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悪魔の子  作者: わざお
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第19話 悪魔の証明

「我々、近衛兵団憲兵師団は、国王陛下の命によって、エゴン・クリーガー大尉を国家反逆罪で逮捕する。連れて行け。」

 「は?どういうことだ!おい!何やっているんだよ!」

 クルトが生きていることがわかった日の翌日の早朝、憲兵が押しかけてきた。エゴンは大勢の憲兵に押さえつけられた。

 「おい!ふざけんじゃねーぞ!」

 アレックスが怒りながら数人の憲兵をなぎ倒す。

 「それ以上暴れると反逆行為とみなしてその場で射殺する。」

 「やれるもんならやってみろよ!」

 「アレックス、落ち着いて!」

 「エルザ、おかしいだろ!何でエゴンが裏切り者なんだよ!」

 「ご安心下さい。エゴン・クリーガー大尉と共に戦ってきた皆さまは軍事裁判の参考人として招致いたします。そこで自由に弁護してあげて下さい。では王都でまた合いましょう。」

 アレックスは不満げに拳を下し、エゴンは逮捕された。エゴン班のみんなも武装解除させられ、エゴンとは別の輸送機に乗せられ王都に連れて行かれた。そしてとあるホテルに案内された。

 「軍事裁判で参考人が招致されるまで、こちらでお休みください。」

 そのホテルは、重武装の近衛兵団の兵士が厳重に警備していた。エゴン班の皆はホテルの広いスイートルームに連れていかれた。

 「エゴンどうなるのかな…」

 「俺が助ける!絶対に!」

 「俺たちは監禁されているんだぞ。できることなんてないだろ。」

 「…」

 「私もそう思う。こんな状況じゃあ、私達も殺されかねないね。」

 「くっそおおおお!!!」

 アレックスはドアに体当たりして何とか部屋を脱出しようとしていた。

 一方、エゴンは手錠を付けられて、軍事裁判の法廷に連れて行かれた。エゴンは法廷の中央に立たされる。両脇には銃剣がついた自動小銃を持った憲兵が立っていた。正面の高い席には軍事裁判の裁判長を務める憲兵師団の師団長、オリバー・スミス少将が座った。法廷にはたくさんの人が集まり、貴族、悪魔学者、サルバトール教ユニバーサル派の司教、日刊ユニバーサル新聞の記者が法廷を埋め尽くした。そしてスミス裁判長が話し始める。

 「じゃあ始めようか。エゴン・クリーガー大尉。君は公のために命を捧げると誓った兵士で違わないかい?」

 「はい。」

 「異例の事態だ。この裁判は通常の法が適用されない軍事裁判とする。決定権は全て私に委ねられている。つまり君は死ぬか生きるか、私が決めることになる。異論はあるかね?」

 「あっても認めねぇだろ。」

 「察しが良くて助かる。エゴン・クリーガー大尉が弟の元訓練兵、クルト・クリーガーと結託して人類を裏切ったとして国家反逆罪で起訴されている。そしてこれを有力にならしめる根拠が提示されている。原告のハリー・チェンバレン大将の代理人、アーサー・チェンバレン中将に説明してもらおう。」

 「はい。私は、クリーガー兄弟が前線で連絡を取って機密情報を悪魔側に流し、人類滅亡後も協力者として悪魔と共存することを模索していたと考えます。」

「ちょっと待って下さい!」

 「君には発言権はない。勝手な発言は裁判の結果に影響が出るぞ。」

 「ちっ…」

「続けます。根拠は三つあります。まず、クルト・クリーガー及びエゴン・クリーガー大尉の父親の下級悪魔学者、ミヒャエル・クリーガーは、悪魔学者の中で唯一悪魔の言語の研究を行っていました。これは悪魔と取引するための研究であったと断言できます。そしてこの研究や計画が息子たちに引き継がれている可能性は極めて高いです。第二に、クルト・クリーガーが悪魔側に裏切った時期とみられる第四軍団第十三陸軍訓練学校での戦い以降、本能的に戦っていた悪魔がそれ以前より統制がとれた行動をするようになりました。エゴン・クリーガー大尉がクルト・クリーガーを通じて悪魔に何らかの助言をした可能性が高いです。第三に、エゴン・クリーガー大尉は以前から反王政的な言動がありました。これは我々人類を混乱させ、悪魔に有利な状況を作ろうとしていると断定できます。以上より、エゴン・クリーガー大尉を人類への裏切り者とみなし、死刑に処すべきと考えます。以上です。」

 「なるほど。エゴン・クリーガー大尉、何か反論はあるかね?」

 「はい。そもそもなんですけど、この裁判はおかしいです。何で俺には弁護人がいないんですか?」

 「それに関しては、君の仲間を参考人として呼ぶ。問題ないだろう。」

 「だったら今呼んでくださいよ!」

 「いいだろう、近いうちに呼ぶ。それだけかね?」

 「いえ、まだあります。そもそも俺は今までの戦闘で悪魔に打撃を与えてきました。実際、チャスタイズ作戦も小さな土星作戦も俺が考案して成功しました。こんなに敵にダメージを与えて敵に内通しているなんておかしな話じゃないですか!」

