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コカトリスのヒナをめぐって

コカトリスのヒナは人間の片手ぐらいの大きさで俺が手を差し伸べると小さなクチバシで突っついてきた。


「いて! いて!」俺は思わず笑みがこぼれる。このヒナは恐らくこのままでは飢え死にしてしまう。


大学で学んだがこの時期のヒナは親鳥に餌を与えてもらわないと生きていけない。


俺は荷物から乾燥した干し肉を千切った。そして、柔らかくしてから食べさせようとする。


するとそのヒナは俺の干し肉を食べ始めた。


「偉いな。ほらおいで。荷物の中に入って。ここにいると飢え死にしちゃうよ」


俺はコカトリスのヒナを両手で掴み荷物袋の中にそっと入れる。


「もーー早く行こうよーー。ここ凄く臭いからぁ」


エリーのヒステリックな声が聞こえてきた。


「おい! そろそろ行くぞ! 仲間のトロールがやってくるかもしれねぇ!」


シドが大声で指示する。俺たちはそれに従ってトロールのねぐらを離れた。



外はまだ雨が降り続いている。

「近くに洞窟がある。雨宿りするぞ」俺たちは洞穴に入り休むことにした。



「やだーー。ずぶ濡れじゃん。もう気持ち悪いって!」エリーがヒステリックに叫んだ。



「おい! クロード焚き火だ! 全員濡れてるだろうが! 早くしろ!」大声でシドが怒鳴る。


「あ、はい!」俺は洞窟の入り口近くの濡れた小枝を拾いそれを持ってきて一箇所に集めた。


燃えやすい布を持ちそれを火種にし、指をパチン! と鳴らして布に火をつけた。小さく燃え広がる火。


これを濡れた小枝のそばに置きフーー、フーーと息を吹きかけなんとか炎を出そうとする。


しかし、炎は燃え広がらずに白い煙をあげて、そのまま火は消えてしまった。


「オイオイオイオイオイ!! なにやってんだ! さっきから! まだ火がつかねーのかよ! 早くしろよ! 早く!」シドが手を叩きながらせかす。


「あ、あの、木が乾燥してなくて……もう少しやれば……」


「もういいよ。使えねーなぁ! お前さっきのトロールのアジトに戻れ。あそこに薪があっただろ。それを持ってこい」


「え? でも仲間のトロールが戻ってくるかもって……」


「タイミング的にまだ大丈夫だ。良いから早く行ってこい!」


「はい……」


俺はフードを被って雨の中飛び出す。トロールの死骸は他のモンスターに食われていた。それを尻目にトロールのねぐらに再び戻る。


「あった」


シドの言うとおり薪は大量にあった。薪を両手いっぱいに持ってそのまま飛び出すようにねぐらを出る。


俺は薪をかついで洞窟に戻った。


「おう。死んでなかったか」


シドがそう言うとギルドのメンバーがギャハハハ! と、下品に笑った。


俺はヘラヘラと笑ってその場を誤魔化す。俺はすぐさま薪に火をつけた。燃え広がる炎。俺たちはそこで休憩することにした。メンバーは雑談を始める。


「酒場に新しい子が入ってきたらしいな。知ってるかお前」


「あの子体つきがメチャクチャエロいよなぁ」


「この前行ったカジノでさぁ。すぐにヤレそうな女がいてさぁ。絶対あいつ押せばすぐ落ちるよ」


「そうだよなぁ。あの女絶対エロいって」


「もうヤダーー私達いるじゃん。ねぇユイ?」


ユイと呼ばれた回復術士はコクリとうなずいた。


こいつらの雑談内容は大体こんな感じだ。ギャンブルの話、女の話、金の話。人の悪口、陰口。俺は全くこの話題に入れずにいる。


俺はメンバーからだいぶ離れたところに座った。


そして皆から見えないようにコカトリスのヒナを袋から出して地面に置く。


ヒナは「ピヨピヨ……」と小さく鳴いた。俺はそのヒナを指先で撫でて可愛がる。


そしてまた干し肉の餌をあげた。ヒナは俺の指先から直接食べている。


大きくなるまで育ててあげないと。コカトリスがヒナのうちから人間に育てられて人間に懐いた例を何件も知っている。


本来コカトリスは頭の良いモンスターだ。そんなことを思いながら俺はヒナを撫でていた。


「え? お前それなに? なにやってんの?」俺の背後からカシムが俺に声をかけてくる。俺は驚いて手のひらにヒナを隠す。


「見せろってお前。お前それ……」カシムは俺のそばに近寄りヒナを覗きこもうとした。


「なんでもないよ……大丈夫だから……」


「おい見せろって!」カシムは俺の手を強引に引っ張りヒナを見た。


「お前それ……なにやってんだよ! オイ!」カシムは引きつったように叫んだ。メンバーの雑談が止まる。シドがゆっくりとこちらを見た。


「お前それモンスターのヒナじゃねえか!」カシムはメンバーに聞こえるように大きな声で言う。


「大丈夫だよ。ちゃんと懐くから」俺がそう言うとカシムはシドに近づきヒソヒソとこちらを見ながら話をしている。


なんだってんだ。必ずちゃんと育てるのに。あのままほったらかしにしておく訳にはいかなかった。俺の周りに嫌な空気感が広がる。


シドが俺に近づいてきて低く威圧的な声で言った。



「お前それどうするつもりだ」


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