配してた。〉

〈私、友達いないし心配してくれるような人なんていないよ〉

〈いや、俺、莉々香とクラス違うけど、結構学年でも噂になってる〉

〈嘘でしょ、そんな嘘ついても私は話すつもりはないよ。〉

そう送ったら、諦めたのか瑛人はしばらく既読無視だった。

だけど二十分ほどして、返事が来た。

〈実はさ俺、もう知ってるんだよね〉

〈どうしてお前が不登校になったのか〉

〈え?私誰にも言ってないんだけど、どういうこと?〉

瑛人は、もう既に、私が不登校になった理由を知っていたようだ。

一体どういうことなのだろうか?わけがわからない。瑛人とは、何年も話していなかったわけだし、こんなことは話さない。

〈この前、莉々香のお母さんと俺のお母さんが話してて、その話を俺のお母さんから聞いたんだ。〉

〈ああ…なるほどね〉


瑛人とは、親同士も仲がいいためよく話している。その時に、私が不登校になったという話を瑛人のお母さんと私のお母さんで話していたらしく、その話を瑛人のお母さんが、瑛人に話したらしい。それで、瑛人がこのことを知っていたということだ。

でも、私は疑問に思った。

なぜ、最初瑛人が私に話しかけてきたときは何も知らないような様子だったのだろうか?

普通、不登校になった理由を知っているなら、「何があったのか気になってさ。」なんて言わないし、私だったら、声も掛けたりはしない。

瑛人の行動の意味がわからなかった。

私は瑛人に訊いた。


〈でも、なんでさっき話しかけてきたときは、そのこと何も知らないような様子だったの?〉


既読はつくが、しばらく返事が来なかった。

そんなに答えられないようなことなのだろうか?

五分後、瑛人から返事が来た。


〈配慮だよ〉

〈いきなり話しかけられた上に、あんなこと言われたら嫌だろうなって思ったから〉


どうやら、知らないふりをしていたのは瑛人なりの配慮らしい。

だけど、それなら私に話しかける必要もないと思った。だって、知ってるなら別に私にわざわざ訊く必要もないから。


〈うん、それは嫌だ〉

〈でも、それなら私に話しかける必要もないと思ったんだけど〉


そう送り返す。また少し間が空き、既読がついてから二分後くらいに返事が返ってきた。

この、ラインを送ってからの返事の間はなんなのだろうか?


〈お前が少し心配だったんだよ〉

〈いきなり学校来なくなったなんて噂聞いたから。〉

瑛人は、私を心配していたらしい。

でも、なぜわざわざ私なんかに心配をするのだろう?別に、放っておけばいいのに。

〈へー〉

〈心配してたんだ、私なんかにわざわざ〉

〈そりゃ心配するだろ、莉々香ももし、俺が学校行かなくなったらどう思うの?〉

〈別になんとも思わない〉

〈どうしたのかなとは思うけど、そんな心配にはならないよ〉

〈そうなんだ〉

〈うん〉


それで終わるライン。

だけど、瑛人がその日を境に、別クラスなのにわざわざ、家が近いからと言う理由で、私の家まで授業のプリントや手紙を届けてくれるようになった。

なぜわざわざそんなことをするのだろうか?

瑛人の考えていることがよくわからない。


瑛人が毎日、授業の手紙やプリントを届けてくれていたある日、瑛人からラインが来た。

〈なぁ、お前さ、もうずっと学校行かないの?〉

〈いや、ずっと行かないってつもりはないけど、今は行く気になれない。〉

〈そうなんだ、でもさ〉

〈一回だけでも学校に行ってみたら、いいことあるかもしれないよ?〉

〈そんなことないよ、友達いないし、海凛は死んじゃったし、廉とも気まずいし。〉

〈知ってるんでしょ?私が不登校になった理由。〉

〈まぁ、知ってるけど〉

〈行く気になれたら行った方がいいと思うよ〉

〈うん〉


瑛人のことを少し、お節介だなと思ってしまう自分がいた。

別に、瑛人には私が学校に行こうと行かないが、関係ないというのに。

昔は、こんなにお節介ではなかったなと思い返していた。

一体なんなのだろう?



