思い出の品
「すみません。何分久しぶりな再開なもので」
澪月は目を丸くして、大家さんの方を見る。時間が止まる。持ち上げられた私、腕を掲げる 、そして煙管を吹かす大家さん。固まった三者三様。その中で最初に動いたのは だった。ゆっくりと私の体を地面に下ろし、へにゃっとした笑顔を浮かべる。罰が悪そうに頬を書くと、はにかんだように大家さんを見る。大家さんは吸い上げた煙をゆっくり吐き出して、鷹揚に瞬きをした。
「ん、そうか。邪魔なら帰るが?」
「いえ、そんな事は」
澪月は慌てたように袂を掴む。一生懸命被りを振って、引き止めている。その姿が今の青年の姿と掛け離れていて、思わず笑みが零れてしまう。純粋で誠実。とっても優しい男の子。それが澪月だ。
彼の引き留めが通じたのか、大家さんは踵を返すことなくもう一度煙管に口を付けた。澪月はそれを穏やかな表情で見詰めた後、何か思い付いたように、ゴソゴソとポケットの中を漁り始めた。
「そうだ。紡、鏡。持ってる?」
「勿論!! ずっと肌身離さず持ってるよ」
「勿論僕も」
彼が出したのは楕円形の鏡。裏面は赤銅で緻密な細工が施してある。私が と別れる時に貰ったものだ。思い出の品として日々大切にしている。
本当、成長しちゃったな.......。澪月。
人間的には悪いことじゃ無いんですけど、澪月はまた別の事情を抱えてるので。