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悪魔の子  作者: わざお
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第20話 裏切り

エゴン班のみんなは憲兵の車で軍事裁判所に移動していた。憲兵が常に監視していて、私語は禁止された。軍事裁判所に到着すると、エゴン班は法廷の端の席に一塊に座らされた。となりには中小貴族と思しき男性数人と司教一人が座っていた。そして、憲兵に連れられてやつれた顔をしたエゴンが法廷の中に入って来る。

「じゃあ再開しよう。参考人に来てもらった。早速話を聞いてみよう。」

「裁判長、発言してもよろしいでしょうか。」

「どうぞ。」

フランチェスコ・デアンジェリス司教が話始める。

「私は、やっぱり裏切り者は許せないのですが、悪魔との交渉できるなら、エゴン・クリーガーを処刑はしない方が無難だと思っています。」

「司教様は悪魔と講和を締結したいということですか?」

「いいえ。しかし空中戦艦が建造されるまでは、交渉して時間を稼ぐことが必要だと思っています。」

「なるほど。他の参考人の意見も聞こう。発言したければ手を挙げて欲しい。」

エゴン班のみんなは必死に手を挙げた。

「ブライアン・コリン少将。」

「はい、私も同じ意見です。実際に私の師団も戦闘の継続が困難になりつつあります。封土を失って兵力を補充できなくなっているので。」

「なるほど、次、ロビン・ネヴィル大佐。」

「私も同じ意見です。私が統治していたアンデリングという街は士気が低い兵士と農奴、いや第三身分市民が逃げ出したことであっけなく陥落しました。軍が体たらくな状況では戦うのは難しいです。」

「おい貴様!」

「エゴン・クリーガー大尉、君には発言権はない。被告人を擁護する意見はこんなところか。」

「待って下さい!俺たちにも発言させて下さい!」

「そうですよ!これはあまりにもひど過ぎます!」

「参考人の発言はもう終わりだが。」

「エゴン・クリーガー大尉の戦友として、発言させて下さい!」

フィンリーがスミス裁判長に願い出た。

「いいだろう。ではアレクサンダー・ベルガー軍曹。発言を許可する。」

「え…俺?」

「別に問題ないだろう。彼も戦友の一人だろう。」

アレックスは困惑しつつ、その場で立って話し始めた。

「えっと…とりあえず、エゴンは裏切り者ではないです。俺は信じています。」

「それだけかね?何か根拠はないのか?」

「えっと…」

「それだけか。ならばこれで裁判を終わりにする。」

「ちょっと待って下さい!まだ言いたいことがあります!」

「おい!おかしいだろ!」

エゴンもエゴン班のみんなも反発した。

「裁判を終わらせることに賛成の方はご起立願います。」

法廷にいた貴族や司教は全員起立した。エゴンは憲兵に押さえつけられながら必死に訴える。

「おい!ふざけるな!あなたたちはそんなに偉いのか?!何でそんな強引なことができるんだ!」

「は?」

貴族たちが見下すようにエゴンを睨んだ。

「俺偉ーいもーん!」

「「www」」

とある貴族がそう答え、法廷内は笑いに包まれた。エゴンたちを除いて。

「賛成多数によって裁判を終わりにする。審議の内容を勘案して、判決を言い渡す。」

強引に判決が下されそうになった時、エルザが立ち上がって発言した。

「あの計画について!あの計画について意見があります!」

「エルザ・ベフトォン中尉、発言を控えろ。」

「いいのかな~あの計画が吹き飛ぶんだけどな~」

エルザは不敵な笑みを浮かべた。そして貴族や司教は動揺した。

「どういうことだ?」

「エゴン・クリーガーが処刑された場合、若しくは処刑されたとみなせる状況になった場合、あの計画を世間に公開するように命令している人物がいる。」

貴族や司教は唖然とした。

「おい!あいつも裏切り者だぞ!」

「いいんですか?私を処刑しても公開するように命令していますよ。」

「どうせはったりだろ!」

「そうだ!適当なことを言うな!」

「ご自由にして頂いて結構です。あなた方に命を懸ける覚悟があるのであれば!」

「いや…」

「…」

エゴンも含めてエルザ以外のエゴン班のみんなには何のことだかわからなかったが、貴族や司教たちの慌てている様子を見て、まだ希望があることを確信した。

「わかった。判決を言い渡すのは後日にしよう。エゴン・クリーガー大尉を連れて行ってくれ。参考人も帰ってよろしい。」

「エゴンは助かったのか?」

「わからない。とりあえず、エルザを信じるしかない。」

「早く外に出て下さい。ホテルに戻りますよ。」

エゴン班のみんなは憲兵に連れて行かれてホテルに戻った。エルザを除いて。スミス裁判長は裁判の内容をすぐにハリー・チェンバレン大将に報告した。そして宮殿でエルザと面会した。