       * * *



寒さも収まり、桜が満開な今日この頃。

明日から、私も中学三年生。

今年から受験生なのに、ずっと学校に行かないのもよくないなと思い始めてきた。

学校に行くと考えると、気が引けるけれど受験生だし、いい加減学校に行かないといけないと思った。

友達もいなくて一人ぼっちだけれど、もしかしたら新しい友達もできるかもしれないし、久しぶりに学校に行ってみることにした。


次の日、学校に着き、昇降口に貼り出されている新しいクラス表を見て、一組から順に、自分の名前を探す。

三年二組の、二十五番のところに「長谷川莉々香」と書いてあるのを見つけた。

下駄箱で靴を履き替えて、三年二組へ向かう。

教室に入る。緊張して冷や汗が止まらない。


「おい、莉々香。」

「…へ?」


教室に入って早々、横から声を掛けられた。

だけど、話しかけてきた誰かは女子の声ではなかった。

恐る恐る振り返ると、瑛人だった。


「…瑛人?同じクラスなんだ。」

「うん、席もお前の隣だよ。俺の席ここ。」

「あ、うん。」


瑛人と同じクラスになるのは、小学校低学年の時以来だ。

まさか、今年同じクラスになるとは思っていなかった。

しかも、席も隣だった。一体なんなのだろう?

そして、学校に来たはいいものの、中二の後半はずっと学校に来ていなかったため、勉強の内容も全くわからない。友達もいないし、やっぱり学校に来ない方がよかったのかもしれない。そんなことをしばらく考えていたら、瑛人がまた話しかけてきた。


「…学校来たんだな、お前。」

「…うん、来ちゃいけなかった?」

「いや、そういうわけじゃないけど。今日も来ないのかと思ってたから。」

「さすがに学校行かないといけないなって思ったんだよ。」

「…まぁ、そう思えるようになったのはいいことだと思うよ。」

「…そう、かな。」

「うん、俺はそう思う。明日も学校来るの?」

「…どうしようかな。なんかやっぱり来てもいいことないし…もしかしたら来ないかも。」

「へぇ…でも、いいことが全くないってことはないと思う。学校にいると嫌なことも多いけど、楽しいこともあるし。」

「それは、瑛人は友達がいるからね。私はぼっちだから…。」

「…いや、ぼっちじゃないだろ。だって……」

「…だって?」

「…やっぱりなんでもないわ。」

「あ、そう…。」


やたらと私に絡んでくる瑛人。

なぜこんな私に絡んでくるのかはわからないが、私が新しいクラスで話せるのは瑛人だけだった。

前の席の女子に話しかければよかったな…と後悔しながら、帰路に着いていた。

いや、明日でも間に合う。

明日、前の席の女子に話しかければいいのだ。確か、野崎さんという人だったはず。


次の日、学校に着き二度目の教室に入る。

「おはよ、莉々香。」

「あ、おはよ。」

またまた瑛人が絡んでくるが、適当に流し、前の席の野崎さんに、勇気を出して話しかける。


「ね、ねぇ、お、おはよう。私、長谷川莉々香。これからよろしくね。」

「…あ、長谷川さん…!よろしくね〜!」


私は勇気を出して、前の席の野崎さんに話しかけた。彼女の名前は、野崎藍香。

これをきっかけに、野崎さんともよく話すようになり、初めて中学生になって新しい友達ができた。

野崎さんとは、趣味や趣向が似ていて、気が合った。一緒にいると楽しくて、時間があっという間に過ぎていった。

私は、ここ半年ほどつまらなくてモノクロだった世界に、色が付いた気がした。

そして、四月の始業式から一週間ほど経った時、瑛人がいつものように話しかけてくる。


「お前、最近野崎と仲いいよな。」

「うん、勇気出して話しかけてみたら会話が弾んでさ、友達できて嬉しいよ!」

「なんか最近のお前、前より笑顔が増えたよな。やっぱり友達っていた方がいいよな。」

「だよねー、ここ何日か他の友達もできて楽しいよ。」

「…よかったな。」


瑛人の言う通り、最近の私は笑顔が増えたなと自分でも思う。

友達といると、こんなに楽しいんだなと思った。

私の学校生活は、すっかり楽しいものに変わった。



        * * *



入学式から早一ヶ月ちょっとが経ち、もう五月ももう終わりに近づいている。

気温もだいぶ上がり、日差しも強くなってきたこの時期。

明後日は、ついに体育祭だ。そして、今日は体育祭の予行練習があった。

ずっと外でみんなの応援をしたりしていた。自分の種目の番のときも、たくさん動いて全力で頑張って、たくさん汗をかいた。

帰宅部で普段動かない私は、体育祭の予行練習でよほど疲れたのか、予行練習が終わった後はクタクタで、ずっとウトウトしていた。


「おい莉々香、起きろ」

少し大きな声で、そう声を掛けてくる瑛人。

私は体育祭の予行練習で疲れ過ぎて、瑛人の声も耳に入らない。

「…おい。」

「……そのうち起きるから大丈夫」

寝ぼけた声でそう答える。

眠すぎて、その後に瑛人が言った言葉も覚えていない。私はずっと眠っていた。

そして、私はある夢を見ていた。


それは、教室の自分の席で私が寝ていて、瑛人が声を掛けてくるといういつものようなシーンだった。私はその時、瑛人が声を掛けてきたことで起きたのに、なぜかその後も寝たふりをしていた。

