クロード。カッコ良かったよ
俺は昔のことを思い出していた。
「ジャンヌ凄いな。どうやったら移動しながら命中させられるんだよ。しかも木々の間をぬうようにして俺に当ててくるし」
昔、俺とジャンヌは森の中修行をしていた。俺は仰向けになりながら息も絶え絶えにジャンヌに聞く。空には木々の枝から覗く美しい青空が見えた。
「五感を全て使うんだ。視覚、触覚、聴覚、その全てを。森と一つになるイメージだな。木々の一本一本が自分の体のように感じられたら自然と当たるようになる」
「なんだそりゃ……木々と自分が一体って」俺はそばにあった木に触れた。この木と自分が一体なんてジャンヌは不思議なことを言う。
「いくぞ!」ジャンヌはまた木々を蹴って上空に登った。そして猿のように木の枝を蹴って移動する。俺も木を登り、枝を蹴って高速移動した。森のざわめき、少動物の息づかい、それらをなんとなく感じられるように意識を集中する。
一瞬俺の体が森と一体化した気がした。俺は自然と矢を放っていた! シュン! 当たる! 俺は確信した。ジャンヌめがけて吸い込まれるように矢が放たれた!
しかし、バキン! 空中で矢がぶつかった。そして、ひらひらと落ちる矢。ジャンヌも矢を放っていたのだ。なんと俺たちの放った矢は空中でぶつかった。
「よっしゃ!」俺はガッツポーズをした。遠くに満足そうなジャンヌの顔が見えた。
目の前で振り子が揺れている。俺はあの時の感覚を思い出した。少し腰を落とすと観客が静まりかえる。
背後でユイが「頑張れ」と小さな声な声で応援した。あの時と逆だ。今度は俺が俺は集中し、静かに弦を離した。
すると、矢は吸い込まれるように的に命中した!
「当たった!」誰かが言った。するとそれに反応したようにうおおおおお! と観衆から大きな歓声があがる。矢は見事に的のど真ん中に当たっていた。
「お前ッ!」シドが驚いたように叫ぶ。
「すげぇ!」
「おい今の見たか? 一発で当てたぞ!」
「え? 凄い! スゴイ! スゴイ!」
「ヤバい! めちゃくちゃカッコいい!」
とこっちが恥ずかしくなるレベルの歓声があがった。俺はそれに照れたように応える。
「お兄ちゃん凄いね! これを一発で当てられるなんて今まで誰もいなかったよ! 弓の名手なんだね」店主がそう言って俺を褒めた。
「昔これによく似た練習をしてて……」
「これと似た? 振り子の?」
「いや、森の中で練習してたんです。友達と弓の当て合いっこをしてて」
「へー凄いねぇ。昔のエルフみたいだ」
俺は頭を掻いた。
「皆さん! 的を射止めた英雄に拍手を!」
店主がそう言うと観客から大きな拍手が起こった。シドは終始おもしろくなさそうにこちらを見ている。
「ではこちら賞金の20万ゴールドと……」店主は袋に詰まった大量の金貨を渡した。俺はそれを受け取ったがあまりに重く落としそうになる。
「おっと大丈夫かい? あと景品はこの短剣。まどろみの短剣だよ」革の鞘に包まれた短剣が渡された。
「切りつけた敵を強制的に眠らせる魔法がエンチャントされてる。まぁ強いモンスターにはきき辛いが……悪用すんなよあんちゃん!」店主はそう言って俺の背中を叩いた。
「ありがとう」俺はそう言ってクランのメンバーのところに行く。
「お前結構やるなぁ……」複雑そうに賞金を眺めるカシム。
「20万ゴールドか……一気に大金持ちだなお前。俺達に奢るよな? 美味い飯奢るよな?」サムソンが興奮してそう言う。
するとユイが近づいてきて俺の耳のそばに口を持ってきてささやいた。
「カッコ良かったよ」
ユイはそう言うと恥ずかしそうに思わず下を見る。それを見て俺も赤面した。
「えーどうした? どうした? 何言ったの? ユイちゃん?」とエリザベスが意地悪く煽った。シドは終始俺を睨んでいる。
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