第10話 将軍の仕事 ―チャスタイズ作戦②―
1個機甲中隊、レオパルト2A6戦車14両が渡河している最中の大型ケルベロスの迎撃に向かった。
「目標、正面の敵胸部、徹甲弾、中隊集中、指命!」
「レオパルト各車、射撃開始!」
戦車砲の砲弾は上陸してくる大型ケルべロスの表面を貫通、コアにダメージを与えて大型ケルベロスを次々に撃破した。
「戦闘報告書です。現在の戦況に関しては、全てそちらに記載されてあります。」
師団司令部でパットン少将は戦闘報告書に目を通し始めた。
「大変厳しい状況です。多くの部隊が撤退できずに悪魔に包囲殲滅されています。」
「ひとまず、工兵に全ての橋を爆破する用意をするよう命じてくれ。」
「了解!」
パットン少将は側近を部屋から出した。
「またか…今日もまた、部下を何人殺すか決めなければならない。」
静かな部屋に砲撃の爆音と巨人の投石の音が響き、床は少し揺れて、天井からは白い粉が落ちてくる。パットン少将は昔を思い出した。
約9年前の出来事である。パットン少将はある川を巡る攻防戦で自分の長男、第101特殊中隊指揮官、ロバート・パットン大尉を失っていた。
「孤立した部隊の救出にこだわって、橋の爆破を許可しなかった結果、橋を奪われた。俺の判断ミスだ。責任は俺がとる。撤退するぞ。無駄死にはするな。」
「おーい、父さん。日依っている場合じゃないよ。俺たちなら、敵に奪われた橋を爆破できるよ。一応、爆薬は設置してあるからこのロケ弾で信管を刺激して大爆破だよ。」
「どうやって射程圏内に入るんだ!?死にに行くようなものだぞ、わかっているのか!」
「父さんは他の貴族から嫌われている。ここでやらかしたら、御家を潰されかねない。戦況も凄く悪化する。俺を信じてくれよ。高速ボートで接近する。悪魔は泳ぐのは得意じゃないし、操縦手は手練れのデイビッド・グリフィン少尉、絶対上手く行くから。」
「…」
「父さん!しっかりしろよ!」
ロバートは声を荒げた。
「お前を信じる。帰ってこいよ。」
「了解!」
ロバートはグリフィン少尉とジープに乗って悪魔の支配地域を迂回しながらボートがある場所に向かった。仲間は川岸にある地対空ミサイル部隊の陣地でロバートを待ちつつ迫りくる悪魔を迎撃した。パットン少将も自ら銃を持って戦った。
ロバートは淡々とボートに乗り込み、グリフィン少尉はボートを発進させ加速していく。
「あの橋の真ん中のあたりだ!」
「了解!任せとけ!」
ロバートは後ろを向いてロケット弾を構えた。そして、悪魔たちはロバートらが乗るボートを捉えた。小型の巨人たちがボートの左右から泳いで来てボートを破壊しようとするが、グリフィン少尉が華麗に左右にかわしていく。ドラゴンも空からボートに襲ってくる。しかし地対空ミサイルがドラゴンに命中、ドラゴンをボートに寄せ付けない。そしてボートは橋が近づいてきた。
「目標に接近!」
「了解!」
ボートはそのまま橋をくぐり抜けた。そして、
「今だ!」
ロバートはロケット弾を発射、信管付近に命中し、橋は爆破され、崩れ落ちていく。
「よっしゃああ!!」
「楽勝だったなぁ!」
川岸で悪魔と戦う仲間が見えるところまで来た。
「帰ってきたぞ!」
ロバートが叫んだ瞬間、川の中から5mぐらいの小型の巨人が3体現れ、ボートを殴って破壊した。ロバートとデイビッドは川に投げ出された。そのまま巨人たちは体を鷲掴みにし、悪魔側の対岸に向けて二人の体を放り投げた。その様子は仲間がいる場所から全て見えた。みんな何も声が出なかった。
捨てるべきものを捨てられず、最も大切なものを失った。
パットン少将は命令を下した。
「これより、2時間以内にセコンド川にかかる全ての橋の爆破を命じる。」
「しかし、師団長閣下!」
「これは命令だ!」
「まだ対岸で戦っている部隊もいます!その部隊を救ってから…」
「今爆破しろ!敵に橋を取られるぞ!こちらの被害が増えるだけだ。悪いが彼らには徹底抗戦してもらった上で死んでもらう。」
「…」
「早く爆破の用意をしろ!その後はセコンド川を渡河されないように防衛ラインを死守せよ!」
「了解!」
セコンド川の対岸で戦闘を継続している部隊は橋を爆破して撤退した。司令部の建物の屋上からパットン少将はその様子を見届けた。遠くには撤退しようと必死に悪魔と戦っている部隊が微かに見えた。パットン少将は歯を食いしばった。
「すまない…」
司令部ではひっきりなしに無線で援軍要請が来る。
「CP、こちらチャレンジャー、送れ!CP、こちらチャレンジャー、送れ!」
「チャレンジャー、こちらCP」
「代われ。」
「パットンだ。」
「師団長閣下!助けてください。我々は今包囲されています!今ならまだ間に合います!援軍をお願いします!」
「…」
「お願いです!」
「わかった。空挺部隊を援軍に向かわせる。機甲部隊を戦闘に突撃し、お前らのいる所まで向かおう。それまで砲撃で支援する。耐えてくれ。」
「ありがとうございます!よっしゃー!助かるぞ!」
「師団長閣下、なぜあんなことを…」
「何も考えるな。地雷を少しでも多くバラまけ。あと川上に機雷を運べ。」
「了解!」
川の対岸には屍の山ができていた。しかし悪魔は川に阻まれて一時的に進撃を止めた。