 「どのみち悪魔は無限に出てくる。いくらダメージを与えようと無限に敵がいるのだから、君の活躍は敵にとって痛くないはずだ。裏切りをカモフラージュする偽装工作だろ。」

 アーサー・チェンバレン中将が反論した。それに対してエゴンも父親から教わった悪魔の知識で反論する。

 「それは違います!悪魔は無限にはいません!」

 「君の父親の研究に基づけばな。だがそれは通説ではない。悪魔は化け物であり、無限に増殖できる。王政府の公式見解だ!」

 「他にあるか?」

 「傍受した無線の記録は示さないんですか?」

 「諸事情があって無理だ。他にないか?さっさと、君が裏切り者ではないことを証明してくれないか。」

 「…」

 「ならば君の死k…」

 「俺が裏切り者でない証明ができないように例えばアーサー・チェンバレン中将!あなたが裏切り者ではない証明も不可能です。」

 「無礼を言うな!」

 「くそ第三身分市民め!」

 傍聴席の貴族や司教が野次を飛ばす。

 「そもそも、それを言えば全ての人に裏切り者である可能性があるじゃないですか。例えばチェンバレン中将が裏切り者でないと証明するためには、あなたの行動全てを明らかにする必要があります。」

 「私はずっと王都にいる。そもそも悪魔と接触しようがない。」

 「王都にいるのは影武者ではないことを、王都にいながら悪魔と通信できる新技術が存在しないことを、あなたが悪魔の言語を喋れないことをどうやって証明しますか?あなたの所有物全てを捜査しても、通信機器を他の場所に隠している可能性、捜査員を買収している可能性、全部を完全に否定することは不可能です。」

 「そんな屁理屈のような根拠は通用しない。」

 「あなたの主張も同じようなものですよね。」

 アーサー・チェンバレン中将はエゴンを睨みつけた。とてもいら立っていた。エゴンも睨み返す。

 「わかった。一旦休憩にしよう。」

 裁判長がそう言うと、エゴンは憲兵に独房に連れて行かれた。

 その頃、ハリー・チェンバレン大将とバルデマー・ロイス少将はヴィマナ川要塞群の近くの軍団合同司令部にいた。近衛兵団の兵士を率いて、司令部の建物を全て占拠した。チェンバレン大将はパットン少将に会うために司令官室に入る。

 「パットン少将、お久しぶりです。」

 パットン少将は覚悟を決めたような表情だった。

 「チェンバレン大将、お久しぶりです。」

 「小さな土星作戦は見事に成功しましたね。お疲れ様です。」

 「いえ。」

 「やはり、司令官が自ら前線に行って指揮することが重要みたいですね。私はあなたから学びました。ということで、私が第四軍団と第十三軍団の合同部隊を指揮することにしました。」

 「承知いたしました。」

 「しかし、今まで戦果を挙げられてきたパットン少将には、是非私を補佐していただきたいものです。」

 「承知いたしました。」

 「野戦陣地の数百倍は快適なホテルを用意しています。これからは是非、そこでお休みになっていただきたいのです。無論、戦いが始まれば戦場にお越しいただきますが。」

 「ご厚意に感謝いたしますが、結構です。」

 「しかし、そうでなければ近衛兵団の兵士があなたを警護できません。あなたは私の大事な参謀ですから、身の危険がない場所で寝ていただきたいのです。ご理解しただけませんか?」

 その時、隣の部屋から銃声と兵士の声が聞こえた。CQBをしているような音だった。

 「クリア!」

 「クリア!」

 「クリア!」

 「ルームクリア!」

 パットン少将は一度目を閉じた。

 「わかりました。」

 「察しが良くて助かります。では憲兵がホテルまでお連れいたします。」

 パットン少将は憲兵に連れて行かれ、軍団合同司令部の司令官室を離れる。代わりにバルデマー・ロイス少将が入ってきた。

 「どうだったか?」

 「第二師団の士官は私の忠誠を誓っているようです。」

 「それは良かった。」

 「残念ながら、クリス・ネヴィルとやら元貴族が、低身分の兵から支持されていて厄介ですが。」

 「いずれ武闘派貴族は一掃される。そうすれば、革命のリスクが減って、あの計画は絶対に妨害されなくなる。」

 「そうですね。」

 「あとは、いかにエゴン・クリーガーを始末するかだな。」

 「はい。」

 「それと、この戦域の指揮は全て私が執ることを皆に伝えないと。」


悪魔の子プラスアルファ!

・サルバトール教

ヴィマナ王国の国教である。一神教の宗教で、神の子であるヴィマナという人物が残した教えを守る宗教である。信徒には信仰、礼拝、弱者救済、弱者防衛という四つの教義を守ることが求められる。


・ユニバーサル派

聖書の解釈は人によって様々であり、解釈の違いによって宗派が分かれる。ユニバーサル派はサルバトール教の中の二つの主要な宗派の内の一つである。ヴィマナ王国の中では、ユニバーサル派が本流とされている。ちなみに、他の宗派の信徒は基本的に存在が認められず、見つかった場合はすぐに処刑される。しかし、ヴィマナ王国の政治状況が不安定な場合などは心得違いの者として見過ごされることもある。


・近衛兵団

国王直属の部隊である。国王の直轄領から徴兵した兵士と第十三軍団から提供された兵士で構成された部隊である。総兵力は6万人弱である。


・憲兵師団

近衛兵団傘下の部隊である。師団長以上の貴族、若しくは重要人物に対する軍事裁判や、軍内部の反王政勢力の取り締まりを行う。また、王政府の特殊任務を遂行する部隊でもある。


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