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夜の会話

「えっ?!」

俺は以外そうな顔でミランダを見る。


「良いじゃん。私達いつ死ぬか分からないんだし。大丈夫。私彼氏いないから」ミランダがおかしそうに言った。


「あ……うん……分かるけど」完全な急展開に俺はドギマギした。緊張してるのを出さないように声を抑える。


「ごめん……体が痛くて……実はしこたま頭を打ったから頭痛もして……ごめんミランダ……そんなことしたら多分死んじゃうと思うし」


「しょうがないなぁ。いいよもう……」ミランダは言った。



「ここはどこなの?」俺は聞いた。


「ん? ここはクロードが倒れた酒場の二階だよ。あたしここに住んでるから」


「え? 住んでるってあの銀翼の大鷲ってミランダの酒場ってこと?」


「そうだよ。ここが私の店だし」


「そっかここの店主さんだったんだ。随分若かったからそう見えなかった」


「クロードはなんであんな人と冒険してるの?」ミランダが聞いてきた。


「あんな人って……みんな良い人だよ……どうしてそんなこと思うの?」


「だってユイちゃんはクロードのこと心配してたけど、他の人はクロードが血まみれで倒れてたのにほったらかしでそのまま帰っちゃったから」その光景を見てないのに、なぜかまざまざと思い浮かぶ。


「なんでなの?」とミランダが聞いてきた。


「なんでって?」


「道具みたいに扱われてるのに、なんで我慢出来るの?」俺は一瞬言葉が詰まった。


「あぁ……うん」


「可哀想……この頭だって剃られたって聞いたから」そう言って俺の頭を撫でてくる。


「ユイちゃんから全部話聞いたよ。ユイちゃんも辛いって……なんで……」俺はしばし思いつめたように沈黙した。


そして言った。


「あの……どの人間関係でもそうだと思うんだけど……多くの人が一緒に集まって、みんながみんな楽しいってのは難しいと思うんだ」と俺は言った。


「うん……」


「だから誰かが我慢しなくちゃいけない。楽しくないのに楽しいフリを。分かってないのに、分かったフリを……」


「うん……」


「全然可笑しくないのに、可笑しいフリを。共感してないのに共感してるフリをしなきゃいけない。そうやって自分を殺して、やっとみんなに受け入れてもらえる」


「うん……」


「誰かがその役割を負わなきゃいけないなら、自分が負った方が楽だって思うんだ。ただそれだけなんだよ」


「つまり、クロードはメンバーの中で我慢するのは仕方ないって思ってるの?」


「うん……そうだね」


「うん……でもそれ辛くない?」


「辛いよ…でもみんなそんなもんだろ? 誰かが我慢しなきゃ人間関係なんて上手く回らないんだからさ」


「でも、それっていつかは壊れるよ……ク誰かに我慢させれたら、いつかその人が潰れちゃうじゃん」


「潰れないように頑張るよ。それにシドだってそんな悪い人じゃない。優しいところもあるんだ。仲間思いなところも……シドだって僕がどんな思いをしてるのか分かってくれていると思うよ」


ミランダは俺の胸に頭をうずめた。


「人のこと悪く言っても良いんだよ? 愚痴を吐いても。人間ってそんなに立派な生き物じゃないから」


「ミランダはいつも愚痴とか吐くの?」俺は聞いた。


「言うよ。お店の子とかに聞いてもらったり……クロードは誰か話を聞いてもらえる人いるの?」


「ん……」俺は言葉に窮した。俺は誰に相談出来るだろうか。誰を信頼できるだろうか。俺はこんな簡単な質問にも答えられなかった。


「迷惑かけたくないから……」かろうじて俺は答えた。


「愚痴を吐くぐらいいいじゃん。それに誰かに迷惑かけていいんだよ。あんまり酷いのは駄目だけど……その時は嫌だって思うけど、後から思い出して楽しい思い出ってそんな思い出ばっかり」


どういう意味だろうか。俺には分からなかった。


「私だって店の前で喧嘩されて心底嫌だった。本当に迷惑だった」ミランダは笑った。


「迷惑な客ばっかり、でもそれでいいと思ってる。今日だって迷惑をかけられてクロードと出会うことが出来た」ミランダは起き上がり俺の額にキスをした。そして言った。


「今日のこともいつか大事な思い出になる」夜はふけていった。




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