冬至の祭り
そう言って無造作にシドはギルドのカウンターに袋をポイっと投げた。その袋の中にはトロールの耳と鼻が入っていた。
「これは……えぇと……うわぁ……トロールの耳と鼻ですね」
受付のお姉さんは心底嫌そうな顔でその袋を開けて中身を見ている。
「トロール一匹討伐につき10万ゴールドとなります」
トレーに金貨を乗せて受付は差し出した。シドはそれを無造作に受け取った。
「どーも」
「トロールってなかなか討伐するの難しいんですよね。全身が脂肪に包まれてるので魔法も効きづらいし。口の奥が弱点なんですよねー。そこ以外全然効かないんですよね。実は」と受付の女の子がそう言った。
「あぁ? そうなの?」とシドがどうでも良さそうに返す。
シドはギルドを出るとゴールドの分配を始めた。「おいお宝を分けるぞ」シドはそう言った。
「まずエリザベスな。一番の活躍はお前だ。ほら2万ゴールド」シドはエリザベスに1万ゴールド金貨を二枚渡した。喜ぶエリザベス。
「次にカシムお前も良くやってくれたが……トロールの住処で1万ゴールドほど懐にいれたな。ほら1万ゴールドだ」照れくさそうにカシムが頭を掻いた。
「サムソンも大変だったな。2万ゴールド」シドはサムソンに渡す。
「ユイの回復魔法が無かったらパーティーはヤバかった。2万」シドはユイにゴールドを渡した。
「クロードお前は……よくやってくれた」そう言ってシドはなにも持たない手で俺と握手をする。
「え? ちょっとまってくれよ。俺の取り分は?」俺が慌てて言うとまたパーティーが笑い出した。
シドは笑って「嘘だって。冗談だって。ほら1万ゴールド金貨2枚な。次からもお荷物なら減らしていくぞ」そう言ってシドは俺に2万ゴールド渡した。俺は少しだけ安心する。
「シドやっさしー」エリザベスはそう言ってシドを褒め腕を絡める。
「じゃあ宿舎に戻るか。今日の仕事は終わりだ」
シドがそう言うと全員宿舎の方に戻っていく。
目の前でサムソンとカシムが雑談している。
「しかし上手えよなぁ。シドって自然な流れで自分は3万ゴールドだもんな」
俺は宿舎の自分の部屋に戻ると服を脱いで上半身裸になった。ボサボサになっていた髪を自分で切り揃えた。
そして丸坊主になった自分を見た。鏡に向かって俺は言った。
「ちゃんとメンバーと上手いことやらないとな」
そうだ。俺には親がいた。その親が王宮ギルド所属のクラン入りを熱望していた。必ず耐えてみせる。上手いことやらなくっちゃ。そんなことを考えていた。
俺は服を脱ぎ浴槽にお湯を貯め体を洗った。体を洗ったあと俺は新しい服に着替えた。するとドアからノックが鳴った。
「おいクロード飯食いに行くぞ」サムソンの声だった。サムソンは帽子をかぶり口元をバンダナで隠している。俺は部屋を出た。
「今日は冬至の祭りだからな」とシドの声がした。見るとクランメンバーが揃っていた。
「あぁ今いくよ」俺はメンバーと一緒に外に出た。
街は冬至の祭りということもあって多くの人がいた。俺たちは人混みの中をかき分けて進んだ。ふと見ると多くの人が集まっているのが見えた。
「あーー失敗した!」多くの人の笑い声が聞こえてくる。
「寄っていこうぜ」カシムがメンバーにそう告げた。俺たちはその集まりを見た。するとそこには弓矢での催し物が開かれていた。
「さぁ次はそこの君! ちゃんと的に当てられるように頑張ってね。今から振り子を動かすから振り子に邪魔されないように的に当てるんだよ」
子供が台に乗りおもちゃの弓を持ち的を狙っている。グイーーン。グイーーン。屋台の親父がハンドルを回すと的の手前にある数個の振り子がゆっくりと動き始めた。
それは的の手前の一つ一つの振り子が別々のタイミングで動き、矢が当たるのを邪魔する仕組みになっていた。
カツン! 「あーーもう少しだったのに」子供が放った矢は振り子に当たって落ちた。失敗のようだ。
「惜しい! もう少しだったね! はい残念賞の飴だよ」屋台の親父は子供に飴を渡した。
「へーー面白そうだな。カシムお前あぁいうの得意だろ」
「まぁな、でも子供の遊びだからなぁ」
屋台の店主が叫んだ。
「ただいま50回連続で失敗中! そろそろ的に当てていってよぉ。当たったら豪華景品だよ。なんと20万ゴールド! そして景品は遺跡に眠ってた伝説のアーティファクトだよ! ささ、大人の方でも大歓迎!」
観客から歓声が上がった。
「うお景品豪華じゃん。マジか」とシドが言う。
「カシムやりなよ。あたし美味しいものが食べたーい」とエリザベスが笑いながら言った。
「しゃーねぇーなぁ。ま楽勝だと思うけど、ガキどもにカッコいいとこ見せてやるか」カシムがそう言うとエリザベスが胸の前で小さく拍手した。
「大人の方は一回3000ゴールドです。はいどうぞ。的に当てたら20万ゴールドね! お兄ちゃん頑張ってよ」店主はそう言っておもちゃの弓と矢を渡した。
「こんなお遊びで20万ゴールドかよ。遠慮なく狙いにいくわ。ゴメン親父俺に当たったのが運のツキだったな」と言うとカシムは矢をつがえた。
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