「エルザ・ベフトォン中尉、君の狙いは何だ?君のやっていることは、国王陛下への裏切りに等しい。あの計画が知れ渡れば、この国は滅びる。誰も助かることなく。」

「私は国王陛下に忠誠を誓っています。だからこそ、国を分断しかねないエゴンの処刑は必ず阻止します。今革命が起きれば、この国は終わります。」

「エゴン・クリーガーの存在そのものが革命の火種になるとは思わないのか?」

「存在そのものより処刑が革命の引き金になる可能性が高いです。既に彼は神格化されていますから。」

「ならばエゴン・クリーガーを処刑するように求めるデモが既に起きていることはどうやって説明できるのかね?」

「それはあなたの方が詳しく説明できるのでは?」

スミス裁判長はエルザから目をそらしてゆっくりと顔に手を当てた。

「まあ、私もあなたに同情しますよ。エゴンに権力を持たせれば、何をされるかわかりませんからね。」

その一言にスミス裁判長は反応した。

「エゴン・クリーガーを殺さなければ、君は我々に協力してくれるのかね?」

「まあ、否定はしませんね。」

その頃、ハリー・チェンバレン大将はヴィマナ川要塞群周辺地域の混乱状況に対応しつつ、“あの計画”をエルザから知らされた人物を探そうとしていた。

「状況は最悪だな。デモ隊に包囲されるし、面倒な仕事は増えるし。」

「パットンを処分しただけでこんなことになるとは思いませんでした。」

軍団合同司令部の周囲は市民義勇兵や一般市民らによって形成されたデモ隊に包囲されていた。

「私たちの希望の星を返せ!!」

「俺らの将軍を返せ!」

軍団合同司令部にはヘリコプターで憲兵が増派されて、警備が強化されていた。デモ隊もうかつに手を出せない状況だった。

「それで、第一師団の士官には尋問できたか?」

「それが、全くできていません。師団長の命令がない限り尋問は受けないと言って拒否しています。治安維持局が士官を逮捕しようとしましたが、兵士や民衆に妨害されて身動きが取れない状況です。恐らく、小さな土星作戦の時の失敗が原因かと…」

「そうか。パットンにも聞いたか?」

「はい。しかし、パットンにはあの計画を知られてはまずいですので、尋問がなかなか難しいみたいです。」

「まあそうだよな。」

「そもそも、エルザ・ベフトォン中尉があの計画を暴露する用意があるというのは本当なのですか?私は少し怪しく感じます。」

「たしかにそうだが、リスクがある以上、無視する訳にはいかない。軍人ならばあらゆる可能性を想定しなければならない。」

「はい。」

「それにしても、ここに来なければ気づかなかったな。我々が嫌われていることに。」

軍団合同司令部の外からはデモ隊の声が聞こえてくる。

「パットン少将を返せ!」

「平和ボケ部隊は帰れ!」

「腰抜け野郎は帰れ!」

ハリー・チェンバレン大将とバルデマー・ロイス少将はデモを鎮圧することも、“あの計画”を知っているエルザから命令を受けた人物の発見もできないでいた。

「我々には軍人としての意識が欠けていました。それがこの状況を招きました。反省しないといけません。」

軍事裁判の判決が言い渡されるまで数日かかった。その間、エルザは貴族たちと交渉し、エゴン班のみんなやパットン少将は監視されながら生活した。市民義勇兵や第一師団の兵士、武闘派貴族たちはエゴンを信じて王政府の無茶苦茶なやり方に抗議し続けた。一方、エゴンは憲兵の監視下で独房に入れられていた。

「殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる!」

憲兵は無表情でエゴンの独房の前に立ち続けていた。


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