なんとか役に立たなきゃ!
ここで俺の自己紹介をしておく。俺はこの物語の主人公だ。名前はクロード。ご覧の通りこんな扱いだ。はっきり言ってお荷物みたいになってる。だが、俺は俺の所属するクランは最高だと思っている。自分が優れていると見せつけるために、誰かを見下して馬鹿にする。そんな優秀で心優しいメンバーに囲まれて、俺は楽しく仕事をしている。
俺はキョロキョロしながら付いていく。
もう嫌だ、敵と戦いたくない。メンバーの役に立てるのだろうか。そんなことを思っていた。
俺は胸の中に黒く苦いものが生まれるのを感じる。
シドはハンドサインでメンバーに指示を出した。
メンバーはアイコンタクトで互いにうなずき合う。
緊張感が一気に高まる。
そしてカシムとユイ、エリーは森の中に潜むようにモンスターを待ち構えた。
いつのまにか俺のそばにはシドと盾役であるサムソンそして俺だけの3人になった。
「行くぞ!」サムソンとシドの二人は走り出した。
「うおおおおおおおおおおおおおお!!」
とサムソンが大声を上げ、盾をかざして突撃する。
トロールはビクッとしてサムソンを見た。
そして持っていた泥をサムソンに投げつける。
それを盾で防ぐサムソン。シドはサムソンとは少し距離を置いて手に魔力を帯びた雷のムチを召喚した!
チチチチ……と雷のムチから音がする。シドのサンダーウィップだ。
その雷のムチをトロールにふるう!
バチィ!! 激しい音がする。
「ウゴォ!」トロールは絶叫した。
そしてのけぞるように一瞬体を硬直させた。
そこに遠くから巨大な火球がトロールにぶつかって直撃する。
ドゴォン! 距離を置いて潜んでいたエリザベスの魔法だった。
土砂降りの雨の中だったが炎はまとわりつくようにトロールの体を焦がす。
「ウガギャアアア!」
と声にならない悲鳴を上げるトロール。
そこに遠くからカシムが魔力を帯びた矢を何本も放った。
ドン! ドン! 激しい衝撃音が鳴る。
その矢が当たるたびに衝撃でのけぞるトロール。
カシムの矢も強烈だった。メンバーは互いに連携し合って攻撃をしている。
俺はエリザベスから預かっている魔法の杖を両手に握りその場に立ち尽くしていた。
どうしたらいいんだ。なにか俺に出来ることは? うかつに動けばみんなの迷惑になるんじゃないか?
分からない。恐怖で体がすくんだ。俺は逃げることさえも出来ない。足がガクガク震える。俺はなにも出来ずにその場に立ち尽くしていた。
トロールは一瞬俺たちに背を向けると森に生えている大木を両手で掴む。
そして力任せに引き抜く。
ブチィィィィィ!!
木の根っこが引きちぎれる嫌な音が響いた。
「やべえぞ。距離をとれ! サムソン!」
シドがそう叫ぶと同時にトロールはその大木をシドとサムソンめがけてふるってくる!
ドゴォン! そのトロールがふるった大木はサムソンとシドにブチ当たる。吹き飛ばされる両者。
「アアアア」とうめき声をあげるシド。そして反応しなくなったサムソン。
「あ……あああ」俺は驚いたが一歩もその場を動けない!
「シド!」後ろから声がかかった。ユイだ。ユイはシドのそばに駆け寄った。そして杖を振り上げ回復魔法でシドを癒やす。
「おい! 荷物持ち! 早くポーションで回復しろ! 倒れてるだろうが!」
遠くからカシムの絶叫が聞こえた。その声にハッとした俺は急いでサムソンのところに駆けつけてポーションを振りかけようとする。
エリーとカシムはトロールに集中砲火攻撃をしていた。鳴り響く炸裂音。
「えぇと……えぇと」背中に担いでいた荷物を地面に降ろし震える手でポーションをゴソゴソと探した。
そしてポーションを取り出しキュポッっと蓋を外してサムソンにポーションを振りかける。キラキラと光り輝きサムソンを癒やすポーション。だが
「もういい! どけ!」サムソンはそう言うと俺を片手で突き飛ばし起き上がる。俺は尻餅をうった。
サムソンは再びモンスターに立ち向かっていった。気がつくとシドも回復が終わりまた雷のムチでトロールを攻撃している。
俺はホッとしたようにポーションの空き瓶を荷物に戻した。すると
「邪魔だ! どけ!」シドの怒鳴り声が響いた。と、思ったらシドの蹴りが俺の腹部に入る。ドクゥ!
「ぐおぉ……」思わずのけぞった。
「モンスターが来てんだろうが! 誰が出てこいって言った。引っ込んでろ! 役立たず!」
シドは俺にそう言った。俺はお腹を抑えてシドを見上げた。
するとそのシドの背後にトロールが迫ってきているのが見える!
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