決着!
ガイウスは思わず俺のことを応援する黒龍団の連中を見た。
ガイウスの手下がガイウスに耳打ちした。
「アニキこれ二人とも殺したらちょっとまずいっすよ。ちょっと収まりつかなくなってますよ。団の奴らが二人のこと応援し始めてます」
ガイウスは顎を触って考えた。
ヴィンセントは不思議そうに俺を見ていた。
俺は考えていた。勝負を魅せないといけない。勝負を見せて観客を盛り上げないといけない。
不十分な勝負は余計怒りを買うのが分かっていた。ただの引き分けじゃない。
拮抗した勝負からの引き分けが必要だった。そしてお互いの体力、持久力、痛みはもう限界だった。
「うおおおお!!」俺は思い切りヴィンセントの顔を殴った。
避けることも出来ずそのまま吹き飛ぶヴィンセント。ヴィンセントは俺の腕を掴むとそのまま俺の腕を引きずり込むように倒れた。
そして俺の首に足をかけ腕ひしぎ十字固めをした。関節を決められ思わず顔を歪める俺。
しかし力が入らないのか俺の腕はスルッと抜けた。すかさず倒れてるヴィンセントの顔に追撃して殴る。ボゴン!
嫌な音がする。ヴィンセントは倒れ込みながら俺の腹に蹴りを入れた。
うごぉ。もはやゲロも出てこない。出てくるのは酸っぱい胃液だけだった。よろける俺。フラフラとヴィンセントが立ち上がった。
俺はヴィンセントに殴りかかった。するとヴィンセントもそれに合わせてきてお互いにカウンターを食らう形になった。
両者は吹き飛んだ。するとまたヴィンセントの背中が見えた。必殺の一撃がくる。後ろ回し蹴りだ。
俺はゆっくりと弧を描き俺の命を刈らんばかりに襲いかかってくるその蹴りを見た。俺は少しだけ手で蹴りの衝撃を和らげて、……その蹴りをわざと受けた。
ボゴン! 吹き飛ばされ倒れる俺。
「うおおおおおお!!! 決まったああ!!」
「強烈だろ! あれは!」
「死んだだろ。あれ」
観客がそう騒ぐとヴィンセントも地面に倒れた。限界だったのだろう。
「すげえ勝負だった」
俺たちは二人ともダウンした。もはやお互い一歩も動けない。ヴィンセントはガイウスの方をチラリと見てアイコンタクトを送った。
「アニキそろそろ……このまま続けさせてたらヴィンセントの奴壊れますよ」とガイウスの部下が耳打ちする。
「あぁ……そうだな」
「オイおめえら! 両者の健闘を讃えてやれ! この勝負引き分けだ!」
とガイウスが叫んだ。
うおおおおお!! と観衆が叫び声をあげる。そして群衆がせきを切ったように俺とヴィンセントに駆け寄った。
「おいヴィンセント。凄えなぁお前。ガッツあるじゃねぇか!」
「おいヴィンセントお前死んでないか?」
「おい立てるか? ヴィンセント」
「やるじゃねぇか! お前」とヴィンセントに声をかける。
「兄ちゃんも良くやったな。いい勝負だったぜ」黒龍団の連中がなぜか俺を褒めてくる。
「けっこう動けるじゃねえか。見た目お坊っちゃんかと思ってたぜ」
「熱かったな。おい兄ちゃん大丈夫か」と黒龍団の奴らが肩を貸してきた。
「あぁ……」と言って俺は立ち上がった。
するとヴィンセントが近づいてきて俺にだけ分かる声の大きさで耳打ちする。
「お前さっきの蹴りわざと受けただろ」
「えっ?」どうやらバレていたようだ。
「お前どういうつもりだ。途中からあえて派手な勝負をして」
「いや、本気で……本気で戦ったんだ……」俺は言った。フンとヴィンセントは俺の魂胆が分かっているみたいに笑った。
「ふざけやがって。お前打ちどころが悪かったら死んでたぞ」
「でも仲間を守らなくちゃいけないから……」俺はシドを横目に見た。つられてヴィンセントもシドを見る。
「お互いリーダーには恵まれねぇな。ま、お前も使い潰されないように頑張りな」とヴィンセントが言う。ガイウスがゆっくり駆け寄ってきて俺に耳打ちした。
「なかなかやるじゃねぇかお前」
「?」俺はなぜ褒められたのかよく分からなかった。ガイウスは
「おいお前ら手を上げて歓声に答えろ! 今日の試合の勝者はお前らだ!」
と言って俺たちの片手を無理やり天高く上げた。
すると「うおおおおおお!!!!」と歓声が上がった。凄まじい熱気。熱狂。そして怒号。
ガイウスは片手を握りこぶしにきて空中で太鼓を打つように振った。すると黒竜団からその手の動きに合わせて
「ブラックドラゴン!!」
「ブラックドラゴン!!」
「ブラックドラゴン!!」
と大合唱が起こった。凄まじい大音量。気分が悪くなりそうだった。俺はそれを聞くと意識を失いそうになり地面に倒れた。
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