瑛人は、寝たふりをしている私に向かって話しかけてくる。

「おーい、莉々香。」

「お前、あれからずっと寝てんの?」

「もうすぐ完全下校の時間だぞ」

瑛人はそう言って、少し黙った。

でも、瑛人が動かないで、私の机の目の前にいるのはわかった。瑛人ももう、部活が終わったならすぐ帰ればいいのに、なぜずっとここにいるのだろう?

瑛人が黙ったままその場にいて、たぶん一分ほど経った時のこと。

瑛人が小声で耳を疑うようなことを言い出す。


「体育祭、頑張れよ…。

………俺、莉々香のことが小二の時から好きなんだ…。お前が不登校になったって聞いたときはさ、心配でたまらなかったよ。

何があったのかなってずっと考えて、そのことを考え過ぎて不眠症になりかけたこともあった。だけど、お前がこの前の始業式の日に学校に来て驚いたんだ。

学校来るようになったのかなって思ってさ、それならずっとこの先も来てほしいって思ってたんだ。

それで莉々香にどんどん友達ができていってさ、前より笑顔も増えて、ちゃんと毎日学校にも来るようになって、俺心の底から安心したし、嬉しかったし、何より莉々香と隣の席で、毎日話せるのが楽しいし、嬉しいと思ったんだ。

俺…これからもずっと莉々香と一緒にいたい。だけど、数ヶ月前好きだった人に振られたんだろ?そんな状態で告白できるわけもないし、勇気もないし………莉々香が大好きなのにな……。」


そんなことを言っていた。

私は驚いて、寝たふりをやめて伏せていた顔を上げる。


そこで、実際の自分も目覚めた。

目の前には、瑛人がいる。驚いた表情で、お互い数秒間見つめ合っていた。


「……おはよう、寝過ぎ。」

「……な、なんでここにいるの?」

夢で見た光景とあまりにも似ているため、驚いてそう瑛人に訊ねた。

「……あ、えと…それは……」

そう聞いてしどろもどろになる瑛人。

私は、そこで思った。

もしかして、さっきの夢で瑛人が言ってたことって、今私が目覚める前まで、実際に瑛人が言っていたことなのか…?

考え過ぎかもしれないが、瑛人が今私の目の前にいるし、そう考えると辻褄が合った。


「……もしかしてさ、さっき…なんか私に向かって言ってた?」

「…へ??も、もしかして聞いてたの?起きてたの??」

「いや…起きてないよ、寝てたんだけど、夢で瑛人が私に向かってなんか言ってたんだよね…」

「あ、えっと……その内容覚えてる?」

「…うん。もしかして…図星なの?さっき夢の中で私に向かって瑛人が言ってたやつ…。」

「………うん…。まぁ聞かれてたなら本当のことを言うよ。本当はこんなつもりじゃなかったんだけどさ…。俺……実は莉々香が好きなんだ。」

「…小ニの時から?」

「…うん、よく覚えてるね。」


私は、戸惑った。最近瑛人がよく絡んでくるなとは思っていたけど、まさか私が好きだったなんて…。失恋したばっかり…といってももう半年以上経ったけれど、未だに廉のことを時々思い出す時があった。

だけど、よく考えれば、瑛人はそれなりに頭もいいし、運動もそこそこできて、顔も結構かっこいい。私は、今まで意識したことがなかった瑛人に、今この瞬間、恋をした。


「……瑛人、私も大好き。今、好きになっちゃったよ。」

そう言って、瑛人を抱きしめた。

「ちょ!!い、いきなり抱きつくなよ。恥ずかしいだろ…。」

「いいじゃん、もう私たち、”恋人“でしょ?」

「そ、そうだけどさ…。まぁ、これからは”恋人“だよな。改めて、よろしく…。」


そう言って、瑛人も私を抱きしめてくれた。

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[良い点] できました? てかここで毎回送るの迷惑かこれ笑笑
[良い点] 内容は詳しく言える立場じゃないから置いといて誤字脱字が少ないのはすごく良いと思う! [一言] 作品には関係ないんだけど一つあって、説明が難しいんだけど小説を開いた時にでる作者名のところを青…
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