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再度巡らそうとした時だった。舞楽様が琵琶を木の幹に預け、此方に歩いて来た。唖然とする僕を慰めるように頬を撫でると、言い聞かせるように呟いた。
「お前、大分人間に近づいたな」
「..............もう..............お使いでは無くなってしまうのでしょうか..............」
僕は.......舞楽様のお使いで。お使いの仕事を熟せないなら、要らない存在で.......。焦って呼吸が荒くなる。もう此処には居られないのかな..............。時は夕暮れ時。夕陽が湖を照らし。水を橙に染め上げる。僕の力もこれに習って衰えて行くのだろうか。
半泣きになった僕を慰めるように、舞楽様をするっと腰周りに腕を回した。顔を上げないのを見越し、自分の肩口に無理矢理額を押し付けた。
「ん、お前が人間でいたいというなら、それでも良いんだ。どんな姿になったって、思いが健在ならば、私のお使いだ」
赤子でもあやす様に、背中に回された掌を一定の調子で叩く。そうされると、少しだけ気持ちが落ち着いて来た。もう大丈夫である事を伝えるため、肩口から顔を離す。顔を見合わせると、慈愛に満ちた顔。
「まぁ、それはそれとして、大切な思い出を人間になって霞ませるのと、お使いのまま保持するの、どっちが良い?」
「お使いのままが良いです」
大真面目に返答すると、 様は吹き出したように笑い出した。それからまた頭を撫で、励ますように背を叩いた。
「ん、そっか。それならそれで考えねばな」
もう!! そんな言い方されたら絶対、澪月は
「お使いになります!!」
って返しますよ!!
という気分で書いてました。
人の為に何処までも自分を犠牲に出来るのは、ある意味美徳かも知れないです。
でも、された側は凄く傷つくんです。自分のせいで相手を傷つけた事になるんで。
もっと何でも話して欲しいと思います。