ヴィンセントとの戦い
次々とまるで魚の群れのようにゾロゾロ店を出る黒龍団。その黒竜団の奴らに両脇を抱えられ俺は店の外に追いやられた。
ドサッと荷物のように乱暴に俺は地面に放り投げられる。気づくといつの間にか俺とヴィンセントは多くの観衆に囲まれている。
まるで観衆がリングを作るように円形に広がっていた。俺は思わずそれを見回す。
「殺していいぞ! ヴィンセント!」
「絶対に勝てよ!」
「おい相手震えてんぞ! ちょっとは手加減してやれ」ギャハハハハ! と叫び声があがる。
観衆が口々に勝手なことを叫ぶ。俺は思わず目を逸らした。まさに悪徳のるつぼだ。俺はそう思った。
「あんた! おい! あんた!」リング状になってる観客の輪から店主のミランダが飛び出してきた。
「なにやってんの! 殺されるよ! 仲間を連れて今すぐ逃げて!」と胸ぐらを掴んで凄い形相で俺に叫んだ。
「え? でもただ殴り合いするだけなんでしょ? 殺し合うとかそう言うんじゃ……」と俺が言うと
「なに言ってんだ! あんた! こいつら血に飢えた狂犬だよ。勝敗なんて関係ないんだよ! あんたが勝っても負けてもあんたは殺される! 誰かが死なないとこいつらおさまらないんだよ!」と叫んだ。俺は思わず周りを見回す。
「早く殺せ!」
「倒れても容赦するな!」
「殺せ! 殺せ!」
と怒号が響く。
「あんたが勝ってもあいつらは負けを認めないから、あんたらは全員なぶり殺しにされる。あんたが負けてもあんたは死ぬまでなぶり殺しだよ! あたし何度も見てきたんだから!」とミランダは言った。
その言葉に俺は目の前が真っ白になった。ミランダの言うことは間違ってない。この怒声を聞いてそう確信した。
ふとシドの方を見たらニヤニヤ笑っている。親戚が亡くなっていたハズのカシムとサムソンもいつの間にか戻って来ていた。
俺は急にシドに対して怒りがこみ上げる。ふざけるな! なぜ俺が殺されなきゃいけないんだ! こんなふざけた状況に追いやったのはシドじゃないか。
シドはいつも言う。責任は全部俺が取ると。でもあいつは責任なんて言葉の意味分かってないんだ。常に責任を取らされるのは一番下っ端の俺。都合悪くなればいつでも切り捨てられるから。俺はどうしようもない怒りに包まれた。
「早く逃げて……」と泣き出しそうな顔でミランダは言った。
「でも俺が逃げ出したら捕まったメンバーは何されるかわからない、そうだよね?」と俺は言った。
「それはそうだけど」
「じゃあここで戦うしかない。戦ってなんとか起死回生の一手を打つ」と俺は言った。
「ありがとう。ミランダさん。死なないよう、殺さないようするから。危ないから下がってて欲しい」と俺が優しく言った。
「駄目だよ……逃げて……」ミランダがそう言うと黒竜団の一味に引き剥がされた。
「やるしかない……」俺はつぶやいた。熱狂の中、俺の心だけがやけに冷たく冷めていた。
「オイ、いいか。オメェら。魔法は使うな。武器も隠し武器もな。正々堂々やり合え。卑怯なマネしたらヴィンセントお前を殺すぞ」
とガイウスが言う。するとヴィンセントが「分かった」と言った。俺はヴィンセントを憐れに思った。この黒竜団の闇が見えたかのようだった。
俺はユイの方を見た。せめて俺が戦ってる最中に、せめてユイだけでも逃さないと。俺は応援しているユイに口パクで「逃げろ」と言った。
え? と言った表情で固まるユイ。俺はもう一度「逃げろ!」とさっきよりも大口を開けて大げさに伝えたが、ユイは分かってないみたいだった。
「逃げ……」とついに俺が声に出して言うと「勝負開始!」とガイウスが叫んだ。
ボコン! いきなり俺が吹っ飛ばされた。
なにが起こったのか分からない。視界がグルグルと回る。足がもつれ倒れる。
さっきは横目でヴィンセントを見ていたと思っていたが、今は横目で地面を見ていた。俺はダウンしていた。
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