教会にいたいです
「フローラさん、ちょっと厨房に残りのクッキーを取りに行ってくるわね」
「分かったわ、今度は私がお店番をするわね」
さき程、男性がクッキーを全部買ってくれたから、思った以上に早くなくなってしまったけど、今日もみんなが補充分を焼いてくれている。
そろそろ出来上がる頃だから、ルーシーが取りに行ってくれたのです。
「かごを貸してくれて、ありがとう」
さっきのカッコいいお兄さんが立ってます。
「いいえ、子供たちにごちそうするなんて、やさしいですね」
「いや、実は手伝いをしてくれた、そのお礼さ」
「まあ、そうだったんですね」
「君はこの近くに住んでるの?」
「いえ、私はこの教会に居候していますの」
「そうか、ボクはクロードと言うんだ、よくこの教会にも来るんだよ」
「私はフローラといいます」
「フローラか…また会えるといいね」
そう言って、帰って行きました。
また、会えるといいねか…
私がここに居続ければ、会えるかしら?
まだ、当分はここに居ますけどね。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「フローラちょっといいかしら?」
シスター・ガブリエルが部屋にきました。
「はい、シスター」
2人で向き合って座ると、早速シスターが口を開いた。
「あなたのご両親の事なのだけど…」
ああ、公爵家の様子をみてくれたのね。
「お母様はとても心配して、社交界からも遠ざかっておられるわ、お父様もあなたの行方を探していらっしゃるみたいね。
探す理由もあなたを見つけてどうこうする気はないようだわ」
「そうですか…」
二人とも怒ってないのかしら?
「ねぇフローラどうかしら?
あなたの今の気持ちと、ここにいることを知らせてあげては?」
「子供の安否も分からないまま過ごすのは辛いものよ」
心配させてしまったのは、謝りたい、でも連れ戻されるのは…
「大丈夫。私も一緒に手紙を送るわ」
確かにシスターの言葉は重い。
それなら、無理やり帰らないといけない事にはならないかも…
「大丈夫。
まだここにいたいあなたの気持ちは分かっているから。
それに会わせたい人もいるのよ」
「私にですか?」
「ええ、近いうちに訪ねてくると思うからその時ね」
会わせたい人って誰かしら?
でも、家を出てから出会った人はみんな好い人で素敵な思い出になった。
今度もきっと素敵な出会いになるだろう。