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「嫌なのか。人間になるのが」

彼は困ったように鈍色の髪を弄ると、不意に席を立った。目で姿を追うと、台所に入っていく。手には湯呑みと花形の上生菓子。どうやら菓子受けのようだ。手短にあった小さな台に盆を置くと、静かに口を付けた。

舞楽様は僕が人間になっても、心が変わらなければ構わないと言っていた。だから懸念するのはもう一つの問題。

「嫌.......というか、人間の記憶は段々と霞んで行くじゃないですか.......。だったらお使いのままが良いなって。でも.......でも.......」

もしも本当に人間になってしまったら、神使えに分類される事になると思う。お使いではなく。だから、その為の覚悟とか、知識とかを教えて欲しい..............。

彼は気怠く煙管を口に咥えると、考え込むように手首で米神を小突いた。

「早まるな、澪月。お前が人間になってからでも、遅くはない。先ずはお使いに戻る事だけを考えろ。良いか。過去に固執しろ。より鮮明にお嬢ちゃんと過ごした記憶を思い描け」

彼の言葉は今までにないほど重かった。

上生菓子は紡が持ち寄ったものですねー。

お裾分けですね。きっと。


でも何時でも焦りは禁物です。

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