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「もしかしたら少し長くなるかも知れない。裏庭に行くぞ」

そう区切った後、大家さんは黙って振り返った。どうやら話をする事は決定事項なようで、私の返事を待つこと無く、振り返る事無く中庭に向かって歩き出す。慌てて私も後を追う。大家さんは新緑の茂る中庭のベンチに腰掛けていた。煙管は手放さない。

「これは勝手なエゴであり、考えだ。それを念頭に聞いて欲しい」

「はい.......」

「数多の事象と関わる事で、人間は色を変えて豊かになる。何も考えずに蟻を踏み潰していた子供が、大きくなってやらなくなる。倫理を学ぶからだ。だがその子供が倫理を学ぶことを拒み、子供で居ることを望んだら? その子供は何時まで真っ白なまま。善悪の基準のないまま、また蟻を潰すだろう」

「.......大家さん」

「今の嬢ちゃんはそんな危うさがある。過去に執着するあまり、成長を止めてしまった」

思わず目を見開く。過去に固執している? 霞ませて来たはずの思い出が重しになっている.......? いや.......そうやって保持している時点で.......。

大家さんはまだ悩んでいるようだった。今こうして話している事は果たして正しいのかどうか。それを必死に考えているようだった。それからもう一度頭を抱えた。気を落ち着ける為にまた煙管に口を付ける。大きく呼吸して、一直線に煙を吹き出した。

回りくどいな。と、彼は苦笑いの後に、大変穏やかな顔で此方を見た。

「嬢ちゃん。過去に固執して、前を向けないのは嫌かい?」

「そんなの当たり前です!!」

まだ齢十五歳。過去の思い出は綺麗に霞ませてきたものばかりだ。その一つ一つがどれも大切なもの。でもその過去に固執するあまり、前を向けないのは嫌だ。

「じゃ、嬢ちゃん。力の制御方法を学ばねばな。これが願わくば澪月との新たな繋がりになればいい」

そう言って、にいっと口角を上げて笑った。

「神仕え、見習い」

この元ネタ、私の実体験です。アリじゃないんですけど。

まぁ、色々ありまして、ある虫だけはどうにも躊躇ってしまうんですよね。始末するの。

凄い差別的なんですけど、蚊とか黒光りするあれとかは躊躇いなくやります。

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