神仕え、見習い
舞楽様と出会った翌日は休日だった。アパートのドアを開けて、また澪月の処へ行こうとした矢先、大家さんと出会った。昨日と同様に煙管を吹かし、もの憂い気な顔で庭先の植物を眺めていた。何だか考え事をしていそうだった。そんな状態の彼に声を掛けるのも気遣いがない。静かにその場を後にしようと思ったその時だった。不意にきょろりとくすんだ黄色の双眸が此方を向く。固まる私、見つめる大家さん。その第三者から見える光景は数秒に渡って続けられた。
どうしよう。もしかして最初からバレていたかな? とゆか、考え事の邪魔をしてしまったかな?
うわー。こういう時どうしよう。そう内心一人あたふたしていると、大家さんがゆっくりと此方に向かって歩いて来た。それから初めて会った時と同じように、ぽふっと骨ばった手を頭に置いた。
「嬢ちゃん、成長したいか?」
「? それはどういう?」
突然の問いかけに思わず首を傾けた。話の脈絡が全く読めない。身長はないが、 一応春から高校生の身。まだまだ世間から見ては幼いとは言え、流石に小学生よりかは成長している。身長以外は!! だから今の問いかけが全く分からない。私、成長していないのかな?
「断言しよう。これから先も身長は伸びない。その圧倒的なまでの無垢さで、怒り、悲しみの感情を排除しにかかる。知ることが無いから成長もない」
悲しげな吐息を彼は漏らした。それから煙管を持った手で、軽く米神を小突いた。どうやって言葉を纏めて行くかを考えているようだった。
大家さんの言っている事がよく分からない。分かったのは、このままだと永遠にそのままだと言うこと。たったそれだけ。
小学生の時から情緒もそんなに変わってません。
良かったのは、スレてなかった所。
真っ当に、無垢でいい子なままと言うこと。
成長したら、思慮深い大人になってくれそうですね。